片づくラボへのステップ|収納を楽しむまでの危険な落とし穴とは?

2024.06.10

ラボのみなさま、こんにちは。

世の中には「タンスにしまうモノがなくて困る」「引き出しがガラ空きでさびしい」と思っている人よりも、しまいきれない程のモノを抱えて「いいラックないかな」「箱買ったらここスッキリするんじゃないか」などとネット検索して、そのあげく夜中に収納グッズをポチッと購入している人の方が圧倒的に多いです。

整理収納アドバイザーとしての経験上、これは「片付かない家」を生み出す危険な兆候。そして、ラボでも同様の現象は起こってしまうものです。

 

今回は、片づくラボで収納を楽しむまでの道のりに、どんな危険な沼や落とし穴があるかという地図をお示ししましょう。


スキップしてはいけない最初の準備

当たり前のことかもしれませんが、実験は最初に計画を立ててからやる方が失敗を防げます。予想外のトラブルがあっても、対応しやすくなります。

片付けもおなじことで、最初にやるべきことがあります。これを書いてしまうと身も蓋もない(でも書きますけど)のですが、やっぱりこれはどうしてもスキップはできない。

それは整理です。

いらないモノを捨て、とっておくべきものの量を把握する。

この作業なしで収納を増やして詰め込んでいくと、一時的には片付いたかのように見えますが、そこにはゴミと必要なモノが混ざった状態なので、大事なモノを見つけ出しにくくなります。

片付かない家、というのはこの最初のステップをやらずに収納家具や収納グッズを増やしたゆえに収拾がつかなくなっている家のことです。片付かないラボ、というのも以下同文なので省略。

 

最初にやってはいけないこと:ラボの収納グッズを買う

世の中で収納のテクニックや収納用品情報が注目をあつめるのは「これを買えば目の前にあるこのごちゃごちゃがスッキリしそうだ」という期待があるから。

 

たしかに、買うことは新しい経験を呼ぶのでわくわくします。そして、安価で小さいカゴや棚を買ってなんとなく分類すると、片づけた気になるのです。

そうして生まれるのは、前述した「片付かないラボ」だけ。整理が終わってプランを立てるまで収納グッズ購入はしないように。

 

ワンコインショップで「なんとなく良さそう」な入れ物を見かけても、買わずに型番やサイズをメモしましょう。買いたくなったら、キムワイプの空き箱やマイクロチップの空き箱、荷物送り用に取っておいた段ボール箱で代用できないかと考えてみてください。(それをずっと使えという意味ではありません)

整理の前に収納の穴にはまらないよう、気をつけましょう。


収納グッズをもらってこない

お金をかけて最初に収納を買ってしまうと、整理して入れるモノがなくなったのに引き出しや棚や箱そのものが「捨てられない新品ゴミ」になってしまいやすいです。

 

知り合いの研究者Aさんが定年になり、不要になったプラスチック引き出しを「もういらない」と言ったとしても、なんとなくもらってきてはいけません。「これを入れたいからもらう」という、目的を意識しましょう。Aさんのラボやオフィスにとっては有用だったかもしれませんが、自分の部屋には合わないかもしれないですよ。

 

もらってしまった収納グッズをむりやりどこかで使おうとして、そのためにかえって雑然と見えてしまう。引き出し自体が場所を取り、スッキリするどころか逆に片付かなくなるという本末転倒がおきるので危険です。

 

もし、すでに買ってしまった・もらってしまったのであれば、使いにくい古い収納用品を捨てて入れ替えて、以下のよくあるパターン沼にハマらないよう、気をつけましょう。

空きがあると何か入れたくなる(第一の沼)

箱があるとどうでもいいものまで取っておきたくなる(第二の沼)

箱自体も捨てられなくなる(第三の沼)

箱を整理するまで、それをとっておく場所が必要になる(第四の沼)

 

