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就労している人がプライベートで悩みやストレスを感じる項目が多いほど、口腔内のトラブルが増加することが、東京医科歯科大学の調査で分かった。職場の定期検診ではメタボリック症候群や血圧など全身状態の観察が中心。歯や歯ぐきの状態も加えてストレスによる影響をチェックし、従業員の健康保持の向上につなげる経営の仕組みが必要だとしている。
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科の相田潤教授(公衆衛生学)らの研究グループは、2013年に厚生労働省が行った国民生活基礎調査を基に、ストレスと口腔の関係について分析した。同調査は正規・非正規を問わず就労している27万4881人を対象とした大規模なもので、内訳は男性15万2850人、女性12万2031人、平均年齢は47.0歳。
恋愛、自由な時間、家事、育児、経済状況、住まいのトラブルなど仕事以外の19項目について、ストレスを感じていると答えた項目の個数と、「歯が痛い」「歯ぐきのはれ・出血」「かみにくい」といった3つの口に関するトラブルの発生と関連があるかどうかを調べた。解析にあたっては性別や飲酒・喫煙の習慣、職種など個々が抱える要素による影響を考慮した。
その結果、ストレスを感じる項目がゼロと答えた人で口のトラブルを抱えているのは2.2%だった。ストレスの数が1個、2個と増えていくごとに増加し、6個と答えた人の10.9%、7個以上になると全くストレスがない人の約7倍となる14.4%に口腔トラブルがあることが分かった。
ストレスを感じると、人は強く歯をかみしめたり、就寝時に歯ぎしりをしたりする。歯が痛ければ何事にも集中できず、かみにくければ食事や会話が楽しめないなど、ストレスが増大する負のスパイラルに陥る。歯ぐきのはれや出血は歯周病が発症しているサインで、放っておくと早産・低体重児出産や糖尿病、心筋梗塞の悪化など、全身の健康を害する恐れが高まる。また、歯科治療に通っていたとしても、ストレスが多いと治療がうまくいかないケースもあるという。
相田教授は今回の分析結果を踏まえ、「忙しいと歯科医院に行きにくくなる。雇用する側が定期的な歯科検診を福利厚生で提供するなどの仕組みがあるとよい。プライベートで発生するストレスは生産性の低下など仕事にも関連する。経営者も産業衛生の取り組みに歯科も入れるなど意識を向けてほしい」と話す。
成果は日本疫学会が発行する「ジャーナル・オブ・エピデミオロジー」(電子版)1月14日号に掲載され、3月30日に東京医科歯科大学が発表した。