体外授精法を用いた有用な鳥類の創出

2022.08.17 By 静岡大学

バイオ

技術概要

顕微授精は基礎研究やヒトの不妊治療に広く応用されているが、鳥類での成功例はなかった。顕微授精によるヒナの孵化育成の成功と産業への応用について紹介する。

用途・応用

有用家畜の作出、クローン家禽を用いた遺伝資源の保存

背景

 受精現象は、精子と卵の複雑な相互作用により生じる。多くの動物では単一の精子が卵と融合する。そして、この際に、卵の細胞内カルシウム濃度([Ca 2 + ] i )が一過的に上昇及び変動(カルシウムオシレーション)する。この卵の[Ca 2 + ] i は、卵の活性化において重要な役割を担っている(非特許文献1及び2)。

 一方、鳥類においては、卵が活性化する前に20~60の複数の精子が卵子内に入り込む多精子受精が行われる(非特許文献3)。

【先行技術文献】
【非特許文献】
【非特許文献1】Strickerら、Developmental Biology,vol.211(1999),pp.157~176
【非特許文献2】Runftら、Developmental Biology,vol.245(2002),pp.237~254
【非特許文献3】Fofanovaら、Federation proceedings. Translation supplement,vol.24(1965),pp
.239~247

課題

 ところで、体外受精の方法としては、単一精子を卵に直接注入する卵細胞質内精子注入法(ICSI)が知られており、ヒトを含む哺乳類などで実用化されている。一方、鳥類では、ウズラ卵を用いたICSIが行われているが、発生はある程度進行するものの、孵化する個体を得ることはできていなかった。

 上記問題を解決すべく、発明者らが検討した結果、多精子受精という特徴的な受精を行う鳥類において、単一精子を卵に注入するICSIでは、卵の[Ca 2 + ] i の上昇及びオシレーションが起きないため、卵が活性化せず、発生の進行が停止することを突き止めた 。

 本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、卵を活性化し、発生が進行し得る、鳥類の体外受精方法を提供することを目的とする。本発明は更に、この技術を応用した、鳥類のクローン細胞又はクローン個体の作製方法を提供することを目的とする。また、本発明は、上記体外受精方法、又は、クローン細胞若しくはクローン個体の作製方法に使用することができるキットを提供することを目的とする。 

手段

 本発明者らは、鳥類において、ホスホリパーゼC又はイノシトール三リン酸、クエン酸シンターゼ、及びアコニット酸ヒドラターゼを卵に注入することで、多精子受精と同様に、卵の[Ca 2 + ] i の上昇及びオシレーションが起き、卵が活性化することを見出した。本発明は、これらの知見に基づくものである。

 すなわち、本発明は、例えば、以下の[1]~[10]に関する。
[1]単一の精子及び卵活性化因子の混合物を卵に注入する工程を有する、鳥類の体外受精方法であって、前記卵活性化因子が、(a)ホスホリパーゼC、クエン酸シンターゼ及びアコニット酸ヒドラターゼのタンパク質又はこれらをコードするcRNAを含む、又は、(b)クエン酸シンターゼ及びアコニット酸ヒドラターゼのタンパク質又はこれらをコードするcRNA並びにイノシトール三リン酸を含む、方法。
[2]上記ホスホリパーゼCがホスホリパーゼCゼータである、[1]に記載の方法。
[3]上記混合物は更に外来遺伝子を含む、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]上記鳥類がキジ目又はカモ目である、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]細胞核及び卵活性化因子の混合物を卵に注入する工程を有する、鳥類のクローン細胞又はクローン個体の作製方法であって、前記卵活性化因子が、(a)ホスホリパーゼC、クエン酸シンターゼ及びアコニット酸ヒドラターゼのタンパク質又はこれらをコードするcRNAを含む、又は、(b)クエン酸シンターゼ及びアコニット酸ヒドラターゼのタンパク質又はこれらをコードするcRNA並びにイノシトール三リン酸を含む、方法。
[6]上記ホスホリパーゼCがホスホリパーゼCゼータである、[5]に記載の方法。
[7]上記鳥類がキジ目又はカモ目である、[5]又は[6]に記載の方法。
[8]鳥類における体外受精、又は、クローン細胞若しくはクローン個体の作製に使用するキットであって、(a)ホスホリパーゼC、クエン酸シンターゼ及びアコニット酸ヒドラターゼのタンパク質又はこれらをコードするcRNAを含む、又は、(b)クエン酸シンターゼ及びアコニット酸ヒドラターゼのタンパク質又はこれらをコードするcRNA並びにイノシトール三リン酸を含む、キット。
[9]上記ホスホリパーゼCがホスホリパーゼCゼータである、[8]に記載のキット。
[10]上記キットが鳥類における体外受精に使用するキットであり、更に単一の精子を含む、[8]又は[9]に記載のキット。

効果

 本発明の鳥類の体外受精方法は、所定の卵活性化因子を卵に注入することで、卵を活性化させ、発生を進行させることが可能となるため、孵化する個体を得ることが可能となる。また、この技術を応用することで、本発明の方法は、鳥類のクローン細胞又はクローン個体を作製することが可能となる。また、本発明は、上記体外受精方法、又は、クローン細胞若しくはクローン個体の作製方法に使用することができるキットを提供することができる。

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特許情報

特願 2016-548893
WO2016/043185

JPB 006583736-000000