実験で利用するろ過の基礎

2022.04.01

様々な実験工程において、使用するサンプルに含まれる異物を取り除きたい、サンプルをきれいにしたい、2種類ある大小の分子を分画したいなどの要望が存在します。このような要望に対して、的確に応える手順としてろ過工程が存在します。一般的にろ過は、ろ材である多孔質媒体を通過することによって液体や気体に含まれる異物を取り除くことを指します。一般家庭では、コーヒーフィルターなどに使用されているほど大衆に浸透しているろ過工程ですが、実験的に手段として利用するろ過には、様々な種類が存在します。本記事では実験で用いるろ過工程の種類とその特性、どのような製品が存在するのか記載しています。

はじめに 実験ろ過の用途と種類

実験の工程で使用されるろ過には、ろ材の孔のサイズによって大きく逆浸透、限外ろ過、精密ろ過、粗ろ過の4つに区分されます。

●逆浸透:半透膜で隔てた浸透圧の違う2種類の溶液に、浸透圧が高い溶液に浸透圧以上の圧力を加えると、浸透圧の低い溶液側に水分子のみが移動する現象を指します。一般に使用される半透膜の孔のサイズはおよそ数nm以下で、低分子量の分離に用いられます。
●限外ろ過:タンパク質などの高分子と低分子 (イオンなど) を分離する方法で、逆浸透膜よりも大きい、およそ10 nm – 100 nmの孔の大きさをもつ膜を利用します。限外ろ過膜の孔のサイズは分画できる分子量(分画分子量)で表示されます。
一般的には遠心操作を利用してその限外ろ過膜の分画分子量よりも小さい分子量をもつ分子を膜へ通過させます。
●精密ろ過:限外ろ過膜よりも孔のサイズが大きく、およそ0.1 µm – 10 µmの孔径のろ材を使用する方法です。サンプル中に含まれる微粒子を除去し、サンプルの清澄化に利用されます。
●粗ろ過:精密ろ過よりも孔のサイズが大きいろ材を使用します。一般的には、精密ろ過膜の目詰まりの防止のため、限りなく微粒子等が多く存在する場合にプレろ過として実施します。

分子の分画や脱塩を目的とする場合は限外ろ過、サンプルの清澄化や培地のろ過滅菌は精密ろ過というように実験の目的に応じてろ過方法が変わります。本記事では、4つに区分されるろ過方法にうち、精密ろ過について解説します。

精密ろ過について

精密ろ過は、使用するろ材 (膜) の孔径が0.1 µm ~ 10 µmのものを使用し、サンプルを膜へ通過させる方法です。主にサンプルの清澄化に使用される精密ろ過ですが、孔径の大きさによって以下のように性質が変化するため、実験系に使用するフィルターの孔径を適切に選定する必要があります。

孔径の大きさ:用途
0.1 µm:マイクロプラズマの削減
0.2 µm:ろ過滅菌
0.45 µm:サンプルの清澄化、大サイズのウィルス除去
0.8 µm – 5 µm:大きな粒子の除去、プレろ過

例えば、HPLC分析にかける前のサンプルのプレろ過として、孔径0.45 µmのシリンジフィルターが最もよく使用されます。これによりHPLCのカラムの目詰まりを抑制し、分析の妨げとなるアーチファクトの影響を低減することができます。
また、孔径0.2 µmのフィルターはろ過滅菌として使用できるため、培地の前処理に適しています。もちろん、使用するフィルターも滅菌されている必要があります。

ろ材 (ろ過膜) の種類と薬品耐性

精密ろ過で使用する膜、精密ろ過膜は主にデプス型と呼ばれるフィルターメディアを使用します。デプス型フィルターメディアは、平面上に均一に孔が存在するのではなく、膜の構造が複雑に絡み合う流路のようになっています。そのため、膜表面だけでなく、膜内部でも粒子が捕捉されるため、粒子の捕捉能が高いです。主に実験に用いられる精密ろ過膜は以下の通りです。

●PES (ポリエーテルスルホン):機械的強度が高く、他の膜と比べ高い流量特性を持つ。飲料、バイオ、製薬分野で広く使用されます。
●PVDF (ポリ塩化ビニル):機械的強度が高く、酸やアルコールに薬品耐性があります。
●ナイロン:親水化処理用の湿潤剤や界面活性剤を含まないため、膜からの溶出物の影響が少ない。また、一部の有機溶媒 (エーテル、エステル)に耐性があります。
●ポリテトラフルオロエチレン (PTFE):水溶液、有機溶媒、酸、アルカリなど様々な溶剤に対して薬品耐性があります。

使用するサンプルの溶剤の種類によって、用いる精密ろ過膜は異なります。緩衝溶液や培地などの水溶液はPESが広く使用されます。一方、移動相用に有機溶媒をろ過する場合は、薬品耐性のあるPTFEを使用します。

精密ろ過で使用するフィルター製品

サンプルの清澄化やろ過滅菌で使用するフィルター製品は主にシリンジフィルターが利用されています。溶剤の種類に対応できるように上述した様々な膜が使用されています。また、シリンジフィルターには以下のようにサンプル容量に応じたフィルターサイズを選択することができます。

シリンジフィルターの直径:サンプル容量
●4 mm:2 mL以下
●13 mm:10 mL以下
●25 mm:100 mL以下
●37 mm:100 mL以上

まとめ

精密ろ過は使用する孔径によって様々な目的に利用できます。ろ材の種類を選択することで広範囲にわたる溶剤に対してろ過を実施することができます。

 

監修:Cytiva ディスカバリー

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