日本人類遺伝学会第68回大会 ランチョンセミナーの様子【アズワン-イベントレポート】

2024.01.16

2023年10月11日(水)から14日(土)まで、都市センターホテルにて、日本人類遺伝学会第68回大会(Human Genetics Asia 2023 合同開催)が開催されました。

概要

All Asiaをテーマに、2,940人の来場者を集めて盛会のうちに終了しました。海外からの参加者は1-2割を占めていたとのことです。アズワン株式会社は、企業展示とランチョンセミナーで本会に参加しました。

 

アズワンブースの様子

 

ランチョンセミナー

ランチョンセミナーでは、横浜市立大学大学院 医学研究科 遺伝学教室の松本直通教授をお迎えし、『シーケンスに依らないゲノム異常探索ツール: Optical Genome Mapping』の演題でご講演いただきました。

松本教授のご講演に先立ち、オプティカルゲノムマッピング(OGM)装置のメーカーである、米国Bionano Genomics社より、『Next Generation Cytogenomics with Optical Genome Mapping』の演題で、OGMの概要を紹介しました。

 

松本教授のご講演では、complex chromosome rearrangementの例をいくつかお示しいただきました。Circos Plot上に表示されたSV全体の俯瞰から、対象の構造多型(SV)について得られたマップの見方をご説明いただきました。最近ご発表された論文では、3番染色体上にあるFGF12遺伝子の両アレルに見られたSVをOGMで評価されています。

一方のアレルには152 kbの重複、もう一方のアレルには65 kbの欠失が検出され、Accessソフトウェアで綺麗に表示されていました。是非論文もご参照ください。

 

リピート病の解析事例紹介

また、OGMを用いたリピート病の解析事例をご紹介いただきました。顔面肩甲上腕筋ジストロフィー(FSHD)では、4q35(4番染色体のサブテロメア領域)にある、DUX4の発現が発症に関係すると言われています。

この領域には、D4Z4リピートと呼ばれる11から100回程度の繰り返し配列があり、ハイパーメチル化されていることでDUX4の発現が抑えられています。4q35はDUX4 mRNAの安定性に寄与するポリアデニル化シグナルの有無により、病原性の4qAアレルと非病原性の4qBアレルに分けられ、その区別が診断には重要になります。

また、10番染色体上に存在する疾患とは関連のないほぼ同一のリピート配列との区別も必要です。現在この疾患の分子診断には、サザンブロットが使用されていますが、OGMを用いることで、より簡便にFSHDの検出が可能となります。

 

続いて、Fragile X(脆弱X症候群)についても、診断方法の変遷やシーケンスベースでの方法との違いも含めご紹介いただきました。Fragile Xの原因は、X染色体上のFMR1遺伝子の機能不全で、この遺伝子内のCGGトリプレットリピートの異常な伸長に起因していると考えられています。

反復配列が200回以上伸長(full mutation)すると、この領域のみならず近傍のCpGアイランド(プロモーター)がメチル化され、遺伝子発現が抑制されます。

反復回数は、正常人では6-44回(Normal)、保因者では55-200回(premutation)で、OGMによりfull mutationの検出が可能です。

さらに、松本教授らの研究グループがその原因遺伝子を明らかにされた神経核内封入体病(Neuronal intranuclear inclusion disease: NIID)での解析例では、検出の可否はリピートの長さに依存することが課題であるものの、リピート病の解析におけるOGMの有用性をお示しいただきました。

 

ランチョンセミナーは非常に盛況で、定員90席の予定でしたが、立ち見の先生方もいらっしゃいました

 

VIAの紹介

Bionano Genomics社からは、最新のソフトウェアであるVIA の紹介もありました。VIAを用いることで、NGS(ショートリード、ロングリード)、マイクロアレイ、OGMのデータを統合して解析することが可能となります。

OGM装置であるSaphyrシステムには、データの閲覧、およびデータ解析のGUIとして、Accessソフトウェアが付属します。Accessでは、検出したSVをCircos Plot上に表示することで、ゲノム上にどのような変異があるかを俯瞰することが可能です。松本教授はご講演の中で、このソフトウェアが秀逸であるとコメントされていました。

セミナー後には、早くVIAを使いたいとお話しされていたのも印象的でした。

お問い合わせ

Saphyrシステムのお問い合わせは、こちらからお願いいたします。

 

著者紹介:原島 洋文

博士(バイオサイエンス)

奈良先端科学技術大学院大学にて学位を取得後、大阪大学、フランスの国立科学研究センター(CNRS)、理化学研究所の研究員を経て2016年にアズワン株式会社へ入社。分子生物学的手法を用いて細胞周期の研究を行ってきた。 アズワン株式会社では、ゲノム構造解析や遺伝子発現解析の受託解析に従事している。