#24 AIロボットで熟練医の不足を解消する

2022.05.23

人々の健康や生命を預かる医師、多くの人に必要とされ、将来の職業とし憧れる子供たちも多いでしょう。しかし華やかなイメージとは裏腹にその現場は非常に過酷であり、最近は医師の不足や疲弊などが叫ばれるようになりました。今回はそういった労働環境を改善し、より多くの人々の健康を守るべく、名古屋市立大学の現役泌尿器科医師である田口代表が立ち上げたNDR Medecal Technology Japan 株式会社をご紹介いたします。

「医療の逼迫」はなぜ?熟練した医師の不足

日本の医療は国民皆保険として、世界的にみても比較的安価で高水準のサービスが受けられる優良な制度であることが知られています。しかし昨今のコロナ禍において、「医療の逼迫」という言葉を聞くことが多くなりました。

実際にコロナ診療以外にも、がんや生活習慣病などの病気で専門的な治療が必要な場合でも、診療にあたる専門医の数は限られており、受診までには時間を要すことも少なくありません。例えば、尿路結石は年間で3800万人が罹患するとされ、手術件数は10年で1.3倍に増えていますが、診療に当たる泌尿器科医師の数は足りていません。

また、日本人に多い肺がんは生存率が20%と予後不良であり、画像検査や組織生検による早期発見が重要ですが、診療にあたる放射線科医師の数は必要とされる数の50%強にしか満たないと考えられています。このように、医療現場では医師の不足・疲弊が危ぶまれています。

こういった医療逼迫の原因として、専門的な検査・手術などを行う医師の不足が考えられます。最近では針や内視鏡を使った低侵襲な手技が主流となってきましたが、多くはその習得までに50例以上を経験する必要があり、5−10年の歳月を費やします。

熟練医の技をミミックするAI×ロボット工学に着目

例えば尿路結石の手術では、経皮的腎砕石術といって体表から腎臓に穴を開け、内部の結石を破砕して取り除くものがあります。この手術で最も難しいところは、X線や超音波などの2Dの画面で腎臓の形・結石の位置を把握しながら3D構造をイメージし、体表から腎臓内部に針を穿刺する過程です。

体内は透けて立体視できるわけではないため、執刀医の経験や主観に頼った手技となり、正確さを欠くこともあります。これは、がんなどを見つける組織生検でも同様であり、CT画像のスライスを1枚1枚重ねながら少しずつ針をすすめる、とても慎重で骨の折れる作業です。

経験の浅い医師でもこれだけの手技を熟練医と同様に行う方法はないか?そこで着目したのがAIおよびロボット工学です。

Automated Needle Targeting(ANT)が埋める初心者と熟練医の差

上記のような熟練技術を機械でサポートするためには、①X線やCT画像などのリアルタイムでの表示と、②それら2Dの画像から立体構造を予想し最適な針進入角度の計算、③角度に合わせた針先の動きのガイド、といった高度な性能が要求されます。

NDR Medical Technologyが開発するAutomated Needle Targeting (ANT)はこれらの要求性能を満たし、AIxロボット工学をもとに体表から体内臓器への針穿刺の自動化を実現したシステムです。ソフトウェアで画像を読み込みモニターで映し出すAI搭載のステーションと、穿刺針を固定し適切な角度への自動調整の動きを行うロボットアームで成り立っています。

ANTシステムは2つのコア技術を持っています。1つは、術中のX線やCT画像をリアルタイムで取り込み、標的となる病気の部分を見つけるNDAnalyzer™、2つ目は、ロボットアームにあるマーカーと標的との距離角度を自動計算し、最適な針の進入経路を割り出すNDPathfinder™です。これらのコア技術により、安全かつ正確な針穿刺が可能となります。

実際にANTの実証実験では、針穿刺の正確性はおよそ1.5倍となり、手技習得までの期間も従来の5分の1以下であることが分かりました。このようにANTの使用で、初心者でも早く熟練医に近づくことができます。

欧州、アジア・オセアニアから日本へと事業拡大

ANTシステムのうちX線ガイドのANT-Xにおいては、欧州の医療機器承認であるCE、シンガポールのHAS、マレーシアのMDAでの承認を獲得しています。また中国においては、NDR Medical Technologyとのジョイントベンチャーの立ち上げ、インド、韓国においてはそれぞれVishal Surgical Equipment、CGBIOとのパートナーシップを結び、今後の事業拡大を目指しています。

日本においても2022年2月に日本法人となるNDR Medical Technology Japan株式会社を設立し、国内でのパートナー企業・病院・医師との連携を構築し、ANTシステムの普及に務めていく予定です。名古屋市立大学病院を中心に、泌尿器科・放射線科との共同研究が開始されており、実際の医療現場におけるANTシステムの評価が行われています。

Automated Needle Targeting(ANT)がもたらす医療革命

私たちがANTシステムによる医療の恩恵を得られるには、日本国内での医療機器の承認が必要になります。現在、NDR Medical Technology Japan 株式会社では独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)への医療機器承認の申請準備を行っています。

中でも、国内において安全かつ有効性が高い医療機器として評価されるためには、多施設の臨床試験(治験)が必要です。2022年中には治験を開始できるよう、プロトコルの立案、協力していただける病院・医師の方々に相談を行っています。早ければ2023年にX線ガイドのANT-X、2024年にはCTガイドのANT-Cの機器承認と販売開始を目指しています。

ANTシステムにより早く安全な手技を獲得したい、治験に参加したいなどの病院・医師、協業を目指したい企業の方々の参加を募っています。世界でもまだ殆ど導入のない、先進的な技術による医療革命にご興味いただける方はぜひご連絡下さい。

まとめ

ANTシステムの普及により、これまでよりも多くの病院・医師の方々によって低侵襲な医療が行えることで、誰でもどこでも低侵襲な治療が受けられる。医療の逼迫がなくなることを期待しています。
皆さまからのご連絡をお待ちしております。