ラベルをつければラボが変わる

2023.09.29

ラボのみなさまこんにちは。
先日、東京都練馬区にあるホグワーツ魔法薬学教室に行ってまいりました。
ずらっと並んでいるガラスのサンプル瓶にはきちんとラベルが貼られ、整頓された美しさを感じました。

さて、前回に続き、使いやすいラボでの「ラベル」の秘密について書いて行きます。

 

前回記事はこちら:
使いやすいラボの秘密とは? 収納に地名地番がついている
https://lab-brains.as-1.co.jp/for-biz/2023/08/52825/

 


文字の書き方に気をつけよう

手書きでラベルを書く時、字がうまい・下手ということ以前の「書き方」に気をつけましょう。

 

たとえば、このガラス瓶。実際にあったラベルを再現しました。

 

このラベルの縦棒は、数字の ”1(いち)” なのか ” /(スラッシュ)“ なのかわかりません。もし、スラッシュだと仮定するなら、21/2/3の可能性と、2/12/3の可能性があります。また、年/月/日ではなく、日/月/年(外国人はこの順で書く人がいます)かもしれない。

 

さらに問題なのは、名前がイニシャルで書いてあること。誰のものか判断しづらいです。
M.Sイニシャルの人はわたし以外にも大勢います。堺雅人さんも佐野元春さんも新海誠さんもM.Sです。

 

解決策

スラッシュは1との区別がつきにくく、わずかな傾きの違いと、文字間隔の有無で判別しなければなりません。手書きラベルでは使わないようにしましょう。

 

2021.12.13 または 2021年12月13日

 

と書けば間違えようがありません。漢字が入ると画数が多くなるので、数字と点だけの方が書きやすいのでは、と思います。

 

西暦をわざわざ4桁で書くことをおすすめする理由は、年月日の順に書いていることが一瞬でわかるからです。

 

シールプリンターを使ってラベル作成するときも、こうした書き方を意識しているとわかりやすく迷わない(迷わせない)ラベルができます。

 

 

引き出しの順番ラベルをつけよう

同じ形の引き出し、モノを出しに行くたびに「どこの引き出しだったっけ」と迷います。

 

そしてもうひとつ、読者様からこんな引き出しトラブルの情報提供がありました。

 

プラスチック引き出しのどこに何が入っているかわからない

引き出しを丸ごと2−3段ひきぬいて持ってくる

なんとか探し出す

「ヨシ!」と当人は満足

元の段がわからなくなり適当に戻してしまう

段の順番が間違っている

ボスや秘書さんやラボメンバーがキレる

 

・・・

 

共用品の場所がいきなりかわってしまったら、トラブルになって当然ですね。

 

解決策

前回の記事に書いた「地名・地番をつける」をおすすめします。

 

引き出しの表面にはA-1とかA-2とか、並ぶ順番がわかるようなラベルをしましょう。

 

物品名称を書くのもいいのですが、場合によります。その理由は、数種類のものを一緒に収納していることが多いからです。

 


分類とラベル

一つの引き出しにサンプル瓶だけ、薬さじだけ、という具合に、一種類だけしか入れないならラベル作りは簡単です。でも入れたいものが数種類ある場合、3つの問題が生じます。

 

1. ラベルには内容物の名称をすべて書ききれなくなる。

2. 誰かが使ったあと、モノをどこに戻したらいいかわからなくなる。

3. なにを入れる場所なのか分類基準があいまいなため、雑多なものが集まってくる。

 

 

解決策

個人で使っている引き出しには個人名のラベルを貼ればそれでいいですね。

 

共用品は、物品自体に戻す場所をラベルすることも解決方法の一つです。行方不明になりがちなハサミやマイクロピペットなど、引き出しの番号をラベルするか、戻す場所に同じカラーシールを貼ると戻す場所がわかりやすくなります。

 

また、中身の名称をラベルに書くのではなく、用途別の分類名で書けばいいこともあります。

 

たとえばA、 B、 Cそれぞれのグループを一つの引き出しに入れる場合。

 

A: メモ用紙・ペン・電卓・数取り機 → 細胞カウント用品
B: 機器の取説・付属品・専用工具 → 機器メンテナンス用品
C: 薬さじ・薬包紙・撹拌子・pH試験紙・pH標準液 → 試薬調整用品

 

一緒に使うものをグループにまとめることでこうしたラベルをつけられるのです。

 

スペースの都合上、あまり関連性がないものを1箇所にいれなければいけない場合、引き出しの中身を種類ごとにチャック付きの透明ポリ袋にいれて分ける(袋の表に物品名を書く)、というのもおすすめしたいです。スーツケースの中身のこまごましたものを小袋に分けていれるのと同じです。

 

小袋に分ける際、使用頻度が低いものや誰が使っているかわからないモノ、捨てに踏み切れないもの・なんとなくとってあるものが混ざっていたら、「見直し予定品」に分類しておくのはいかがでしょうか。

 

 

見やすいラベルのつけ方

ラボの電源タップは常に不足しており、何かを使うにはなにかを引き抜いて差し替えするのが日常茶飯事です。

 

実験機器のコードはほとんど黒。うっかり抜いて使用中の機器を止めてしまうのは避けたいです。また、ミキサーを冷蔵庫の中に入れて使いたいとか、別の部屋に移動して実験したいときもあります。
どのコードがどの機器のものか、もとを辿って確認してから抜くのは時間がかかります。

 

解決策

抜き差しするとコンセントの向きが変わります。ですから、ラベルの付け方としてはどちら側からも読めるようになっているのがベストです。コードに旗のようにラベルしておくのがいいでしょう。こうしてラベルすると、探す時間がゼロになります。

 

まとめ

ラベルは無いよりはあったほうがずっといいです。しかし、ラベルと中身が一致していないと意味がありません。収納にラベルをつけても、将来的に棚卸しや整理が進むと最適な収納場所が変わってくる可能性大です。変化があったらラベルの見直しをしましょう。

 

ラベルの貼り替えが必要になることを見越して、剥がしやすいようにラベルの角を折っておくようにするといいですよ。

 

それから、留学生がいるラボでは、英語でもラベルを貼るようにしましょう。
ラボ全体の効率アップを考え、一人でも多くの人の探し物時間を減らせるようにすることが、いいラボつくりの秘訣です。

 

 

今日の整理収納Tips

  • 迷いが生じない書き方をする
  • わかりやすい分類名にする
  • 使用状況を想定し、見やすいラベルをつける
  • ラベルで探し物時間を減らし、ラボ全体の効率アップ

 

【著者紹介】ショウボ

筑波大学卒業後、製薬会社の研究所に30年以上研究者として勤務。博士(医学)
医学部の大学院研究室を経て現在は国立研究機関で研究業務員。
2017年よりラボ専門整理収納アドバイザーとしても活動中。
ラボ整理研究室を主宰。

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