定温乾燥器の選定~どれを選べばいいの?が解決する話~

2022.03.16

『定温乾燥器』、と弊社ではそう呼んでいますが、慣習的にオーブンや恒温槽、インキュベーターなど目的や業界によって様々な呼び方をされているのが実情で、しばしば混同して表現されています。

今回は、実験用装置としての乾燥器やインキュベーターに焦点を当て、それぞれの機器の特長と選び方について説明します。

乾燥器の種類 その1

今回紹介するのは主に定温乾燥器、インキュベーター、クールインキュベーターの3種類です。

これらは先にも述べたように、目的や業界によって呼び方が異なることがありますので、それぞれがどのような製品を対象として説明しているのかも含めて、説明していきたいと思います。

 

(1)定温乾燥器

当社では最高温度300℃付近まで温度コントロールが可能なオーブンを「定温乾燥器」と呼んでいます。定温乾燥器は、主に試料の乾燥やベーキング(熱処理)をすることを目的とした箱型装置です。

大きく分けると内部の風の状態から自然対流式、強制対流式という2種類に分けることができます。

自然対流式は、庫内下面に設置してあるヒーター(熱源)より生じる上昇気流により庫内の空気が緩やかに攪拌されます。紛体や顆粒状のような飛散を嫌う試料の乾燥には不可欠の装置ですが、もっとも経済的なモデルでもあります。

対して強制対流式は、庫内に設置されたファンによって強制的に空気を循環させることで、庫内温度を均一にします。温度分布に優れるため人気のモデルです。乾燥時間も早くなる傾向があります。

※空気の対流はあくまで温度分布を良くするために搭載しています。たとえば衣類用乾燥機のような、積極的に外気を取り入れて水蒸気ごと排出させるといった機能はありませんので勘違いのないように。

 

定温乾燥器(自然対流方式)

定温乾燥器(自然対流方式)

定温乾燥器(強制対流方式)

定温乾燥器(強制対流方式)

(2)インキュベーター

定温乾燥器と比較してコントロール領域が低温(35~80℃程度)のものを「インキュベーター」と呼んでいます。恒温器、恒温槽ということも多いですが、恒温「水」槽と混同しがちなので、ここではインキュベーターと記載します。

微生物の培養に使用されることが多く、扉を開けても温度が逃げにくいようにガラス製の観察窓が内側についているタイプのものが好まれます。

また、乾燥させることを目的としていないため、内部にファンを搭載していないものがほとんどです。

庫内にヒーターがむき出しで配置されていることも少なく、庫内の壁面を隔てて、断熱材側のエリアに設置されている場合がほとんどです。ヒーターが直接壁面に張り付けれている場合はダイレクトヒート式、この隔絶されたエリアの空気を暖めて、間接的に庫内を暖めている場合をエアジャケット式、これが水の場合にはウォータージャケット式と表現しています。この順で保温力が高まり、構造が複雑になるため高額になっていきます。

インキュベーター(エアジャケット式)

インキュベーター(エアジャケット式)

定温乾燥器(強制対流方式)

インキュベーター(エアジャケット式・プログラム機能搭載)

 

今回は書ききれないため割愛しますが、CO2インキュベーターや植物育成インキュベーターのようにガス濃度や光量・色調をコントロールできる商品もあります。

 

乾燥器の種類 その2

(3)クールインキュベーター

コンプレッサーやペルチェ素子等の冷却機構を有して、「室温以下の温度帯」まで制御できるものを総じて「クールインキュベーター」と呼びます。

冷却能力高いコンプレッサーを搭載したものが人気で、試料の冷蔵保存に使うこともできますが、多くは試料の熱に対する安定性試験に使われます。

基本的には強制対流式で庫内の空気は常に循環し、室温以下で使うと結露や霜が発生します。そのため、試料は密閉性の容器や袋に入れて庫内に入れることがほとんどです。

クールインキュベーター

 

(4)その他

先に挙げた3種類以外にも様々な乾燥器があります。

環境試験器

・・・温湿度恒温器内部の湿度までコントロールできる。試料の安定性試験用途が主。

電気炉

・・・300℃以上に加熱することができるもので、内壁は金属ではなく断熱材そのもの。金属、セラミックの溶融に使用される。

真空乾燥器

・・・密閉式で内部を真空にできる。試料の減圧乾燥用途

イナートガスオーブン

・・・密閉した後、不活性ガス(CO₂、N₂ など)で充満させて酸化を防止しながら加熱処理ができる。

 

乾燥器の購入にあたって その1

乾燥器を購入するにあたって、用途や機能などの選定ポイントがあります。ここからは、いくつかの選定ポイントについて説明します。乾燥器選びに迷った際は、ぜひ参考にしてみてください。

