片づけトラブルを回避しよう

2023.06.12

混沌としたラボでお困りのみなさん。ラボを片づけたいけどトラブルが起きるのはいやですね。でも焦って整理のやり方を間違うと、煙たがられたり嫌がられたり怒られたりします。また、必要なモノを間違って捨ててしまうアクシデントが起きやすくなります。

では、
どういったことが起きるのか?
どうやってそれを避けるのか?
をみていきましょう。

 

 

トラブルの2大原因とは

トラブルの原因となるのはリーダーの不在とコミュニケーションの不足です。
リーダーがいないという状況をさらに3つに分類しますと

 

  • この惑星にいるがほとんどラボに来ない
  • 他の太陽系にいってしまった
  • もともと遠方のクリプトン星の人

 

赤字の単語は大学、研究所、会社、という言葉でも置き換えられます。

 

当たり前すぎて忘れられがちですが、ボスやPIや先輩とは言葉でコミュニケーションをとる必要があります。クリプトン星出身者であっても

「言わなくても察してくれる」
「空気読んでくれる」
「メールの行間まで読み取れる」

という超能力は持っていません。

 

さらに注意すべきこととして、使っている言語が違うことがあります。「なおしといて」は修理しておいて、じゃなく「元に戻して」の意味。「ほかしといて」とは「放置しておいて」じゃなく「捨てておいて」という意味だったりします。

 

また「前回のサンプルは使わない」と言われたとしても、「捨てていい」と同じ意味ではありません。つまり、言葉の意味や解釈が食い違っていないか、本当に廃棄していいのか、よくよく確認する必要があるのです。

何も言われていない場合は「必要」か「保留」だと思っておけば安全でしょう。

 

 

整理や片づけは上から目線

言葉への感情的な反発もトラブルを招きます。

 

整理や片づけというのは上から下に向かって言われる言葉で、下から上に向かっては言われません。そのため「上から目線」で怒られていると感じ、自尊心が傷つくのです。片づけたらいいことはわかっていても「ひとからそれを言われたくない」という怒りの脊椎反射が起きます。

 

逆に、リーダーが率先してこれはもう捨てようと判断する、あるいは権限委譲すると、すんなり進みます。

 

ボス:「〇〇を始末してくれ」
ラボしもべ:「御意。して、どのようにいたしましょうか」
ボス:「研究管理部に話をつけておいた。あとはよきにはからえ」
ラボしもべ:「ははっ。直ちに廃棄申請書を手配いたします」


個人に対して片づけをいうのではなく、ラボ全体イベントの体裁で進めることもできます。ただし、リーダーがプロジェクト開始を宣言することが肝心です。

 

ラボしもべ:「近頃はみな実験疲れのせいか風紀が乱れ、あちこちにモノが散乱しております」
ボス:「うーむ、何か良い手立てはないか」
ラボしもべ:「(ボスのポケットマネーで)慰労のうたげを催すのはいかがでしょう。その前に(片づけ祭り)イベントなどはいかがでしょう。」
ボス:「よかろう。企画案をもってまいれ」

 

 

タイミングがずれている

自分が片づけしようと思うタイミングは人から言われるタイミングとはズレています。ほんの数秒のずれでも喧嘩になります。

 

のび太の母:「部屋を片づけなさい!」
のび太:「今やろうと思ってたのに!言われたせいでやる気無くした」

 

また、人から言われるタイミングは対応できるタイミングとは常にズレています。以下のような重大案件が目白押しの人は、片づけの優先順位が最下位になります。

 

・・・科研費の申請締め切り、学会抄録の要旨提出締め切り、共用機器利用申請締め切り、学位論文審査、論文の査読対応、セミナー準備、納品伝票の処理、研究補助員の面接、海外出張の手配、家族から頼まれた夏休みの宿の手配、朝顔の種まき、子どもの習い事の送り迎え・・・

 

