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「オートファジー」という言葉をご存じでしょうか?細胞の新陳代謝や有害物質の排除など、健康な身体を維持するのに重要な機能であり、2016年、東京工業大学教授の大隅先生がノーベル賞を受賞されたことで一躍有名になりました。しかしまだまだ「オートファジーとは」について広く一般に理解されるには至っていません。実はオートファジーは、食品や医薬品を用いて人工的に活性調整することで、様々な老化関連の症状や疾患を予防・改善することができる可能性のある、細胞の機能なのです。今回はそのオートファジーのオープンイノベーションプラットフォームを目指すオートファジーゴー株式会社にお話を伺いました。
オートファジーは、細胞という一つの社会の中で、たとえていうと無作為に物質を回収する運搬車とリサイクル工場を用いて、分解とリサイクルを行う仕組みです。オートファジーによって、この細胞内の新陳代謝は日々活発に行われており、何十日かすると、細胞の部品はすべて新品に入れ替わります。
まず最初に細胞の中にお皿のようなもの(隔離膜)が出現し、これがパックマンのように細胞の中の物質を包み込んで口を閉じます。それがオートファゴソームで、回収・運搬車の役割を担います。できたオートファゴソームは細胞内を交通網に乗って移動し、リソソームというリサイクル工場まで行きます。そして両者が「融合」し中身が混ざり合います。リソソームの中には消化酵素があるので、取り込んだタンパク質などが分解・再利用されます。
このオートファジーがどうやって行われているかについては、長らく謎に包まれていましたが、1990年代から大隅良典先生らにより、オートファジーに必要な遺伝子・タンパク質が次々と明らかにされました。その後、オートファジーがヒトにおいても様々な疾患の発症を抑えている重要な機能であることが明らかとなり、大隅先生は2016年にノーベル賞を受賞されました。
オートファゴソームは無作為な回収だけではなく、有害なものが細胞内に現れると、それを察知して取り込みに行きます。例えば病原性細菌やウイルスが細胞に感染すると、それらを取り込んで隔離しリソソームに運び、分解します。その他には、壊れたミトコンドリアも取り込みます。壊れたミトコンドリアからは毒性の強い活性酸素が漏れ出すので放置すると危険だからです。 オートファゴソームが取り込む有害物は多種類です。
アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患と呼ばれる病気は、脳の細胞の中に異常なタンパク質の塊ができて細胞が死ぬことで起きます。オートファゴソームはそのような異常なタンパク質を取り込んで分解し病気を防いでいると考えられています。
更に、オートファジーは病原体を直接排除するだけではなく、免疫システムを構成する免疫細胞を作ることや免疫システム内の情報の伝達にも関わっています。免疫細胞が抗体を作る能力の維持にも重要です。従って、免疫力を高め維持するためにはオートファジーが必要です。
このように、体を守ってくれている重要な機能である、細胞のオートファジーが低下してしまう条件についても、様々なことが明らかになってきました。高脂肪食を食べさせたマウスの肝臓ではオートファジーの能力が低下することが報告されています。オートファジーは肝臓の細胞の中に溜まる脂肪の塊(脂肪滴と言います)を分解してくれるのですが、オートファジーの働きが鈍ると肝臓に脂肪がどんどん溜まってしまいます。また、歳を取るとオートファジーの働きが鈍ってくることも分かってきました。
一方で、天然の食品成分の中に、オートファジーを活性化する成分がいくつか見つかっています。また、有酸素運動をすると、オートファジーが活性化することが知られています。オートファジーを活性化するような食事やサプリ、そして運動を有効に活用することによって、健康寿命を伸ばすことが出来る可能性があると考えています。
食品や化粧品によってオートファジーを活性化すると、どんな効果が期待できるでしょうか。
食品や化粧品により体内の細胞のオートファジー活性が向上すると、老化の根本にある細胞の機能低下が改善することが期待されます。株式会社AutoPhagyGOでは、現在様々な企業と共同研究を行い、加齢に伴う個々の身体の不具合に対して効果が認められる食品・化粧品成分群の開発を進めています。
特に、皮膚細胞におけるオートファジーの機能としては、メラニンを分解により減らす役割に加えて、皮膚細胞の老化防止・回復効果が考えられます。歳を取るとオートファジーが低下し、しわやしみ、くすみの原因になっているかもしれません。オートファジーの活性化により、細胞レベルから機能低下を改善させる効果が期待されます。
今回は株式会社AutoPhagyGOより、オートファジーについてお話を伺いました。ノーベル章を受章したこともあり、耳にしたことはあるという方もいらっしゃったかと思いますが、改めて深く聞いてみると奥が深い領域だということがおわかりいただけたのではないでしょうか?
株式会社AutoPhagyGOはすでに複数のパートナー様と共同研究に着手されています。大学同士の連携はもちろん、ライフサイエンス、食品企業など産官学を越えたオープンイノベーションを推進されておりますので、ぜひご興味をお持ちの方はお問合せください!