計測器を買わずに、測定値を買う?「はかるEXpress」を聞いてみた

2022.07.11

計測器を買うことなく、日報・月報も作ってくれて、試薬交換もしなくて良い。測定値だけを取得できるサービスがある―

すごく便利そうに聞こえるけれど、こういうのは大抵、オプション地獄であったり、めちゃくちゃ小さい文字で大量に注意書きがあるやつに違いない。これは詳しく問い詰め聞いてみなければ…。

という事で、堀場アドバンスドテクノの平野さんと新庄さんに色々聞いてみました!

 

どんなサービス?「はかるEXpress」

今日はよろしくお願いします。

 よろしくお願いします!

では早速…冒頭に書いたようなサービスがあると聞いたんですが、具体的にはどういうものですか?

はい、『はかるEXpress』というサービスなんですけど、ざっくりいうと水質管理の現場で使われている計測機器のサブスクリプションサービスになります。

そもそも水質管理の現場ってどこで何をやってるんですか?

『はかるEXpress』の対象機器は窒素・りん計系の計測器になります。これがどこで使われているかというと、東京湾や伊勢湾、大阪湾に瀬戸内海といった閉鎖性海域と、その海域につながる河川に対して放流している事業所(工場や下水処理場等)です。

閉鎖性海域?

外海との水の交換が少なく、放流された排水が水域内に滞留してしまうため、水質汚濁が進行しやすい海域のことをいいます。この海域に対して放流をおこなう事業者は、汚濁物質の排出量を一定以下とするよう、法律で定められています。

窒素やりんも法律で規制される対象ということですね。

そうです。そのため、規制対象の物質がどれくらい排水に含まれているのか計測できる機械が対象の事業所には導入されているんです。

 

どうして計測器のサブスクを?どんなメリットがあるの?

使用場所はわかったんですが、法律で定められているなら既にそういった事業所には計測器が導入されていますよね? どうしてわざわざサブスクなんですか? 買い替えでもいいのでは?

平成13年に「第5次総量規制」という事で窒素やりんの排出量を規制する法律が施行されました。必ずやらなければいけない測定ではあるものの、やったところで何か付加価値がついたり、生産性が上がるというようなこともなく、事業者にとってメリットがある話ではないんですね。なるべくコストは抑えたいと考えるのが自然ですよね。

確かにそうですね。

更新のために計測器を購入するとかなりの初期費用がかかりますが、『はかるEXpress』であれば月額の利用料のみとなりますので、導入や更新のコストを数百万円抑えることができます。

とはいえ、設置費用は必要ですよね?

機器設置のためのアンカー打ち・電源線・配管の準備はお客様負担になりますが、既に導入した機器のリプレイスであれば準備済みである部分も多く、設置費が大きくかかるという事はほとんどないかと思います。

ちょっと話を戻して、どうしてサブスクなのか?について。導入費用の問題以外に労働人口減少の問題もあります。水質管理の現場責任者となる資格を持った方は、年々減少しています。人は減っても測定作業は無くならないので、現場の方への負荷がどんどん高まっているという課題もあります。

それはサブスクにしても変わらないところだと思ったんですが、最初に書いた「日報・月報制作も試薬交換もしなくていい」につながってきそうな話ですね…。

そうです。これまでの計測器を購入してもらう形だと、導入後に我々が関わるのは年に1回のオーバーホール(メンテナンス)の時や、トラブル対応の時が多く、それ以外の普段の運用はすべてお客様にお任せしていますという形になります。

普通に機器を購入したら、こうですね。

それが『はかるEXpress』はこのようになります。

計測器は我々の資産として、お客様の現場に設置させていただきます。この本体には通信機がついておりまして、測定値だけでなく機器の内部データをクラウドにアップしています。測定値に関しては日報・月報という形でメール配信し、内部データを用いて我々は遠隔で計測器の状態監視を行います。遠隔で計測器の状態を監視しながら、適宜日常保守を含めたサービスを実施させていただきます。

利用者は何もしなくてもいいんですか?

測定を行うと廃液が必ず発生してしまうので、この廃液処理だけお客様で対応いただく必要があります。それ以外のところは私たちにお任せいただいて、測定値だけ受け取っていただければ大丈夫です。

よく「リースと何が違うんですか?」という質問を頂戴するのですが、リースの場合、計測器の所有権はリース会社で、利用者は計測器の使用権を渡してもらっているという形です。そのため、計測器の運用はお客様自身で行う必要がある。『はかるEXpress』は所有権は我々で、使用権も我々です。運用自体も私たちが行います。

 

でも、お高いんでしょう?

なんかすごいいい話ばっかり聞いているんですが、かなりお高いんじゃないですか?

…スッ

これは………きっと「~」が罠ですね。試薬で儲けるモデルですか?

試薬代はこの月額利用料に含まれています。突発的なトラブル等がなければ、通常プランの場合は4カ月に1回・Lightプランの場合は2カ月に1回、サービスマンが訪問させていただいて、測定用の試薬や消耗品、必要に応じて部品の交換を行いますが、これらの費用はすべてこの金額内で含まれています。

通信費がめちゃくちゃ高いとか…

含まれています。

じゃあ「~」って何が対象なんですか? あっ、オプションが死ぬほどあるとか…?

