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生物を人工的に「つくる」。それは未来の話に聞こえるかもしれませんが、実は「合成生物学」という学術分野で実際に行われていることです。今回は、合成生物学を研究し、新しい生物システムを使って社会問題を解決することを目指す学生団体、iGEM Wasedaの活動について紹介していきたいと思います。
※クラウドファンディングは2024年6月30日を以って一旦締切となりました。iGEMやiGEM wasedaの続報をお楽しみに!
CONTENTS
組織、細胞、遺伝子といった生物の構成要素を部品と見なし、それらを組み合わせて生命機能を人工的に設計したり、人工の生物システムを構築したりする学問分野のこと。(日経バイオテクONLINEより)
従来の生物学が、生物の機能を解明することに着目した「解析生物学」であるのに対し、「合成生物学」は機能を設計し、新しい生物システムを作り出すことに重きを置いています。
新しい生物システムといっても、特殊な機能を持つ微生物がほとんどです。
例えば、環境中の有害物質を検出する微生物を作ることで、環境汚染の監視を行うことができます。これは「有害物質を検知したらシグナルを出す」遺伝子と「シグナルを受け取って色を変える」遺伝子をレゴブロックのように組み合わせ、微生物に遺伝子を組み込みます。そうすることで、「有害物質を検知したら色が変わる微生物」を作ることができるのです。
このように、合成生物学は物理・化学的な手法で解決が難しい問題に対して、生物を使って解決する可能性を秘めています。その応用分野は、医療、環境、エネルギー、食品など多岐にわたり、SDGsの達成にも貢献できると期待されています。
iGEMとは、International Genetically Engineered Machine competitionの略で、毎年10月頃にパリで開催される合成生物学の世界大会です。2003年にMITで発足して以来、世界の60以上の国と地域から350以上のチームが参加しています。
iGEMにおける遺伝子は標準化されており、オープンソースで公開されています。そのため、遺伝子を電気工作の部品のように考え、これらを自由に組み合わせて電子回路のような遺伝子回路を設計することができます。
各チームは自由にテーマを決め、社会問題を解決する新しい生物システムを設計し、実験で検証します。
その結果は、研究成果をまとめたウェブサイトとプレゼンテーションによって評価されます。審査基準には、絶対評価である金、銀、銅メダルと、相対評価である特別賞、部門賞があります。
iGEMの審査では、技術的な面だけでなく、社会との関わりも重視します。そのため、実験に取り組むだけでなく、実際に社会問題を解決できるか、専門家やエンドユーザーの意見を取り入れたかなども評価されます。
今回紹介するiGEM Wasedaは、iGEM出場を目指す早稲田大学の学生団体です。1年生4名、2年生13名、3年生8名、4年生4名の計29名で活動しています。(記事掲載現在)
参加している学生は生命科学系のみならず、化学、物理、情報、教育、国際など様々なバックグラウンドを持つメンバーで協力し、一つのプロジェクトを進めています。
iGEM Wasedaは、2020年に設立された新しいチームですが、2020年度と2022年度の大会の出場経験があります。
このプロジェクトでは、細胞をゾンビと侍に見立てて、細胞同士の通信を利用したシステムを作りました。ゾンビ細胞は侍細胞の活動を抑え、逆に侍細胞はゾンビ細胞の活動を抑えるように設計しました。通信分子の濃度によって、どちらの細胞が優勢になるかが変わる仕組みです。これにより、細胞間のやり取りを視覚的に表現することができました。
2020年では、初の金メダルだけでなく、情報処理部門(Information Processing Track)で最優秀賞を受賞しました。
セルフリー技術を利用したバイオセンサーの開発に取り組みました。エストロゲンとプロゲステロンのバランスに応答して遺伝子発現を調節するバイオセンサーを開発し、生理周期に応じたホルモンバランスの変化を高感度かつ迅速に検出することを目指しました。また、この仕組みは環境中の有害物質の検出にも応用できます。
2022年では、金メダルを獲得し、また基礎技術開発部門(Foundational Advance Track)の最優秀賞候補にノミネートされました。これは全チームのトップ10%に入る好成績です。
iGEM Waseda 代表の青沼 龍太朗さんに今年度のプロジェクトと目標について聞いてみました。
青沼:私たちが解決を目指しているのは、海洋のマイクロプラスチック問題です。マイクロプラスチックは海洋生態系に深刻な影響を及ぼしており、その除去は急務です。私たちのプロジェクトでは、微生物を利用してマイクロプラスチックを捕捉し、分解するシステムを構築します。
従来の合成生物学では、生物の機能を発揮させるために薬剤の添加が必要でした。しかし、薬剤の添加には手間がかかり、環境への悪影響も懸念されます。
そこで、「電気に応答する微生物」を利用し、電気刺激によって2種類の異なる機能を起動させることで、まるでスイッチのように微生物を制御します。この技術により、合成生物学のプロセスを自動化することを目指しています。
青沼:私たちiGEM Wasedaは今年度、金メダルの獲得だけでなく、入賞して壇上に上がることを目指しています。今後の活動にご期待ください。
iGEM Wasedaが抱える資金面の課題についてもお話を伺いました。
青沼:iGEMでは、設計した遺伝子回路を実際に実験で検証する必要があります。また、パリでの成果報告に参加するためには、大会の登録費用や渡航費用が必要です。サークル活動として自主的に活動しているため、これら費用や実験に必要な試薬や機器はすべて自分たちで用意する必要があります。
しかしながら、大学の授業や研究と並行して活動しているため、非常に限られた時間の中で全ての費用を自分たちで捻出することは難しい状況にあります。
金銭的課題を解決し、研究に打ち込む時間を確保することで、未来に貢献できるよりよい成果を出したい、という思いから、iGEM Wasedaは現在クラウドファンディングを実施しています。(6月30日まで。現在は募集終了)
もし私たちの活動に興味もっていただけましたら、温かいご支援やプロジェクトの応援、シェアしていただけると嬉しいです!
ご支援いただいた方には、感謝の気持ちを込めてオリジナルロゴステッカーやオリジナル法被などのリターンをご用意しています。
クラウドファンディングやリターンの詳細は、以下のリンクからご確認ください。※現在は募集終了しています。
どうぞよろしくお願いいたします。