新たな要求に応えるために発展するフッ素樹脂の接着・接合技術

2022.06.25 From Chem-Station By Zeolinite

積水化学工業株式会社の高機能プラスチックスカンパニーは、バイオミメティクスを活用した独自の接着化合物の設計と合成に成功し、一般的に接着し難いといわれるフッ素樹脂に接着可能な粘着テープを開発しました。フッ素樹脂に限らず、オレフィンなどの難接着材料にも幅広く接着できるという特性を活かし、さまざまな用途展開を加速し社会に貢献します。 (引用:5月31日積水化学プレスリリース)

NEDOの「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」に取り組むヒロテックは、このたび大林道路、大蓉ホールディングス、海洋研究開発機構、大阪工業大学などと共同で、超潤滑・高強度でありながら難接着・難接合材料であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などフッ素樹脂とステンレス鋼板との直接接合についてレーザーを用いた新たな表面処理と接合技術の開発に成功しました。さらに、氷点下30℃~175℃と幅広い温度環境下での使用でも本技術による接合強度が維持されることを確認しました。(引用:5月31日ヒロテックプレスリリース)

 

接着と接合に関するプレスリリースが2件発表されましたので紹介いたします。

 

まず、積水化学のバイオミメティクスを活用した独自の接着化合物の設計と合成についてですが、開発の背景としてフッ素樹脂やフッ素変性ポリイミド樹脂が基板材料に使われる動きがあることが挙げられており、これらの材料は高周波帯域を利用した5Gや6Gでも低伝送損失であることが長所になっています。

 

 

一方、フッ素系材料は表面エネルギーが低く、水も油も弾くという性質から、他の材料との接合が難しいことが短所となっています。

 

そこで積水化学では、フッ素樹脂やポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂に強く接着できるようムール貝の分泌物に着想を得て粘着テープの開発を進めてきました。

 

結果、ムール貝の分泌物であるポリフェノール骨格を組み込んだ分子がフッ素に粘着可能であることを見出しました。

 

 

この成分が含まれる粘着テープと一般的なアクリル系粘着テープと性能を比較したところ、特にフッ素樹脂に対しては一般のアクリル系粘着テープよりも約10倍の粘着力を発現し、接着性を大幅に改善することに成功しました。

 

 

従来は、接着性を上げるためにプライマーを使用するのが一般的でしたが、材料によっては逆に接着が不十分になることや作業工程負荷が大きいなどのデメリットがありました。

 

そこでこのプライマーレスの粘着テープを使用することで安定した接着性だけでなく、製造プロセスの簡略化が期待されます。積水化学では、サンプルの提供を行い2023年度の製品上市に向けた市場開拓を進めていくそうです。

 

今年の4月には、ムール貝の接着メカニズムにヒントを得て超強力な水中接着剤を開発した論文をケムスケニュースにて紹介しましたが、今回の成果は別の角度からムール貝の接着を参考にしているようです。

 

この件に近い内容の特許・文献は見つかりませんでしたので詳細は分かりませんが、プレスリリースの概要を見る限り、カテコール骨格はそのままで別の部位にPTFEと接着できるような工夫があるようです。

 

次にヒロテックフッ素樹脂とステンレス鋼板との直接接合の話題に移ります。本件の背景として建設・土木現場で使用されるダンプトラックの付着残土の問題があります。

 

ダンプは荷台の土砂を下す際には、荷台を引き上げて自重落下によって下ろしますが、土砂が荷台に付着して残ってしまうそうです。その量は積載貨物の平均5%とされ、この運搬効率悪化により年間13.09万kLの車両用燃料が過剰に消費されています。

 

作業員が手作業で清掃し付着残土を取り除くこともありますが、負担も多く転落事故のリスクもあります。

 

そのため、超潤滑・高強度であるPTFE樹脂などをダンプの荷台に張り付けることができれば、残土を減らすことができると考えられますが、1件目のニュースの通り、接着・接合は極めて困難でした。

 

そこでヒロテックは、金属表面にナノレベルの酸化物粒子をクラスター状に構造配置することで、樹脂と化学的に結合させる技術の開発に成功しました。この接合技術を用いて独自の装置で接合することで非常に高い接合強度が達成されました。

 

 

 

このPTFEとステンレス鋼板の直接接合製品は大蓉ホールディングスのダンプトラックで使用され、関東圏の実際の運行環境下で荷台への付着残土ゼロと十分な耐久性が確認されました。

 

また、大林道路にて実際のダンプトラックの運行環境を模擬した加速促進試験が実施され、接合耐久および潤滑性能が5年以上保たれることが確認されました。

 

 

ヒロテックでは製品の量産を始めており大蓉ホールディングスが販売窓口として本製品の販売と取付を行っているそうです。そして3社は豪雪地帯での堆雪運搬をはじめとして同技術の適用範囲の拡大に向けた検討を行っていくそうです。

 

ヒロテックより特許が公開されており、それによるとステンレス鋼材にパルスレーザーを当ててと鉄やクロムのナノ酸化物を形成されます。そしてこのナノ酸化物が形成された所に樹脂を密着させてレーザーによって加熱すると、樹脂のC-F結合などが解離し金属材と樹脂が強固に結合するとしています。

 

 

2件のプレスリリースに関して背景の用途は異なるものの、お互いの新技術が活用できるのではないかと思いました。

 

具体的には、フッ素樹脂基板を金属筐体に取り付ける際にはレーザー処理での接着が適しているかもしれず、車両にフッ素樹脂を取り付ける際にも凹凸があるようなところには粘着テープが使えるかもしれません。

 

たまたま同日のプレスリリースとなっており、何かしらのコラボレーションになることを期待します。

(記事協力:Chem-Station)