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みなさんの実験ノートは紙ですか?それとも電子ノート?ラボ専門の整理収納アドバイザーが、電子実験ノートを使いやすく維持するコツについて考察します。
CONTENTS
企業ではペーパーレスが当たり前になっているかもしれませんが、研究所や大学ではまだまだ紙のノートが使われています。
そんな中、わたしの所属ラボ(国立研究機関)ではボスの方針で電子実験ノート(Electronic Lab Notebook、略してELN)に完全移行し、かれこれ3年たちました。
ELN導入後の省スペース効果と時短効果は劇的でした。過去の紙ノートはオフィス引き出しにそのままありますが、新たな保管スペースを増やす必要がなくなりました。これだけでもラボにモノが増えなくなることにつながっています。
さらに、引き出しの紙を整理して場所を空ける時間をとらなくてもよくなる、という時短効果もありました。時短、といえば紙のノートを使っていた頃は、Excelで「実験ノート目次」を作っていました。こういう目次をわざわざ作る手間がいらなくなった、ということもELNの大きなメリットです。
しかし、便利な一方でデジタルファイルは場所をとらないがゆえに際限なく増えていく・増やせてしまう性質があり、使い方に気をつけないと散らかって見えたり、使いにくくなったりします。
わたしの研究室ではELNとしてMicrosoft社のOneNoteを使っているので、これについてごく簡単に説明してから、「散らからない」使い方について書いてみます。
OneNoteは3つの階層構造になっています。
【ノートブック】:大分類です。チーム名、プロジェクト名、個人名
【セクション】:中分類。タイトルは個人名、テーマ名、マニュアル、参考資料など
【ページ】:最小単位。紙ノートに例えると1つの実験について記載した数ページ分にあたります。
タイトルの命名ルールと、どのようにセクション分類をするかが使い方のポイントです。
ファイル命名ルールの例:
実験開始日_実験番号_タイトル(実験内容)
2407XX_MS0XX_XX細胞からのRNA抽出から遺伝子発現解析まで
セクション名の例:
実験
マニュアル
アイデア
資料
このくらいのシンプルな分類をあらかじめ決め、何をどこに分類するか迷ったら管理者と相談します。
使うにつれて特定の項目についてページが増えることがあります。その場合はサブセクションをつくってまとめます。しかしタコ足配線や迷路にならないよう、なるべく内容がわかりやすいセクション名にすることを心がけます。
紙ノートと異なるのは、数日にわたる一連の実験を1つのページに連続して書き続けられる、という点です。いくらでも長く書けてしまうので、ページをスクロールしていくと探していた記述にたどり着くのに時間がかかるようになり、かといって、毎日ページを追加していくとページ数が増え、同じようなタイトルがいくつも並ぶことになるので悩ましい。
そこで、「長く続けすぎない」「ページ数を増やしすぎない」ようにするため、めやすとして以下のような使い方をしています。
電子実験ノートの「整理」ポイント
・1週間以上続く実験はページを分ける
・数日にわたって行う実験は、各実験日を太字の14ptで書き込む
・実験目的を記述した下部分に、実際の実験スケジュールをまとめて書き込む
・画像を貼り付ける場合、トリミングして余計な部分をカットしてから貼り付ける
紙のノートはほぼ個人管理であるのに対し、電子実験ノートは、内容を共有(少なくともボスや研究指導者とは)することが前提です。
あらかじめファイルの命名ルールやセクションを作っておかないと、各個人ばらばらに「マイ・ルール」で使い出すので、ノートブック内が散らかってしまいます。
つまり、最初から管理者によるコントロールがあり、時々見直し(棚卸し的な状況確認)があれば探しやすく・使いやすさが維持される、という点では、実体のある“モノ”と同じといえるでしょう。
今日の整理収納Tips
・電子実験ノートは省スペース・時短効果がある
・使いやすさ・探しやすさを維持するためにはルール決めとメンテナンス
・ページタイトルの命名ルール、セクション分類が重要