 

(1)乾燥器orインキュベーター

試料の加熱において乾燥を伴う場合は乾燥器、培養や安定性試験が目的ならインキュベーターやクールインキュベーターを検討してみてください。

もちろん、一概には言えませんが、例えば加熱を伴わない乾燥だけを目的とした場合には、デシケーターやシリカゲルなどの乾燥剤、加熱の精度を求めない水の蒸発だけを検討するのであれば、器具乾燥器、真空乾燥器などが適している場合もあります。

 

(2)温度をコントロールできる範囲

まず試料が溶けたり焦げたりしない温度で温調が出来るかどうか確認してください。

室温付近で温調を制御するには冷却機能が必要になるため、クールインキュベーターが必要となります。

ほとんどの定温乾燥器は室温よりも数℃以上高い温度でないと制御できません。なぜなら、ヒーターが300℃まで加熱できるハイパワーなものを搭載しているため室温に近い温度ではきれいに制御できないのです。

 

(3)プログラム・タイマー機能

タイマー機能はほとんどのモデルで搭載している標準的な機能です。対してプログラム機能は上位機能の位置付けとなります。

徐々に設定温度を上げていきたい、または少しずつ温度を下げてサンプルの応力を抜いていきたい、サイクル試験のように高温と低温を繰り返して劣化の程度を確認したい、といった場合にはプログラム機能を搭載している機器がよく利用されます。

プログラム運転

タイマー運転

(4)サイズ

内容物の大きさに依存することも当然ですが、一度に複数のサンプルを並べて試験したいという場合には数に応じて容量を大きくする必要があります。

再現性という点においては「温度分布(温度勾配)」を目安とすることが多いですが、加熱機器の庫内容積が大きくなるにつれて温度分布も悪くなるのが一般的ですので、注意が必要です。

 

乾燥器の購入にあたって その2

(5)温度分布・風の有無

強制対流は温度分布に優れている一方で、自然対流は温度分布は劣る(そこまで悪くもないのですがそれぞれを比較すると)が原則です。

使いたい試料が重く、風で巻きあがらない、または試料が軽い粉末粒子でも適切な「蓋付きの容器」を用意できるのであれば、迷わず強制対流式を選んでいただいて正解です。

しかし、多くの場合、蓋をすると、乾燥時間が余計にかかり、乾燥ムラの原因になったり、強い風で試料が舞いあがりコンタミ(※)するため、自然対流式でないと安心できない、ということも実際にはあります。

経験豊富なラボでは自然対流式と強制対流式の両方を所有していることが多く、用途に合わせて適切に使い分けされています。

(※)コンタミネーション:意図しない試料の混入のこと。たとえば、並べた隣の容器からはもちろん、前日のこぼした試料など、本来入っていないはずのものが混入してしまうこと。

 

(6)安全機能

過昇温防止機能といわれる機能で、ある一定温度以上になったら強制的に電源供給を遮断する安全機能がついています。

この温度検出値はもともと、火災を防止する目的で大雑把なものでしたが、近年はセンサーや制御基板が進化したことで、より細かな設定が可能になりつつあります。

 

(7)その他の便利機能

通信機能が搭載されているもの、強制対流が可変できるものなど、さまざまな商品がありますので、実験や用途にあった乾燥器を選定してください。

選定時に出てくる聞き慣れないキーワード

(1)PID制御

温度コントロールの方式のことです。

近年の乾燥器は、温度制御の方法としてフィードバック制御の1つでもある、PID制御を用いている商品が多く見られます。

PID制御とは、比例動作(P)、積分動作(I)、微分動作(D)の3つの要素を組み合わせて制御する方法ですが、簡単に表現すると、目標値の温度設定まで出来るだけ早く到達し、到達後オーバーシュート、アンダーシュート、ハンチングを出来るだけ回避できるため、目標値である温度設定値で安定でき、外乱があった場合でも復帰しやすくなるように非常に細かなON-OFF制御を行う方式のことです。

PID制御をすることで早く目標値に到達し、目標値で安定した制御を行い、綺麗な波形を得られるメリットがあります。

 

(2)温度勾配(温度分布)

温度安定状態後、庫内の中心及び有効空間の隅8点の計9点のそれぞれの平均温度を求め、9点の平均温度の最大値と最小値の差のことを示します。

まとめ

今回は乾燥器の特徴や選定時に注目する点について紹介しました。

新しい乾燥器を導入する際に、ぜひ参考にしてみてください!

 

以下リンクより、アズワン株式会社が運営するECサイト「AXEL」にて
取り扱いの定温乾燥器を検索することができます。
記事とあわせて選定の参考にしていただければ幸いです。


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