整理のきっかけをつくってみよう

2023.05.02

今回はラボ整理のきっかけはどんなところにあるか、がテーマです。

最も理想的な整理のきっかけは大型研究費をゲットして新しいラボに引っ越し、です。経験がないのでよくわかりませんが、最低でもサトシがポケモンマスターになるくらいの努力と運と研究アイデアとスポンサーが必要と思われます。

他に整理のきっかけにどんなものがあるか、お伝えしていきたいと思います。

予測できない整理のきっかけ

  会社合併と研究所移転は大きな整理のきっかけになりました。

研究所引越しをする前、ガラスの三角フラスコを数箱、その他諸々捨てました。

整理がいっきに進みますが、そもそも思い通りに作れるようなきっかけではないので、いつはじめられるのかわからないのが難点です。

予測できない点では組織改変も同じです。

大阪からつくばの研究所に転勤してきた人が、古試薬の多さにあきれ果て、捨ててくれたことがありました。こういう貴徳な方と同室になる幸運もめったにないことです。

組織改変があっても、ただグループの名称が変わっただけで引越しがないという肩透かしもあります。

外からのきっかけを待っていると、ラボが快適になるまえに卒業したり、よりカオス度の高い場所に転勤することになったり定年になってしまうので期待しない方がいいでしょう。

そこで、もっとずっと簡単に自分で作れる整理のきっかけをいくつかご紹介します。

キムワイプの空き箱を手に入れる

  まずキムワイプを一箱、使い切ってください。

1つの面を切り開き、内側に折り込んで収納箱をつくります。そこに冷蔵庫のなかにバラバラに入っているチューブ(試験管)などをまとめて入れます。

ついでに目についた、モヤモヤした怪しい何かが漂う液体などを捨てます。情報が書いてない試薬やサンプルは思い出すことは不可能なので、あきらめて捨てましょう。

(参考:ラボの謎解き!? 棚卸しに挑戦しよう

https://lab-brains.as-1.co.jp/for-biz/2023/02/42471/

人は空箱を手にすると、そこに入れるモノを探します。奥行きの深い冷蔵庫の奥にあるものを取り出してみよう、という程度のやる気がでます。また、ぎりぎりで箱に入りきらないときは重要度の低いモノを捨ててピッタリきれいにおさめようとする習性(?)があります。この習性をきっかけとして利用します。

なお最近気づいたのですが、キムワイプの底には実に味わい深い言葉が書いてあります。思わずキムワイプに感謝の気持ちが湧いてきました。LINEスタンプのQRコードなどもあり、この界隈ではすでに名を知られた存在なのに奢ることなく宣伝活動をしていると知りました。

実験台の上を拭いてみる

  そうじは整理とは違います。しかしそうじをすることで整理につながる発見があります。

散らかった部屋で否応なくスイッチを入れられたお掃除ロボットの気持ちがわかります。

モノをどかさなくてはその場所を拭けない。

モノが少なければそうじしやすい。

そうすると、なくてもいいものや、しまい忘れたものに気づきます。

弊害として、他人の実験台の上にあるものにも厳しい目を注いでしまうようになり、「これはもう確実にゴミじゃね?」とジャッジしがちになるのですが、そこは見なかったことにしてまず自分の使っている場所に集中しましょう。

(参照:ラボ整理とコミュニケーション

https://lab-brains.as-1.co.jp/for-biz/2022/11/38369/

おすすめとしては、毎週定期的に簡単なそうじをすること。ラボの黒い実験台にホコリがあると目立ちます。冷蔵庫表面に見える黒カビも気になってきます。

たとえば火曜日の朝9時から実験台の上を拭いてみる。キムタオル1枚とナナエタ(70%エタノール)スプレーで気軽にできます。この時間、わたしも某研究所で5分くらいシュッシュフキフキとやっています。

プチそうじは実験や人生がうまくいかないときにもできますから、いろいろうまくいかなくて引きこもっている人にもおすすめしたいです。立ち直るきっかけにもなるかもしれません。

携帯を置いてくる

  実験の待ち時間につい携帯を見てしまうということ、ありませんか?

スキマ時間に携帯を見る代わりに、引き出しを片づけてみましょう。

引き出し一つの中身をチェックし、いらなくなったものを捨てます。

捨てるモノがなくても、いつも使っているモノを探しやすく分けたり並べ替えたりします。

 

奥に入っているモノを確認する

よく使うモノを手前に置く

同じ種類のものをまとめて小袋にいれる

ラベルをつける

 

物量にもよりますが、おそらく10分くらいで引き出しが使いやすくなります。

普段、いかに携帯に依存しているかを痛感することでしょう。

試薬箱や袋のサイズダウン

入荷した試薬(キット)や消耗品は、多くの場合タケノコの皮のように袋が何重にもなっています。

キットは大箱にはいっており、肝心の中身は箱容積の半分くらいしかない。輸送時の破損を防ぐための梱包材ですから、手元に届いたあとは不要です。

これらを取り外し、容器や袋をシンプルにし、サイズダウンすることで収納スペースが節約できます。

メーカー型番やロット番号ラベルは箱から切り取って中身と一緒にしておきます(実験ノートに記録するために)。

余分なチャック付き袋は捨てる、または置き場所を1箇所に決め、ゴミ入れや分類用に再利用。

家の中に手提げ付き紙袋やレジ袋をためている方も、ためるスペースを決めておきましょう。入りきらなくなったら見直し時期がきたな、と思ってください。

マイクロピペットの秤量チェックをしてみる

マイクロピペットやタイマーのような小型機器は、使えなくなっていても放置される傾向があります。使えるものと使えないものが混在している。こういうことをラボルーレットと呼んでいます。

ためしに、いつも使っているマイクロピペットで水を吸って天秤で秤量検定してみましょう。たまに最大許容誤差よりも大きくずれているものが見つかります(メーカーのホームページに最大許容誤差情報あり)。

チェックしたら検定済みとわかるように日付を書いたシールを貼り、誤差が大きいものは使わないよう、袋に入れておきます。

メーカー修理に出すのか、パーツ(Oリング)を買うのか、その判断は研究指導者と相談です。廃棄しよう、ということもありますので整理のきっかけになる、というわけです。共用品整理は難しいことがありますが、こうしたピペット検定はラボ全体のためと理解され易いので歓迎されるでしょう。

(参照:カオスのラボは整理できるのか?

https://lab-brains.as-1.co.jp/for-biz/2022/11/38359/

それから、マイクロピペットの箱、なんとなくとってありませんか?場所とりますよね。もう箱に戻さないのであれば捨てていいのでは。メンテナンス用の細かいパーツや、ついてきた取説は引き出しにまとめ、なんのパーツなのか袋に書く。引き出しにラベルしておけば安心です。

 

 

【まとめ】

  1. 他力本願な整理のきっかけは期待できない。
  2. 整理のきっかけはちょっとしたことで作れる。
  3. 実験道具のメンテナンスや秤量チェックも整理のきっかけになる。

 

(次回へ続く)

 

【著者紹介】ショウボ

筑波大学卒業後、製薬会社の研究所に30年以上研究者として勤務。博士(医学)
医学部の大学院研究室を経て現在は国立研究機関で研究業務員。
2017年よりラボ専門整理収納アドバイザーとしても活動中。
ラボ整理研究室を主宰。

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