模様替えの季節。動かしにくいレイアウトのラボでも工夫次第で自動化は可能!

2023.04.11

新年度がはじまりましたね。今年は桜も早かったので入社式、入学式のときには既に桜の花びらもだいぶ役目を果たしてうっすらと緑めいていました。

そして季節とともに新年度、新たな生活ということでお部屋の模様替えをされた、気持ちよいお部屋、環境をつくってみた、なんて方もいらっしゃるのではないでしょうか。ちょっとした小物を変えてみたり、使っている文房具を変えてみたり、思い切って本棚や机の位置を変えたりして部屋の雰囲気をまるっと変えてみた…なんて方もいらっしゃるかもしれませんね。新年度新生活新環境、素敵に過ごしていきたいですね!

ロボットと、レイアウト変更

自動化をするとき、ロボットを導入するときも季節の模様替えではないですが、基本的にはロボットアームの長さを加味して周辺の装置、機器などレイアウトを変更させていくことになります。もしくは機器レイアウトをもとに必要なロボットアーム長を算出、選定して導入しています。

 

連携される機器、工程、装置規模によって時に装置に横づけになったり、各機器、装置がロボットを囲うようなレイアウトになることもあれば、コンベアラインで綺麗に複数のロボットが整列されていることもあります。工場で多くのロボットが並んで稼働している姿はやはり壮観です。これらについて、自動化の進んでいる工場では基本的にはロボットの入りやすいレイアウトを描いて導入しています。(さらにロボットに積極的な業界、会社では製品設計も自動化しやすいものへと工夫されています。)

 

ロボット側においても基本的には設置したら固定された箇所で作業をする形になりますが、状況においては走行軸と呼ばれるレールのようなものに設置され、離れた箇所へ移動して作業をさせます。A地点で何かを取り出して、B地点へ移動させて違うものを組付けて次の工程へ送る、特定作業をするときだけ対象箇所に近づくために走行軸に搭載されたロボットが移動して作業を行う…などが考えられます。

無人搬送車や自動搬送ロボットの登場

また、一方で最近は物流倉庫などを動き回るAGV(無人搬送車)やAMR(自動搬送ロボット)と呼ばれるレールのうえだけでなく自由に走行できる製品も多く出現してきましたが、これらが工場における装置間の移動として用いられることも増えてまいりました。海外の大規模倉庫では人よりもAGV、AMRが多く動き回っていて消費者が注文した商品を取りに運びにひっきりなしに動いています。倉庫の24時間稼働はAGV、AMRの活躍は切っても切れない関係にあります。

AGV(無人搬送車)

工場におきましてはそれによって、ロボットアームの長さとは関係なく、より自在な移動、レイアウトでの自動化が可能になってきたわけですが、これらはラボラトリーでも自動化が出来るキッカケ、便利なツールになってきていることはお気づきでしょうか。

ラボでも使えるAGV、AMR

これはなぜかと言えば、ラボラトリーの場合、特にルームに設置された機器、機械が移動させにくいということがあげられます。例えば培養装置などがあげられますが、設置した際に壁際にくっつけるように配置して、エアー配管もそこで通じていて…フードなどで大がかりに覆われている中で使っている…そうなると移動をさせることそのものが難しくなりますし、もし移動させようとするとそれだけも多くの費用がかかってしまうためあまり現実的ではないと思います。

こんな装置はそもそも動かしにくい

 

また、例えば培養装置からサンプリングして複数の分析器にかける、コロニーカウンターに投入するなど、もともと一人の研究者が作業、工程の途中で多くの機器を使用しているため1台のロボットを固定で使うには少々レイアウトとして苦しいということもあります。

固定して動かせない装置と、いくつかの機器は動かせるということであれば、ある程度一列に並べることで走行軸のうえにロボットで各機器間を搬送することが出来ます。例えばサンプリングを行って、取り上げたサンプルを各分析装置へレールで移動、装置のところでロボットで投入、といった動きです。

そしてどうしてもそういった一直線の導線を作ることが難しい場合にはAMRにロボットアームを搭載することで解決することが出来る可能性があります。ラボの場合、壁際に大型装置、島形レイアウトのデスク上にそれぞれの分析装置が置かれていることが多いので、各島へAMRが移動して、分析装置箇所でロボットがサンプルを投入するという方法になります。

ただ、その際も配慮しておくべきことはあります。
1.AMRが通れる導線、通路があるか
2.途中に段差や隙間はない、または小さなものであるか
3.途中障害が多くなっていないか
4.装置箇所近くにドッキング出来る広さはあるか
5.装置箇所は傾斜になっていないか
状況によってこれ以外にも発生しますが、まずはこのあたりは見ておかれるとよいと思います。

また、AMRの停止の精度も向上していますし、さらにマーカーなどの工夫で精度を高めることが出来るようになってきていますが、さらに取り出すものの大きさや求める精度が必要な際には装置とのドッキング箇所でクリッピングさせるなどによってより精度よく停止させることが出来ます。ジェットコースターの搭乗近辺でサイドレールがブレーキをかけるようなイメージです。そうすれば繰り返し停止精度が向上しますので、固定したロボットと近い精度でアーム動作が行えるようになります。

どれが「動かせないもの」でどれが「動かせる」? そして、歩く導線は?

 

色々と便利なロボットやAMRを組み合わせることで、レイアウトを変えることが難しいラボでも自動化が進められる可能性があります。また移動の自由度があがりますので、あわせてこの辺もやれると嬉しい…などの気づきになるかもしれませんね!

ちょっと自身がレストランの配膳ネコ型ロボットみたいになった気分で、ラボを歩き回って見てみると面白いと思います(笑)

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【著者紹介】山本 圭介

株式会社MIRA 代表取締役。ロボットメーカー、AIベンチャーにおける営業・事業企画・新規事業開発を経て、よりユーザーサイドにおけるオーダーメイド型の導入支援が行えればと考え株式会社MIRAを設立。
現在、医薬品メーカー等をはじめとした研究者の実験作業や分析、品質管理などで行われる各工程における産業用ロボット、協働ロボットやAIを組み込んだシステムの活用可能性の検討から構想支援、導入支援等のコンサルティングを行っています。一方で他メーカーのロボット関連製品やAIサービスの企画支援や営業支援、また、ユーザーに向けたロボットやAIに関する勉強会の開催やセミナー登壇を行っています。

このライターの記事一覧

 

近年研究や実験作業におけるシーンでもロボット等を用いた「自動化」の流れが強くなってきていると感じています。
このシリーズでは、工場だけでなく研究所等の様々な作業のロボット導入・DX導入に携わってきた私、MIRAの山本が、ラボの自動化・ラボラトリーオートメーションをテーマに、ロボットやAIの活用について楽しく解説していきます。