「いまはそのときではない」という人にむりやり時間を捻出させようとしても文句が出る上に、「捨てないで」「さわるな」「あとでやる」と言われ、結局進みません。進まない上に気分を害することになり、その後の協力が得られなくなります。

 

 

捨てちゃったトラブル事例

さいごに4つのトラブル事例を紹介します。

 

【事例1:安っぽくみえるが大事なモノ】

粘着シールを密着させるためのプラスチックのヘラ。実験者が「いつもこの引き出しにあるはずなのに」と探しまわったところ、ゴミ箱の中から発見された。チープな外見が災いして使い捨て品と思われてしまったらしい。

解説:外見では捨てていいものとそうでないものの判断はつけられません。

 

【事例2 : 研究指導者が捨てた】

研究指導者が、留学生Aさんのとったサンプルは練習用だからいらないと、Aさんの名前が書いてあるプラスチック試験管を勝手に捨てた。Aさんは、仲の悪い留学生Bさんからいやがらせされたと思い込み、喧嘩になった。

解説:研究指導者であっても、他の人が関わっているモノを勝手に捨てるとこのような思いがけないことが起きてしまう。

 

【事例3:今は使っていないけど】

使っていないモノが溜め込まれている部屋。箱のようなものを捨てたら、「投稿した論文の査読で指摘されたら再実験する時に必要」という特殊な道具で、結局また買うことになってしまった。

解説:誰が置いたかわからないモノを片づけるときは、事前アナウンス。

 

【事例4:上司のそのまた上司が強制執行】

直属の上司Aさんは片づけをしない人。Aさんの部下であるBさんが本人に言っても埒があかず、さらに上の上司Cさんに訴えたところ、Aさんがいない時に片づけるから手伝うようにと言われた。
その結果、Bさんは直属の上司Aさんの怒りをかってしまい、より一層仕事がやりにくくなった。

解説:Aさんのように誰に何を言われても頑として片づけない、というケースは研究所だけではなく大学や家でも見られます。しかし強制執行は不信感のもとになり、ラボを暗黒化します。

こういう場合はむりやり生息環境を変えさせようとしてもうまくいきません。保護区をつくり、あるがままの生態をよく観察しましょう。パンダに向かって「笹竹を食い散らかすな」と言っても意味がないのです。


それじゃ片づけができないじゃないか、という方へ。
チャンスは必ずやってきます。きたるべき日に備え、以下の準備をしておきましょう。

 

  • 現状をしらべておく(どこに何が詰まっているか)。
  • 収納に番地をつける。
  • 自分から見て不要なモノや用途不明なモノのリストをつくっておく。
  • どこをどうすれば使いやすくなるか(安全で効率的になるか)を考える。
  • 整理収納の勉強をする(心の平安とアイデアが得られます)。

 

幸運の神の前髪は準備したものだけが掴むことができる。
みたことはありませんが後頭部はツルツルで、うしろからはつかめないらしい。

 

片づけは実験のようなもの。「こうしたらうまくいくんじゃないか」と想像しながら考えると楽しくなります。計画や準備をしても思い通りにならないことはありますが、確実に経験値があがっていますのでどうかめげないで。

 

ではみなさま、快適なラボに変革する野望を捨てず、ラボ生活を楽しんでいきましょう!

 

まとめ

片づけトラブルを避けるには・・・

  • 現状調査し計画をたてる。
  •  捨てる・捨てさせることを焦らない。事前アナウンスを入念に。
  • 片づけをしたくない人、できない人、余裕のない人の自尊心を傷つけない。
  • 個人攻撃と取られるような対策はとらない。なにかやるときは一斉に。

 

 

【著者紹介】ショウボ

筑波大学卒業後、製薬会社の研究所に30年以上研究者として勤務。博士(医学)
医学部の大学院研究室を経て現在は国立研究機関で研究業務員。
2017年よりラボ専門整理収納アドバイザーとしても活動中。
ラボ整理研究室を主宰。

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