日本が抱える多くの困難な課題。その解決に科学技術が果敢に挑戦し、未来社会の展望を切り拓く! ― ムーンショット型研究開発制度とは? ― 前編

2025.05.27

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内閣府が主導する大型の研究開発プログラム、「ムーンショット型研究開発制度」。その研究推進を担う組織の一つである、国立研究開発法人科学技術振興機構(以下、JST)のムーンショット型研究開発事業部長、中島英夫さんにこの事業について聞きました。

 

 まず、科学技術振興機構(JST)とはどんな組織なのですか?

日本の科学技術・イノベーション政策推進の中核的な役割を担う、国立研究開発法人です。
「科学を支え、未来へつなぐ」という理念のもと、研究開発プロジェクトへのファンディング機能、科学技術に対する社会への理解増進を深める機能、研究開発に関する調査分析などを行うシンクタンク機能を3つの柱として、研究開発力の強化に取り組んでいます。

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中島英夫さん(国立研究開発法人科学技術振興機構 ムーンショット型研究開発事業部長)

 

― JSTには数多くのファンディングプログラムがありますが、その中の一つが「ムーンショット型研究開発事業」なのですね。
でも「ムーンショット」って何だろう?と。日本ではあまり聞き馴染みがない言葉です。

「ムーンショット」という言葉は、もともと、1961年にアメリカのケネディ大統領が公約し、1969年に実現した「アポロ計画」に由来しています。月面に人類を着陸させるような、実現困難ではあるが、達成すれば大きな成果をもたらす挑戦を意味しています。
そのように、我が国発の破壊的イノベーションの創出を目指し、従来技術の延長にない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発を推進する国の大型研究プログラムが、「ムーンショット型研究開発制度」です。

 

 目指しているものは何でしょうか?

究極には「人々の幸福 (Human Well-being)」の実現です。
そのために課題として考え、解決しなくてはいけない領域が3つあります。それが「社会」、「環境」、そして「経済」です。
例えば、社会としては少子高齢化や労働人口減少。地球温暖化や大規模災害などの環境問題も明らかです。そして日本の経済的な競争力も科学イノベーションで強化していく必要があります。
これらの課題は個別ではなく複合的に絡み合っていて、どう解決するか、さまざまなアプローチがあると思いますが、サイエンスとテクノロジーの発展をコアに解決しようというのが、ムーンショット型研究開発事業に通底する考えです。
この思想に基づき、2040年~50年を見据えた目標が設定されています。

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赤枠がJSTの担当する目標

 

 それらの目標は、どのように決められたのですか?

2019年に、サイエンティストや経済人、アーティストなども参加する「ビジョナリー会議」が計4回開催されました。そこで、関係府省や一般の方々から公募で寄せられた意見も参考にして社会課題や目標設定について検討、先ほどの3領域(社会・環境・経済)が設定されました。さらに同年12月には「ムーンショット国際シンポジウム」が開催され、国内外の有識者が制度運営や目標について議論しました。これらを経た後、2020年に内閣府の「総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)」にてムーンショット目標1~6が決定されました(ムーンショット目標7は首相官邸の「健康・医療戦略推進本部」にて決定)。
直近では202410月に新しい目標(フュージョンエネルギー)が追加されて、現在4つの研究推進法人で10の目標を担っています。JSTは、そのうちの7つを担当しています。

 一般の方の意見も取り入れられているのですね!

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ムーンショット型研究開発制度の研究推進体制図

前編はここまで。

後編では、ムーンショット型研究開発事業の特徴や、従来の事業との違いについて深掘します。

 

イベントや、プロジェクト進捗状況などの最新情報はJSTのムーンショット型研究開発事業 公式サイトやSNS(X、note)で発信しています。ぜひフォローを!

■ムーンショット型研究開発事業 公式Xnote (JST)

ムーンショット型研究開発事業 公式サイト (JST)

ムーンショット型研究開発制度とは(内閣府)

■国立研究開発法人科学技術振興機構について

例えば、世界的な気候変動、エネルギーや資源、感染症や食料の問題。私たちの行く手にはあまたの困難が立ちはだかり、乗り越えるための解が求められています。JSTは、これらの困難に「科学技術」で挑みます。新たな価値を生み出すための基礎研究やスタートアップの支援、研究戦略の立案、研究の基盤となる人材の育成や情報の発信、国際卓越研究大学を支援する大学ファンドの運用など。JSTは荒波を渡る船の羅針盤となって進むべき道を示し、多角的に科学技術を支えながら、安全で豊かな暮らしを未来へとつなぎます。

JSTは、科学技術・イノベーション政策推進の中核的な役割を担う国立研究開発法人です。