ゲノム解析装置、ゲノム解析方法及びコンピュータプログラム

2022.10.06 By 明治大学

バイオ

技術概要

従来GWAS法で解析できなかった、3アリル以上の遺伝子座が形質に係る場合、頻度が3位以下のアリルが効果を持つ場合、効果を持つアリルが線形モデルに従わない場合においても形質に関与する遺伝子座の探索が可能となる。

用途・応用

種苗、遺伝子解析

背景

 育種や生理学的・遺伝学的機能解析のために、様々な生物種において重要な形質に関連する遺伝子座の同定が広く行われている。さらに、シロイヌナズナ等のモデル植物、イネやトマトを始めとする重要農作物、ヒトなどの生物種においては、系統間・品種間・個体間における形質関連遺伝子座の変異、また、保有する対立遺伝子とその効果の変異の解明が進められている。このような重要農作物・モデル動植物・微生物における変異の同定には、ゲノムやトランスクリプトームの網羅的なビッグデータ解析から目的遺伝子を探索する手法が用いられる。ゲノムやトランスクリプトームの網羅的なビッグデー タ 解 析 か ら 有 用 遺 伝 子 を 探 索 す る 手 法 と し て 、 こ れ ま で G W A S ( Genome W ide Association Study; ゲ ノ ム ワ イ ド ・ ア ソ シ エ ー シ ョ ン ・ ス タ デ ィ ー ) が 広 く 用 い ら れ て い る 。

課題

 しかしながら、現在行われているGWASの手法は、線形回帰の手法に基づくため、遺伝子座ごとに対立遺伝子を2種類までに限定して解析することしかできず、解析から除外された対立遺伝子の形質に対する効果を詳細に調べることはできない。そのため、対立遺伝子が3種類以上存在する場合で、対立遺伝子を2種類までしか解析しない場合には、各遺伝子座および個々の対立遺伝子がもつ形質に対する効果を十分な精度で検出できないリスクがある。
 例えば、現在行われているGWASは、二倍体生物の各遺伝子座において、遺伝子頻度が上位2位まで、かつ、頻度5%以上の対立遺伝子を解析対象(すなわち、3位以下および5%未満の対立遺伝子は欠測値扱い)として扱う手法が一般的である。実際の解析データにおいて、すべての遺伝子座において対立遺伝子が2種類までであり、かつ、すべての対立遺伝子頻度が5%以上となることは極めて特殊な実験事例に限定されることから、取得した実測値を欠測値として扱うこの手法では解析精度は明らかに低減する。

 また、集団構造を考慮したGWASも行われているが、集団構造を解析するプロセスでも、遺伝子座あたりの対立遺伝子数が2個までの場合しか考慮しないことが一般的となっている。そこで、現在行われているGWASでは、各遺伝子座に対立遺伝子が3つ以上あるときは、対立遺伝子頻度の上位2つまでのみを解析する。そのため、低頻度の対立遺伝子(すなわち3位以下の対立遺伝子)が形質を変化させる効果をもつ場合、従来のGWASでは当該遺伝子座を同定できない。

 そこで、これらの問題を解決するために、本発明は、複数の遺伝子座の少なくとも1つに3つ以上の対立遺伝子が存在する場合であっても、各遺伝子座が形質の表現型を変化させる効果の大きさを高い精度で推定する技術の提供を目的とする。

手段

 本発明の一態様は、生物の集団内の各個体が有する遺伝子座の対立遺伝子の組み合わせを遺伝子型とし、前記各個体それぞれが有する複数の前記遺伝子座の前記遺伝子型と前記各個体の所定の形質の表現型値との関係を示す情報を形質遺伝子情報として、前記形質遺伝子情報を取得する形質遺伝子情報取得部と、前記形質遺伝子情報に基づき、前記遺伝子型を示す情報である遺伝子型情報を名義尺度とする統計処理によって前記各個体の前記遺伝子座ごとに所定の統計値を取得する第1統計関連値取得部と、を備えるゲノム解析装置である。

 本発明の一態様は、生物の集団内の各個体が有する遺伝子座の対立遺伝子の組み合わせを遺伝子型とし、前記各個体それぞれが有する複数の前記遺伝子座の前記遺伝子型と前記各個体の所定の形質の表現型値との関係を示す情報を形質遺伝子情報として、前記形質遺伝子情報を取得する形質遺伝子情報取得部と、前記形質遺伝子情報が示す前記遺伝子座と前記形質遺伝子情報が示す前記遺伝子型との組を遺伝情報組として、各前記遺伝情報組が示す前記遺伝子座に前記遺伝情報組が示す前記遺伝子型が有るか否かを前記個体ごとに示す情報を変形形質遺伝子情報として、前記変形形質遺伝子情報に基づき、前記変形形質遺伝子情報に含まれる複数の前記個体間の遺伝的近縁性の高さを示す値である遺伝的近縁度を取得する近縁度取得部と、を備えるゲノム解析装置である。

 本発明の一態様は、コンピュータが、生物の集団内の各個体が有する遺伝子座の対立遺伝子の組み合わせを遺伝子型とし、前記各個体それぞれが有する複数の前記遺伝子座の前記遺伝子型と前記各個体の所定の形質の表現型値との関係を示す情報を形質遺伝子情報として、前記形質遺伝子情報を取得する形質遺伝子情報取得ステップと、コンピュータが、前記形質遺伝子情報に基づき、前記遺伝子型を示す情報である遺伝子型情報を名義尺度とする統計処理によって前記各個体の前記遺伝子座ごとに所定の統計値を取得する第1統計値取得ステップと、を有するゲノム解析方法である。

 本発明の一態様は、上記のゲノム解析装置としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムである。

効果

 本発明により、複数の遺伝子座の少なくとも1つに3種類以上の対立遺伝子が存在する場合であっても、各遺伝子座が形質の表現型を変化させる効果の大きさを高い精度で推定することが可能となる。

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特許情報

特願2019-175161

JPA 2021051644-000000