難水溶性薬剤に対する新規DDSの開発

2022.11.07 By 大阪府立大学 大学院 生命環境科学研究科 教授 乾 隆

バイオ

発明概要

本発明者は、ヒト脳脊髄液中に存在し、生体内の疎水性低分子運搬タンパク質であるリポカリン型プロスタグランジンD合成酵素(L-PGDS)を用い、難水溶性薬剤をL-PGDSで包み込んで可溶化し、疾患部位に運搬するという新規DDSを開発した。
L-PGDSは、疎水性低分子(リガンド)結合部を囲むような樽型の構造で、樽型構造内は疎水性、外は親水性となっている。また、リガンドを取り込むとL-PGDSのサイズは約1割程度小さくなり、コンパクトパッキングされる。
本発明により難水溶性薬剤の再開発が可能になる。

 

発明の利点

  •  ヒト由来のタンパク質であるため、抗原性がない。
  •  難水溶性薬剤(導入可能な薬物の分子量:~約850程度)を生理的条件下(pH 7.4)で可溶化が可能、且つ幅広いpH領域で安定(pH 2~pH 8)である。
  •  薬剤複合体のサイズが非常に小さい(L-PGDS分子1個の大きさ:約5 nm程度)ため、血管壁通過による深部への到達が期待できる。 → L-PGDSの多量体の作成により、サイズを大きくすることも可能。
  •  ペプチド付加による標的指向能の獲得が可能である。
  •  酸化還元応答による薬剤放出制御が可能である。    → L-PGDSの樽型の構造のポケットの入り口にS-S結合を導入することにより、酸化反応により入り口を閉じ細胞内に取り込まれた後、細胞内の還元的環境によりS-S結合が外れて薬剤を放出させることが可能。
  •  凍結乾燥により長期保存が可能である。
  •  経口投与用(胃で分解されず腸に届いて分解)、および静脈内投与用のDDSとしての応用が可能である。
  •  分子ドッキングシミュレーションによるL-PGDSを用いたDDSに適用可能な難水溶性薬剤の探索が可能である。

 

 

本発明を用いた応用例

1.癌を標的としたDDSの応用

【SN-38を内包したL-PGDSによるin vivo抗腫瘍効果】(PLos ONE,2015)

ヒト大腸がん細胞(colo201)を移植したマウスに下記の薬剤を各種尾静脈投与(1日おきに計8回投与)し、腫瘍体積を測定し、腫瘍成長抑制の効果を評価した。

→ SN-38/L-PGDS合体は少量で、CPT11よりも高い抗悪性腫瘍活性をもつ。

(SN-38/L-PGDS合体に癌腫瘍認識ペプチドを付加させ、腫瘍組織に集積することも確認

 

2.麻酔時間延長効果を目的としたDDSの応用

【麻酔投与マウスに対するDZP/L-PGDS複合体の効果】(J.Control.Release,2012)

マウスに各種薬剤(CMC★、DZP★★/CMC複合体、 DZP/L-PGDS複合体)を経口投与し、麻酔時間とDZP代謝物の脳内濃度の測定を行った。 ★CMC:カルボキシメチルセルロース、乳化剤、★★DZP:ジアゼパム、麻酔効果をもつ

 

3.低胃酸症患者への弱塩基性薬剤の経口投与を目的としたDDS、保護剤の応用

【酸性・弱塩基性領域でのL-PGDSの安定性】(J.Pharm.Sci.,2016)

ジピリダモール(抗血小板薬、弱塩基性薬剤)/L-PGDS複合体を作製し、異なるpHによるジピリダモールの可溶化率(安定性)を評価した。

→ ジピリダモール/L-PGDS複合体は酸性・弱塩基性領域で安定である。

 

◆希望の連携形態

・実施許諾   ・オプション   ・共同研究 等

In silico 分子ドッキングシミュレーションにより、ご要望の薬剤(難水溶制薬剤等)とL-PGDSの結合の強さ(DDSの適用性)を評価することも可能 (要相談)。

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詳細資料・特許情報

難水溶性薬剤に対する新規DDSの開発-1

特許第5099545号

JPB 005099545-000000

特許第5892648号

JPB 005892648-000000