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人工知能(AI)を使って胸部X線画像から心臓弁膜症を推定する高精度診断モデルを開発した、と大阪公立大学の研究グループが発表した。心臓弁膜症は社会の高齢化とともに増えると予想され、専門医がいない地域や夜間の救急外来などでの活用が期待できるという。
大阪公立大学大学院医学研究科放射線診断学・IVR学の植田大樹研究員や三木幸雄教授らの研究グループは、日常の診療や健康診断などで肺を調べるために普及している胸部X線検査の画像に心臓が映っていることに着目。これまで画像内容と心機能や心臓病との関係は分かっていなかったが、AIに患者の画像を学習させることで両者の関係を明らかにして診断モデルの開発につなげる研究を進めた。
具体的には、2013年から21年までの間に大阪府内の4つの医療機関から患者1万6946人、胸部X線検査と心臓エコー検査結果それぞれ2万2551回のデータを収集し、AIに心臓弁膜症などの心臓病の特徴を深層学習(ディープラーニング)で覚えさせたり、分類させたりした。
その結果、AI診断モデルの能力を示す指標の「AUC」数値は、心臓弁膜症のうち中等度以上の僧帽弁閉鎖不全症で0.89、中等度以上の大動脈弁狭窄症で0.83、このほかの症状(大動脈閉鎖不全症、僧帽弁狭窄症、三尖弁閉鎖不全症、三尖弁狭窄症)で0.83~0.92といういずれも高い精度を示した。
研究グループによると、AUCは1に近いほど高い診断精度を示し、同グループが開発したAI診断モデルは高い精度で心臓弁膜症を見つけたことを確認。心臓弁膜症診断のほか、心不全につながる心機能の悪化も高い精度で診断できたという。
厚生労働省によると、心臓弁膜症の推定患者は約200万人。心臓の弁が開かない「弁膜狭窄」と弁が閉じない「弁膜逆流」に大別される。診断には弁の状態を心臓エコー検査で調べるがこの検査は高度なスキルが求められ、技術者不足が指摘されていた。心臓弁膜症発症の背景には生活習慣病や老化などがあり、社会の高齢化により患者数は今後も増加されることが予想される。
植田研究員らによると、胸部X線検査は基本的な医療設備として保有している医療機関が多く、撮影時間も短いため、比較的簡単に検査できる。このため開発したAI診断モデルは専門医や技師が不在あるいは不足しているさまざまな医療現場で心臓病の予備検査として活用できるとして今後実用化を進めるという。
研究成果は日本時間7月7日に国際学術誌ザ・ランセット・デジタル・ヘルスに掲載された。
大阪公立大学の研究成果とは別に、徳島大学と帝京大学が5月にAIが心不全患者の予後を胸部X線画像から予測する診断モデルを開発したと発表している。医療現場でのAI活用、特に画像診断での活用は心臓病診断の分野のほか、広い診療分野で研究が進んでいる。