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国際宇宙ステーション(ISS)で5カ月間の滞在を終えた若田光一さん(59)ら4人の飛行士を乗せた米スペースX社の宇宙船「クルードラゴン」が日本時間12日午前、米フロリダ州タンパ沖に着水し、地上に無事帰還した。若田さんは滞在中に自身初となる船外活動を2回こなしたほか、各種の実験を行うなど精力的に活動。5回目の飛行を完遂した。
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故郷の草の 香り懐かし
若田さんはISS離脱を控えた10日午後、ツイッターに投句し、宇宙滞在の充実した日々と地上への帰還を待ち望む気持ちを表現。東日本大震災から12年を迎えた11日未明には「被災された地域はISSからも明るく輝いて見え、皆さんが頑張っていらっしゃる姿が思い浮かびました」と思いを寄せた。
若田さんはISSに滞在を続ける米露とアラブ首長国連邦(UAE)の7人と別れ、米露の3人とクルードラゴンに搭乗。11日午後4時20分、高度約400キロにあるISSから離脱した。機体は徐々に降下して大気圏に突入し、パラシュートを開いて12日午前11時2分に着水した。
若田さんらはISS到着時と同じクルードラゴンの本格運用5号機に搭乗した。飛行士が乗ったカプセル部分は「エンデュアランス(耐久、忍耐)」の名称で、昨年5月にも3号機として地球に帰還しており、2往復を果たしたことになる。
若田さんは昨年10月7日からISSに滞在した。1月20~21日、2月2~3日の2回にわたり、米国人とペアで船外活動を実施し、新型太陽電池パネルの取り付け準備作業などを進めた。活動は計14時間に及んだ。
また日本実験棟「きぼう」を活用した実験やイベント、関連作業に従事した。(1)将来の探査に役立てるべく、月や火星の重力を装置で再現して液体の性質を調べる、(2)宇宙飛行の加齢への影響を知るため、実験動物の線虫の微小重力での運動を観察する、(3)宇宙船や基地での火災対策に役立てるため、さまざまな材料の微小重力での燃え方を調べる、(4)融点の高い試料を帯電させて浮かせ、加熱して物性を調べる――など。飲料水を再生する実験、宇宙空間に装置や材料を晒す実験、国内外の若者による遠隔のロボット競技会や公募実験、超小型衛星の放出なども精力的に担当した。
2月には、科学技術振興機構(JST)の科学技術ニュースサイト「サイエンスポータル」の読者にメッセージを寄稿。ISSや「きぼう」の印象をつづり、「ISSで獲得した新たな技術や知見が、人類の活動圏を広げることにつながると期待しています」とアピールした。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると、今回の若田さんの飛行は157日。宇宙滞在は5回累計504日で日本人最長となっている。
日本人では来年度、古川聡さん(58)のISS長期滞在が予定されている。先月末にはJAXAが月面活動も視野に、新たな飛行士候補に国際機関職員の諏訪理(まこと)さん(46)と、外科医の米田(よねだ)あゆさん(28)の2人を選出している。