コハク酸、フマル酸、リンゴ酸等の有機酸の製造方法

2022.10.06 By 明治大学

バイオ

技術概要

① ヒドロゲナーゼ遺伝子hoxの発現が抑制、ヒドロゲナーゼHox活性が低下している藍藻、②リンゴ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の発現、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ活性が亢進されている藍藻、を培養してコハク酸、フマル酸、リンゴ酸等の有機酸を製造する方法

用途・応用

有機酸の製造

背景

 近年、地球温暖化や資源枯渇に関する懸念から、再生可能な資源であるバイオマスへの期待が高まっている。なかでも石油の代替資源の開発は重要な課題である。
 有機酸は、利用価値の高い化合物である。例えば、有機酸である乳酸からは、優れた生分解性プラスチックであるポリ乳酸を製造可能である。なかでもコハク酸は、汎用の化学・工業原料であり、ポリブチレンサクシネート(PBS)の原料や、化学品中間体、溶剤、可塑剤として広く利用されている。例えば、コハク酸を原料として製造されるポリブチレンサクシネートは、農業用マルチフィルム、包装材、農場・土木資材等に使用され、2011年の出荷量は約3100tにのぼる。
 現在、コハク酸は、主に石油を原料として製造されているが、石油の代わりにバイオマスを利用しようとする流れがある。例えば、非特許文献1には、従属栄養微生物を用いてコハク酸を生産する技術が開示されている。いくつかの企業ではバクテリア又は酵母の発酵により、コハク酸の生産を開始している。

【先行技術文献】
【非特許文献】
【 非 特 許 文 献 1 】 Sanchez AM , Bennett GN, San KY (2005) Novel pathway engineeringdesign of the anaerobic central metabolic pathway in Escherichia coli to increase succinate yield and productivity. M etab Eng 7:229‑239.

課題

 上記の非特許文献等に開示された方法では、有機酸原料として、微生物に対するグルコース等の植物由来の炭素源の供給が必須である。しかし、このような植物由来の炭素源は、食糧としても利用されているため、糖価格の高騰や安定供給体制に対する不安がある。

 一方、藍藻は上記微生物とは異なり、光合成により二酸化炭素と光エネルギーを直接資源化することができる。
 本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、藍藻を用いて高効率に有機酸を製造可能な、有機酸の製造方法の提供を課題とする。

手段

 本発明は、下記の特徴を有する有機酸の製造方法を提供するものである。

(1)ヒドロゲナーゼ遺伝子の発現が抑制若しくは喪失している藍藻、又はヒドロゲナーゼ活性が低下若しくは喪失している藍藻、を培養物で培養して有機酸を製造させ、前記藍藻内及び/又は前記培養後の前記培養物中から前記有機酸を採取することを含 み 、前 記 ヒ ド ロ ゲ ナ ー ゼ 遺 伝 子 が h o x で あ り 、 前 記 ヒ ド ロ ゲ ナ ー ゼ が H o x で あ り 、前 記 有 機 酸 が 、 ピ ル ビ ン 酸 、 乳 酸 、 コ ハ ク 酸 、 フ マ ル 酸 及 び リ ン ゴ 酸 か ら な る 群 か ら 選ば れ る 少 な く と も 一 種 で あ る 、 有機酸の製造方法。
(2) 前 記藍藻が、hoxH遺伝子及び/又は前記hoxH遺伝子の発現調節領域の配列が改変されたものである、前記(1)に記載の有機酸の製造方法。
(3)前記hoxH遺伝子が、以下の(a)~(c)からなる群から選ばれるタンパク質をコードする遺伝子である前記(2)に記載の有機酸の製造方法。
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質
(b)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、1~数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、又は付加されたアミノ酸配列を有し、Hoxにおいてヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質(c)配列番号1で表されるアミノ酸配列との配列同一性が90%以上であるアミノ酸配列を有し、Hoxにおいてヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質
(4)前記藍藻を培養物中で培養することが、前記藍藻を好気培養した後に嫌気培養することを含む、前記(1)~(3)のいずれか一つに記載の有機酸の製造方法。
(5)前記好気培養において、前記培養物中の窒素イオン濃度が1mM以下の低窒素期間を有する前記(4)に記載の有機酸の製造方法。
(6)前記嫌気培養開始時に藍藻が非休眠状態である、前記(5)に記載の有機酸の製造方法。
(7)前記嫌気培養を暗条件下で行う、前記(4)~(6)のいずれか一つに記載の有機酸の製造方法。
(8)前記有機酸がコハク酸及び/又は乳酸である、前記(1)~(7)のいずれか一つに記載の有機酸の製造方法。
(9) 前 記 培 養 物 が 培 養 液 で あ り 、 前記培養液中から前記有機酸を採取する、前記(1)~(8)のいずれか一つに記載の有機酸の製造方法。
( 1 0 ) 前 記 藍 藻 が シ ネ コ シ ス テ ィ ス ( Synechocystis) 属 の 藍 藻 で あ る 、 前 記 ( 1 ) ~(9)のいずれか一つに記載の有機酸の製造方法。

効果

 本発明に係る藍藻は、光合成により二酸化炭素と光エネルギーを直接資源化でき、かつ有機酸の生産能に優れている。このため、本発明によれば、藍藻により高効率に有機酸を製造可能である。

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特許情報

特許第6688497号

JPB 006688497-000000