【微生物検査】メンブレンフィルター法を利用する大腸菌検出方法

2022.12.08

河川や湖沼、指定遊泳区域などの水域環境における微生物汚染は、人間の健康を著しく損なう危険性があります。このような環境水の水質の微生物汚染を確認するために、ふん便汚染の指標として、大腸菌が利用されています。

近年では、2022年4月から環境省の告示により、従来の最確数法による大腸菌群数を検査する手法から、メンブレンフィルター (MF) 法による大腸菌数を検査する手法に変更され注目が集まっています。本記事では、MF法を用いた大腸菌数の検査方法を解説していきます。

メンブレンフィルター (MF) 法とは

MF法は、メンブレンフィルターに微生物を捕捉し、捕捉したメンブレンを寒天培地上で培養することで微生物の数を正確に定量する方法です。

微生物を検出する方法として、MF法の他に寒天培地に直接菌液を塗布する平板塗抹法があります。この平板塗抹法と比べ、大量 (>100 mL) のサンプルを用いることにより微生物数の高感度かつ高精度な計測が可能です。

現在では、各国の薬局方や環境微生物検査法に収載されています。近年では、環境水中の大腸菌検査のためにMF法が採用されています。

一般的なMF法の原理

 

MF法で使用する器具は主にメンブレンフィルター、ファンネル、吸引ポンプ、ろ液を回収する容器やマニホールドが必要になり、サンプルが触れる器具類に関しては滅菌操作が必要になります。使用するメンブレンフィルターの孔径や材質は、微生物やサンプルの種類に依存します。

●大腸菌群及び大腸菌:孔径 0.45 µm、材質 セルロース混合エステル
●レジオネラ属菌 (ろ過濃縮法):孔径 0.2 µm、材質 ポリカーボネート

次項からは、Cytiva ディスカバリー製品を利用するMF法の試験操作の流れを解説していきます。

全編動画はこちらからご覧ください。↓

 

試験操作方法 (一般的な方法)

事前に滅菌したマニホールドとマグネチックファンネル、ディスクメンブレン、ピンセットそして寒天培地をクリーンベンチ内に準備します。

1. マニホールドにマグネチックファンネルを取り付けます。
2. ファンネルの上部を外し、メンブレンフィルターを設置します。
3. サンプルをファンネル内に注ぎ、吸引ろ過を実施します。
4. メンブレンを回収して寒天培地に設置し、反転培養します。

上記は一般的なMF法の手順を簡素化したものです。詳細はダウンロードコンテンツや動画をご参照ください。

動画では、上記の手順の他に、メンブレンとファンネルが一体型になったマイクロファンネルを使用する例もご覧いただけます。特に滅菌済みのマイクロファンネルを利用する場合は、ファンネルの滅菌操作やメンブレンの設置作業を省くことができます。そのため、検体数が多い場合に非常に効率的に交差汚染のリスクを低減することができます。

試験操作方法 (マイクロファンネルを利用する方法)

滅菌されたディスポーザブルのマイクロファンネルを利用する場合、上記の手順からファンネルの滅菌やメンブレンの設置の手順を省くことができます。

マイクロファンネルを利用するMF法の原理

 

1. マニホールドにマイクロファンネルを取り付けます。
2. サンプルをファンネル内に注ぎ、吸引ろ過を実施します。
3. ファンネル部分を外し、メンブレンを回収して寒天培地に設置し、反転培養します。

検体数が多い場合に、数多くのファンネルを滅菌しなければならないため、ディスポーザブルのマイクロファンネルは非常に効率的です。特に検水はろ過するまでの時間にタイムリミットが設けられている場合もあるため、滅菌時間を省略できるのは一つの選択肢とも言えます。

MF法によって形成された大腸菌コロニーの典型例

MF法によって捕捉した微生物検出の例をこちらに示しました。

下図では、寒天培地にX-Gluc (5-Bromo-4-chloro-3-indoxyl-beta-D-glucuronic acid)を加えることで、大腸菌のほとんどがもつβ-グルクロニダーゼの活性により、青色の呈色反応が起こることでコロニー形成を観測することができます。

おわりに

MF法ではメンブレン上に大容量のサンプル中の微生物を捕捉し培養することで高感度にサンプル中の微生物数を定量することができる手法です。

監修を行ったCytiva ディスカバリー様ではこのMF法に利用できる製品を一通り取り揃えておりますので、ぜひご興味ございましたら、お問い合わせやダウンロードコンテンツ、上記の動画もご参照ください。

監修:Cytiva ディスカバリー

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アプリケーションノート:メンブレンフィルター法を用いる環境水中の大腸菌数の計測方法

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