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流体を扱う研究分野において必須とも言える「粘度計」。
本記事は粘度計取扱代理店・英弘精機株式会社様の監修のもと、そもそも粘度とは何か、そして最適な粘度計の選び方とはどうすれば良いかをわかりやすく解説致します。
CONTENTS
べたべた、とろとろ…など液体の状態を現す言葉はたくさんありますが、「べたべた」している液体と「ぬめぬめ」している液体はどちらが粘り気があるのかは言葉だけでは判断することができません。
液体の粘性を客観的に評価する指標として「粘度」というパラメータが存在します。
「粘度」はある流速で流した時に生じる流動抵抗から求めますので、速度(せん断速度)と応力(せん断応力)の関係が「粘度」になります。せん断速度はどれくらいのすき間をどれくらいの速度で流れているのか、せん断応力は単位面積当たりに生じている力になります。
式で表すと、「粘度」=「せん断応力」/「せん断速度」となります。
粘度の単位はPa・s(パスカル秒;SI単位系)で表記します。接頭語のm(ミリ)をつけてmPa・sで表現する場合もあります。また、cP(センチポイズ;CGS単位系)で表記される場合もありますが、mPa・sとcPは同じ値になります。
液体の流動特性として、速度と応力が比例関係(=粘度が一定)に見られる流体と、速度が変わると粘度値が変わってしまう流体に分けることができます。
前者の流動様式をニュートン流動、後者を非ニュートン流動といいます。
単一成分で構成される液体の多くはニュートン流体となりますが、そこに粉を分散していたり高分子を配合したりすると、非ニュートン流体の性質が現れてきます。
ニュートン流動の液体であれば、1点の測定ができれば粘度の代表値が決まってきます。しかし、非ニュートン流動の場合、流動する(測定する)速度が変わると粘度値が変わりますので、代表値が存在しません。速度と粘度をセットで捉える必要があります。
ここで問題になるのが、測定するべき速度は、評価したい流速であるか?ということです。
ここからは""ペンキを刷毛で垂直面・水平面に塗る場合”を例として、なぜ粘度を測定する必要があるのかについて説明します。
以下の表は塗るという工程を3つに分解したときの作業内容と作業性・粘度測定の速度域をまとめています。
工程① 刷毛をペンキに浸した時に、より付着したほうが次の工程でよりたくさん塗れますので、粘度が高いことが求められ、測定するべき速度は低速度域になります。
工程② “塗る”工程では、1回の動きでより広い範囲に塗れるように低い粘度であることが求められます。この時は早い動きになりますので、高速度域で測定します。
工程③ 塗った後に“垂れない”ようにするには、高い粘度である必要があり、刷毛の跡を“平坦化”してほしい場合は低い粘度が求められます。
このように、非ニュートン流体の場合は工程に応じて測定するべき速度が異なります。ある速度で測定して得られたサンプル間の序列が、違う速度域でも適用できるとは限りません。よって、それぞれの速度域で適切な粘度であるかを評価する必要があります。
次に粘度計の種類について説明します。粘度計は大きく分けて4種類あります。
(1)細管式粘度計
U字状に曲げられた管の試料を入れます。ある位置からある位置まで試料が通過するのに必要な時間を計測します。
(2)落球式粘度計
試料で満たした円柱の上部から測定球を落とし、落下時間を計測します。
(3)回転式粘度計
試料と接触したスピンドルをある回転数で回転させるために必要なトルクを粘度値に換算します。速度に応じた流動特性解析が可能です。
いわゆる「B型(ブルックフィールド型)回転粘度計」がこの回転式粘度計に当たります。B型回転粘度計は「単一円筒型回転粘度計」に分類されます。単一円筒型粘度計にオプションパーツを追加し、「共軸2重円筒型回転粘度計」として扱うこともできます。
また、測定部が円すい・平板型になっている「コーンプレート型回転粘度計」も選択できます。
(4)振動式粘度計
試料にセンサーを浸し、一定の周波数で振動させ、振動を維持するために必要な電流量あるいは振幅の減衰量から粘度を読み取ります。
前章で様々な粘度計を紹介しましたが、実際どのように使い分ければよいのでしょうか。この章ではサンプルの性質別/操作性別/用途別の粘度計の使い分けを紹介します。
(1)サンプルの性質
☆流動特性
細管式 | 落球式 | 回転式 | 振動式 | |
ニュートン流体 | ○ | ○ | ○ | ○ |
非ニュートン流体 | ○ |
☆粘性
細管式 | 落球式 | 回転式 | 振動式 | |
低粘度 | ○ | ○ | ○ | ○ |
高粘度 | ○ | ○ | ○ |
☆分散系、高分子系
細管式 | 落球式 | 回転式 | 振動式 | |
単一液体 | ○ | ○ | ○ | ○ |
固液分散系 | ○ | |||
液液分散系 | ○ | ○ | ||
気液分散系 | ○ | ○ | ||
高分子系 | ○ |
☆サンプル量
細管式 | 落球式 | 回転式 | 振動式 | |
豊富に用意できる | ○ | ○ | ○ | ○ |
数mlしか用意できない | ○ | ○ |
☆測定温度
細管式 | 落球式 | 回転式 | 振動式 | |
室温近辺 | ○ | ○ | ○ | ○ |
100℃以上の高温 | ○ |
☆物性
細管式 | 落球式 | 回転式 | 振動式 | |
せん断速度・応力対応 |
○(※) |
|||
速度依存性 | ○ |
(※)うち、共軸2重円筒型、コーンプレート型のみ
(2)操作性
細管式 | 落球式 | 回転式 | 振動式 | |
簡便 | ○ | ○ | ○ | |
連続測定 | ○ | ○ | ||
デジタル出力 | ○ | ○ | ||
精度 | ○ | ○ |
(3)用途
細管式 | 落球式 | 回転式 | 振動式 | |
研究開発 | ○ | |||
生産・生産管理 | ○ | ○ | ○ | ○ |