【コラム】校外にも学びはたくさん 第1回 食事と私たちの暮らし

2023.07.09 From Science Portal

 学習の場は学校内だけでなく校外にも多く存在する。博物館や美術館では、実物を間近にした体験などを通じてまた違った視点での学びができる。インターネットで簡単に情報を得られる世の中だが、自ら足を運ぶことで「暮らしに関する学び」を深めてみてはどうだろうか。第1回は身近な「食事」にまつわる学習の場を紹介する。

東京農業大学「食と農」の博物館(東京都世田谷区)

 渋谷駅からバスで30分ほど揺られた緑豊かな郊外に立地し、農業の歴史をたどることができる。館内には古い農具と民家のジオラマ展示、卒業生が働く蔵元から提供されたお酒の瓶が並ぶ。多くの博物館が「触らないでね」という表示をする中で、一部の企画展では「触ってみよう」というコーナーも。博物館といえば空調が効いていて静かなところを想像するが、隣接するバイオリウム(動植物展示のための温室)にはカメなど生きた動物がいてにぎやかだ。

入り口に並べられた(左から)小松製作所、イタリアのFIAT、米国のフォードの各トラクター(東京農業大学「食と農」の博物館提供)
入り口に並べられた(左から)小松製作所、イタリアのFIAT、米国のフォードの各トラクター(東京農業大学「食と農」の博物館提供)
企画展での「触れる」展示物。大学の教材として使っているもので、障がいがある人でも楽しめるような工夫の一つ(東京農業大学地域環境科学部地域創成科学科提供)
企画展での「触れる」展示物。大学の教材として使っているもので、障がいがある人でも楽しめるような工夫の一つ(東京農業大学地域環境科学部地域創成科学科提供)
ある企画展では、視覚障がい者用に凹凸が浮き出る特殊なインクで展示室のフロアマップを作成した(東京農業大学地域環境科学部地域創成科学科提供)
ある企画展では、視覚障がい者用に凹凸が浮き出る特殊なインクで展示室のフロアマップを作成した(東京農業大学地域環境科学部地域創成科学科提供)

 大学教員らが企画・立案したワークショップや体験講座も開かれ、「賞味期限切れの食品も立派な食べ物ですよ」など、食に関するものもある。中学生の職場体験、高校生のオープンキャンパスや修学旅行、特別支援学校などによる体験学習も受け入れている。

 「東京農業大学は、地方から東京に学びに来た人が、地元に戻って活躍することを『人物を畑に還す(かえす)』と称し、建学の精神として大切にしてきました。博物館も大学と同じように、『学びに来て終わり』ではなく、何か自分なりに考えるきっかけにしたいのです」と話すのは学芸員で司書の西嶋優さん。

 「食と農」の言葉通り、農業だけでなく醸造から発酵食品、肥料、お酒など多くの食に関する幅広い学びを深められる場所だ。

全国の酒蔵は学生の就職先の一つ。酒瓶の展示コーナーではラベルの違いや瓶の色・形の違いが見て分かり、大人も楽しめる(東京農業大学「食と農」の博物館提供)
全国の酒蔵は学生の就職先の一つ。酒瓶の展示コーナーではラベルの違いや瓶の色・形の違いが見て分かり、大人も楽しめる(東京農業大学「食と農」の博物館提供)
卒業生の協力のもと、大学が収集した古い農機具と古民家のジオラマが見学できる(東京農業大学「食と農」の博物館提供)
卒業生の協力のもと、大学が収集した古い農機具と古民家のジオラマが見学できる(東京農業大学「食と農」の博物館提供)

■東京農業大学「食と農」の博物館
東京都世田谷区上用賀2-4-28
入館料無料
午前9時30分~午後4時30分
休館日は日・月曜日・祝日。そのほか大学の定める休日があるので、ホームページを参照。
03・5477・4033

カップヌードルミュージアム 大阪池田(大阪府池田市)

 日清食品の創業者・安藤百福 (あんどう ももふく)氏(1910~2007年)が「次代を担う子どもたちに『発明・発見の大切さ』を伝えたい」と設立した。世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」は大阪で誕生。ミュージアム内には安藤氏が開発に取り組んだ研究小屋のジオラマ、アニメのシアターなどがある。

日清食品の歴代の商品パッケージ約800点を展示する「インスタントラーメン・トンネル」では、商品の移り変わりを見られる(日清食品ホールディングス提供)
日清食品の歴代の商品パッケージ約800点を展示する「インスタントラーメン・トンネル」では、商品の移り変わりを見られる(日清食品ホールディングス提供)
開発に取り組んだ小屋のジオラマは中を見学できる。妻がてんぷらを揚げている姿を見て、麺を油で揚げて乾燥させる「瞬間油熱乾燥法」を発見し、チキンラーメンが誕生した(日清食品ホールディングス提供)
開発に取り組んだ小屋のジオラマは中を見学できる。妻がてんぷらを揚げている姿を見て、麺を油で揚げて乾燥させる「瞬間油熱乾燥法」を発見し、チキンラーメンが誕生した(日清食品ホールディングス提供)

 さて、『カップヌードル』の麺は、どのようにしてカップに入れるのだろうか?麺をカップの上から入れる?正解は「逆さまに置いた麺の上からカップを帽子のようにかぶせ、それをくるっと反転させて入れる」。底が狭く上が広いカップの中間に麺が固定され壊れない。安藤氏が疲れ果てて寝ていたとき、めまいがして天と地がひっくり返ったような錯覚に陥る中でひらめいた。そういったアイデアを学ぶことができる展示がある。

カップヌードル開発にまつわるエピソードを13分間のアニメで学べるシアター。小学生でも分かりやすい映像だ(日清食品ホールディングス提供)
カップヌードル開発にまつわるエピソードを13分間のアニメで学べるシアター。小学生でも分かりやすい映像だ(日清食品ホールディングス提供)

 安藤氏が「チキンラーメン」を発明したのが48歳で、「カップヌードル」を発明したのは61歳。95歳の時には、世界初の宇宙食ラーメンの開発にも成功した。麺をすする仕草が「行儀が悪い」という国では麺を短くし、暑い国では焼きそばタイプなど、各国の味の好みや食習慣に合わせた様々な即席麺が世界中で食べられている。

世界で売られているカップヌードルのパッケージの一例(日清食品ホールディングス提供)
世界で売られているカップヌードルのパッケージの一例(日清食品ホールディングス提供)

カップヌードルミュージアム 大阪池田
大阪府池田市満寿美町8-25
入館料無料
午前9時30分~午後4時30分(最終入館は午後3時30分)
休館日は火曜日だが、火曜日が祝日のときは営業
072・752・3484

関連リンク

東京農業大学「食と農」の博物館
カップヌードルミュージアム 大阪池田

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