電子天秤の使い方 ~基本や選定方法のポイントも解説~

2022.12.07

電子天秤は研究開発部署を始めとして、様々な場所で毎日のように使用される計測機器です。
ただ毎日使う割に天秤そのものの仕組みや、使い方に関して詳しく知っている方はあまり多くないのではないでしょうか。

本記事では電子天秤の基礎や選び方について紹介し、今後の製品検討の際にお役立ちできたらと考えております。

 

電子天秤とは? ~測定原理とその特徴~

① 電子天秤とは

質量を測定するために使用され、複雑な操作は不要で、測定物を乗せるだけで重量値を得ることが出来る天秤です。星座で思い浮かべるような古典的な天秤は「上皿天秤」といい、片方のお皿に基準となる分銅を乗せてもう片方に測定したい試料を乗せて、釣り合ったときの分銅の質量から試料の重さを求める方式ですが、それと比べて格段に精度や作業効率が向上します。

② 測定原理

大きく分けて2つの測定方式があります。

1. 電気抵抗線式(ロードセル)

起歪体(きわいたい)と呼ばれる金属に歪みゲージを貼り付けたもの。力が加わるとゲージに歪みが生じ、電圧に変化が生じます。その電圧の変化を重量値に換算し表示するような仕組みになります。

構造が比較的簡単なため低コストで量産がしやすいですが、精度は後述の電磁平衡式と比べると粗くなります。

ロードセル式の例:台はかり、卓上はかりなど

ロードセルの仕組み

 

2. 電磁平衡式(フォースコイル)

冒頭で述べた上皿天秤(お皿が左右についている天びん)のような機構が、製品内部に組み込まれているのを想像してください。サンプルを乗せるとレバーの片側が沈み、もう片方が浮き上がりますが、この際電磁力を加えて平衡を保とうとします。

フォースコイルの仕組み

 

平衡を取るのに必要な電磁力は載せたサンプルの重さによって変わってくるので、その電磁力を重量に変換して表示する仕組みになります。高精度・高分解能で細かい値も測定できますが、構造が複雑な分高価になる傾向があります。

電磁平衡式の例:分析用精密天秤

 

設置環境と誤差要因

電子天びん、特に細かい値まで測定できる分析天びんは設置環境の影響を受けやすい製品です。「なんだか数値が安定しない」、「本来の値と違った値が出る」等々、実際に使用していて困った経験のある方は少なくないのではないでしょうか?

ここでは使用現場で気を付けるべきポイントと対策方法についてご紹介いたします。

①静電気

天秤の表示値がやたら安定せずパラパラと動いてしまう場合、まず疑うべきは静電気です。特に分析天びんで粉体試料を測るときや、乾燥しやすい秋~冬にかけて困っている方は多いのではないでしょうか。
これは帯電物が計量皿に近づくと、周りの物体に帯電物を反対の電気が発生し、帯電物と引き合うためです。更に、帯電物を計量皿に乗せた後も、静電気が時間とともに空気中などに逃げていくため、これもまた計量値が変動する要因になっています。

電子天秤と静電気の関係については、下記の記事でも詳しく解説しています。

電子天びんの数値が安定しないのは静電気のせい?原因と対策について解説

【対策】
・仕様現場の湿度管理(45%RH以上)
・除電機(イオナイザー)の使用

イオナイザー

 

②振動

振動する機器が置いてある机や、人の出入りが多いドアの近くに天びんを置いていたりしませんか?分析天びんはそういった揺れ、振動をも拾ってしまうくらい敏感な製品です。

また、大通りに面しているとトラックが通った際の振動を拾ったり、2階以上のフロアで使用すると建物自体が風などにより揺れやすくなります。


【対策】
・壁際、部屋の隅で人の移動が少ない場所に設置する
⇒部屋の中央は強度が弱い傾向があり揺れやすいですが、部屋の隅は大抵の場合支柱となっているため、床も比較的しっかりしています。
・建屋の1階、もしくは地下に設置する
・振動や熱を発する機械の近くには置かない
・除振台を使用する

除振台

 

③風、温度変化

空気の流れや温度変化も分析天秤に影響を与えます。エアコンの真下などでは風が直に当たるため、数値の安定を阻害します。

また、天びんがおいてある室内と外とで温度差がある場合なども、対流が生じる影響で数値がブレやすくなります。

【対策】
・エアコンの風が当たらない位置に設置する(電子天秤用風防のドアを開けた時に、風が入り込まないような位置に置く)
・風防を用意する
・近くに熱を発する機械などを置かない
・直射日光が当たる場所を避ける

天びん用風防

 

天秤の選び方

では「いざ天秤を購入するぞ!」となった時、どのような基準で選べば良いでしょうか。

各メーカー非常にたくさんの種類の天秤があって探すのにも一苦労…そういった際、最低限この基準を設定して探せばお目当ての天秤と出会いやすくなるかと思います。

①秤量(ひょうりょう)

測定可能な最大重量、キャパシティを指します。秤量1,000gであれば1,000gまでのものであれば測れます。

秤量は風袋(ふうたい)、つまりサンプルを入れる容器などの重さを差し引いた分だけ測れるので、例えば秤量1,000gで風袋が100gであれば、実際に測定できるのは900gまでとなります。

②最小表示

一目盛りのことで、最小表示0.1gなら、天秤にモノを乗せた時0.1g刻みで表示されます。目量と呼ばれることもあります。

 

まず上記2つをある程度想定して選ぶことをお勧めします。そこに加えて通信機能や防水性能、諸々のオプション品の有無やサイズ感などを確認していくとスムーズかと思います。

 

いきなりですがここでクイズです。
「最小表示0.1gの細かさで計量したい!」といった際に選ぶ天秤は、最小表示0.1gのもので良いと思いますか?

………その場合は、実はもう1桁細かい、0.01g刻みで見れる天秤をお求めになったほうがいいかもしれません。

天秤において表示される一番下の桁というのは四捨五入した値が表示され、誤差の影響を受けるため、正確性という面で見ると心許ない数値と言えます。

そのため、0.1gを確定させるには0.01g。0.01gを確定させたいなら0,001gといった感じで、もう一桁細かい表示の電子天秤を使用することを推奨します。

 

まとめ

何となく使っていた電子天秤も、こうしてみると結構奥が深いなと思っていただけたのではないでしょうか?

使い方こそシンプルではありますが、実際には注意事項や選ぶコツなどがあります。

これまで意識していなかった外乱要因などを少し気にして使用したら、より正確な計量が出来るようになるかもしれません。

 

 

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