ラボで整理をはじめにくい要因

ここまで気を付けても、ラボにおいては整理の障害となる要因がいくつかあります。

これから実験で使う可能性のあるモノがなにか、わかっている人(研究費を持っている人)でないと、取捨選択の判断ができません。

「いる・いらない」の判断ができる人が実験計画を立てるボスや研究指導者しかおらず、しかもそうした人たちは常に超多忙なので

「片付け?今忙しいからやってられない」

と背中でアピールしているような気がして、しもじもからは声をかけにくいものです。

更に、ボスのデスク自体がカオスに見えるため「ラボの整理したい、なんて言ったら嫌味だと思われそう」と言い出せません。

ラボのモノを使う(使っていた)可能性があるのはボスだけでなく、先輩や後輩や外部の共同研究者や留学生も含まれます。ごくたまにラボの機械を使いにくる他のラボの人もいます。もしかしたら、すでにいなくなった人のモノという可能性もある。

完璧に文句が出ないように整理することなんて不可能だとしか思えなくなってきます。

ラボではラベルのない引き出しのなかに機械パーツから謎の液体が入ったチューブに至るまで、名前が書いてないモノが転がっているのが常です。

こういうラボでの片づけは時間がかかり、自分の実験時間がなくなる。実験結果が出ないと論文が書けない。論文が書けないと学位は取れない・・・というわけで快適なラボ環境と引き換えに学位が取れなくなったり研究業績があげられなくなったりするのは困るので、進んで整理に手を出そうという人はまれです。

 

問題意識があったとしても、そもそもどこから始めればいいのかわからない。どうなれば使いやすくなるのかわからない。

 

コミュニケーションの不足と時間不足と整理収納についての知識不足がカオスラボの背景に存在しているのです。


いまやったほうが一番楽かもしれないラボ片付け

研究者であれば、独立して研究棟を建てることも不可能ではない。しかし研究棟が新築されないうちに定年になる、あるいは異動する方がほとんどです。

 

転生した先がゴブリン村だったり地下迷宮だったり今よりも片付かないラボだというリスクを考えると、手を動かして現在のラボをシェイプアップさせるほうが確実です。

 

整理の段取りというのは、それぞれのラボ環境に合ったやり方をすれば、楽にすすむものです。むやみに頑張ろうとせず、ボスの了解とサポートがもらえたら、案外スムーズに進みます。まず手を動かす前にプランをたてましょう。

ラボを使いやすく維持するステップ

1. 整理して管理が必要なモノを減らす

とにかくまず整理。管理者不明品やいなくなった人のモノを徹底的に。

2. 収納に番地をつける

例えば冷蔵庫の内扉の段が分かれているなら、段ごとに枝番をつけるなど、場所に仮ラベルをつけていく。

たとえば冷蔵庫の段のなかでカゴに分かれているなら、それぞれに枝番をつける(図1)。
配置図を冷蔵庫の扉に貼る(図2)。

すべての引き出しにも記号と番号をつける(図3)。

この収納番地があると試薬や物品管理をしやすくなります

 

時期的にどうしても整理を始められない場合、この「番地付け」を先に進めても大丈夫。モノの定位置や使用者が決まっているなら、物品名や氏名のラベルを貼る。

3. 配置図をつくる

配置図(番地だけがかいてある表のようなものでよい)をはりつける。

4. 収納物リストをつくる

現状を調べながら内容物リストをつくっていく。

5. 定位置管理

内容物概要のラベルをはり、定位置管理する(例:取説、〇〇部品、試薬、など)

6. 定期的な棚卸しと整理

 

まとめ

片付けは実験とよく似ています。計画をたて、手を動かしながら試行錯誤する。

 

ラボを片付けたいと思っているみなさま、一人で頑張らずに、ボスや周囲の方とよくコミュニケーションしながら、整理していきましょう。スペースに余裕ができたら、モノを使いやすく収納できます。必要なモノを“秒”で探せる快適な収納がつくれます。これはどこのラボでも実現できる「片付く仕組み」なのです。

 

今日の整理収納Tips

・まず整理からはじめる
・収納をもらったり買ったりするのは整理が済んでから
・既存の収納に番地をつけよう
・定位置ラベルをつくろう
・片付く仕組みをつくって快適収納を楽しもう

【著者紹介】ショウボ

筑波大学卒業後、製薬会社の研究所に30年以上研究者として勤務。博士(医学)
医学部の大学院研究室を経て現在は国立研究機関で研究業務員。
2017年よりラボ専門整理収納アドバイザーとしても活動中。
ラボ整理研究室を主宰。

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