(めちゃくちゃ疑ってくるな…)

「~」の部分は仰る通りオプションになります。どうしても計測器を屋外に設置しないといけないとか、測定サンプルに海水が入ってくるケース、環境省試験を年に2回実施しないといけない等、いわゆる特別対応をしないといけない場合ですね。このような特別対応がない限り適用事例はありません。

実質この表通りの金額…ってコト…?

そうなります。

ちなみに機器を購入するといくらくらいかかるんですか?

仕様にもよりますが2成分計だと標準価格ベースで550万円から、+UV計だと700万円からとなります。本体代だけ考えれば当然どこかの段階で「購入した方が安い」となるんですが、日常保守やレポート制作、トラブル発生時の緊急対応といった工数、試薬代や消耗品の費用、トラブル時のスポット対応費などがすべて含まれているので、そこをどう計算するかによって、高い/安いの考え方は変わってくるんじゃないかなと思います。

 

故障したら?

計測器を購入する場合、導入後に関わるのはトラブルの時のサービスマン…というお話がありましたが、『はかるEXpress』ではどうなるんですか?

通常プランとLightプランで故障時の対応が異なります。まず通常プランについて。こちらの場合、計測器が冗長構成になっています。計測器に何らかの不具合が発生した場合、バックアップシステムが発動し、測定が継続されます。測定が継続されている間にサービスマンが不具合対応をさせていただきます。

Lightプランではどうなるんですか?

こちらは冗長構成ではないため、不具合発生時は原則2営業日以内にサービスマンが現場訪問させていただく、という形になります。

不具合発生中のデータ測定は、利用者側による手分析になってしまうんでしょうか?

不具合を検知すると、お客様の元には不具合発生の通知と共に「採水依頼」がメールで飛んでいきます。採水は任意にはなりますが、8時間欠測毎に1検体を弊社にて分析させていただく権利を付与させていただいております。対応したサービスマンがそのサンプルを回収して分析し、後ほど測定値として報告させていただきます。

ちょっと話がずれちゃうんですけど、内部データって通信機経由で飛んでいくんですよね? この通信機っていうのは、事業者側の社内ネットワークに入るってことですか?

いえ、通信機にはLTE通信ができるユニットが入っているため、お客様のネットワークを使うことはありません。設備を置く場所さえあれば大丈夫です。

なるほど…ここまで聞いていて、利用者の方はすごく楽になるんだなというのはわかるんですが、導入が進めば進むほど堀場さんのサービスマンが大変になりませんか?

実はそうでもなくって、サービスマンはオンコールで呼ばれることも多いんです。トラブルの電話連絡があれば最優先で対応しなければいけない。しかも、現地に行ってみるまで計測器のどこに問題が発生しているのかもわからないため、対応時間も予測が立てづらい。現地に着いてもその場は原因の確認だけで、後から対応のために再訪するという事も少なくありません。実はこのスケジュール化しにくい対応のやりくりに苦労している面があります。

なるほど。

『はかるEXpress』の場合、計測器の内部データがクラウド経由で確認ができるため、遠隔にいながらどこに異常が発生しているかがわかります。そのため、現地に向かう前にきちんと準備していける。通常プランの場合は冗長化構成となっているので、お客様のデータが欠測してしまう事も可能な限り低減しています。

こんなうまい話ある…?

 

窒素りん計に時間を奪われたり、維持管理へ不安がある方に届いて欲しい

最初の話に戻るんですが、そもそもこの窒素・りんの計測器を使って水質管理をしている事業所っていうのは、全国にどれくらいあるんですか?

水質管理しないとダメですよ、と指定されている事業所は3,500程あります。自主管理をしている事業所もあるので実際にはそれ以上になりますが、自治体にきちんと報告しないといけない事になっている事業所はそれくらいです。

なるほど。その3,500が『はかるEXpress』のユーザーさんになるわけですね。

3,500すべての事業者様に『はかるEXpress』を導入したいという事ではないんです。人材を確保できていて、自社で運用がきちんと回せるのであればそれに越したことはないので、そういった方々にわざわざ『はかるEXpress』を入れましょう!という活動はしていません。

そうですね。計測器の運用に時間を奪われていたり、日常管理が属人化していて特定の人にばかり負担がかかっているとか、あるいは人材の維持が難しく、水質管理の管理体制を維持することに不安がある。そういった方々には、きっとお役に立てるサービスだと思います。

ありがとうございます。だいぶ疑り深い質問をしてしまいましたが、お話を伺って面白いサービスだなと改めて感じました。

『はかるEXpress』にかぎらず、水質管理をはじめとした測定器に関する事でお悩みがあれば、本当にお気軽に相談して欲しいです。色々な製品やサービスがございますので、何かお役に立てると思います。

今日はありがとうございました。

ありがとうございました!

 

あ、ちなみにレンタルみたいに申し込んだら中古の機器が届くとかは無いですか?

新品が届きます。

ですよね…!

 

おわりに

計測器を買わずに、測定値を買う
まったく新しい定額制の水質管理システム
『はかるEXpress』

疑り深く色々聞いてしまいましたが、お話を伺っていくと「やらなきゃいけないのに人材確保が難しくなっていく」今の時代のニーズをピッタリ捉えていて、これは流行る…と思うと同時に「はかるEXpress」以外にも似たようなサービスがどんどん増えていくんじゃないか?と感じました。

 

詳しい話が聞きたい方、資料が欲しい方、こんなのもできる…?といった疑問・質問が沸いた方…

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