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アカデミスト株式会社は2021年9月1日、若手研究者を対象とした月額支援型クラウドファンディングのプロジェクト「academist Prize」を開始しました。アズワン株式会社は日本の未来を支える若手研究者を応援したいという思いに共感し、今回のプロジェクトにスポンサーとして参画しております。
「academist Prize」に採択された若手研究者の研究内容や研究に対する思いなどをインタビューしましたのでその内容をお届けします。
今回は「抱きつきしめじ」の画像を使った認知科学の研究で、ヒトの精神衛生向上を目指されている今泉さんに研究のお話を伺いました。
認知科学というのは様々な分野が混ざったものではありますが、共通点としては人間の知・情・意に迫っていくものになります。
知・情・意への迫り方としましては我々の脳をコンピューターとして捉え、我々がどのように外界の情報や環境を処理し知・情・意が作られていくのかということを研究しています。
私の研究は実験がメインです。心理学実験で俗にイメージされているものと近いもので、実験参加者にアンケートを取り、分析にかけて論文にするというものになります。
例えば私の場合はこの「抱きつきしめじ」の画像を実験参加者に見せ、この画像からどれくらいこの「しめじ」が感情を持っているように感じたかを調べます。
「抱きつきしめじ」の実験は認知科学の中でどのような文脈に当てはめられるかといいますと、大きく分けて二つあります。
1つ目はヒトらしさとは何かという社会的なもの、2つ目は説明できない面白い現象を説明したいというものです。
人間は他の動物に比べて社会的であるという特徴を持ちますが、どうして社会的なのか、それを実現するメカニズムはどういうものなのか、ということを明らかにすることが1つ目です。
2つ目は目の錯覚やよく間違えてしまう連想クイズやアハ体験の画像など、従来の認知科学、心理学ふくめていろいろな先行研究では説明できない少し「おっ」と思うような現象を分析しようとするものす。
現在取り組んでいる研究はヒトではないものをヒトと感じる(=アニマシー知覚)ときの脳の「ギャップ萌え」のメカニズムの解明です。
脳の「ギャップ萌え」は私が作った言葉なのですが、例えば「抱きつきしめじ」でしたら「しめじ」=存在するものと、「抱きしめ合っている」=見えてしまうもの、その要素にギャップがある場合感動体験が生まれるといったことが私の実験であったり、日本の伝統芸能(能楽)や芸術であったりで提案されています。
ギャップがあったときにどれくらい感情に訴えるのかというのは結構人によってばらつきがあると考えられています。ちょっとのギャップでも非常に「おっ」となる人と、かなり大きいギャップが無ければ「おっ」とならない人がいます。
認知科学、脳科学(神経科学)両方のアプローチでそのメカニズムを解明したいです。
人によって異なる「ギャップ萌え」の感度をうまく調整した、一人ひとりにちょうどいい「ギャップ萌え」を提供できるロボットの開発です。
ヒトとロボットの1対1の関係を研究されている方や企業は多いのですが、抱きつきしめじの実験から2体のロボット間にコミュニケーションがあると、さらにヒトらしさを感じることができるのではないかと考えています。ロボットとヒトとの生活環境を考える際に、まだまだロボットは発展させられる部分があると思いますので、そこを私の研究を通して少しでも貢献できればと思っています。
また、例えば先ほどの「抱きつきしめじ」の画像を見て2体のシメジの関係性(親子、恋人…)や動作(抱きしめている、抱きしめ合っている…)の解釈はヒトによって様々ですが9割の方がヒトらしい何かに見えているというのは共通しています。
どう見えるか、が実はその人の心理状態をある種反映していると思っており、うつ病などの精神状態の確認に使えるのではないかと思っています。
実はうつの傾向にある方は表情を読み取れなくなることが多いということが分かっています。そこでアニマシー知覚に関連する画像や動画を見せたときに、そこから表情をどれくらい読み取れるかでその人の抑うつ度合を測ることができるのではないかと考えています。「抱きつきしめじ」のような画像を使うことでプライバシーを侵害せずにうまく心の調子を測ることができるのではないかということも考えています。
異なる分野の資料を読み解くのに苦労しました。少しでも研究成果の説得力を増すために脳科学(神経科学)だけでなく様々なところから文献を引っ張って議論しています。
アニマシー知覚の対象物として縄文時代、弥生時代にヒトらしいものとして創作されていた土偶を対象にしたことがあります。土偶は場所や時期によってパーツが異なるのですが、変わらないパーツは何なのかを議論するために調べましたが論文の書き方が考古学の世界はまた違っていてとても苦労しました。
また最近ではコロナウイルスの流行に伴い実験も全てオンラインになったため、実験データを取るのに少し苦労しています。
特にオフラインの場合は、実験参加者と気軽にコミュニケーションが取れ、形だけのアンケート+αの情報が取れたり、会話によって研究のモチベーションが上がるきっかけにもなったりしていたのですが、それが難しくなったのが残念です。
この研究を通して“間違いを許容できる世界”を作りたいと思っています。
認知科学はヒトが何か間違えることを前提としてスタートする研究が多いです。例えば「抱きつきしめじ」についてもある種の認識エラーで、しめじを見てヒトらしさを感じたら視覚でみているものと意識で判断するものが一致していない状態です。
私個人としては、人間は結構簡単に間違えるけどその後に修正したり、間違いながらもうまく何とかやっていく能力がすごいんだ、ということに重点を置いて、何か人が迷っている時に背中を押せるような世界観に貢献できるものにこの研究をしたいと考えています。
「抱きつきしめじ」の研究の1つのゴールとしてイグノーベル賞を目指しています。イグノーベル賞を目指すと公言するものではないのですが、認知科学、心理学にはノーベル賞はないため…。10年ほど前にパンの焦げ目がイエスキリストの顔に見えるというある種のアニマシー知覚の研究がイグノーベル賞を受賞しています。
イグノーベル賞取るためには、もちろん科学的にしっかりした研究であることは大前提ですので研究のクオリティを上げるためにも資金が必要です。クラウドファンディングを通して得た資金で、研究を少しでも早く進め、多くの人に結果を届けたいです。
クラウドファンディングを通して、研究の応援者を広く増やしたいです。出来る限り多くの人・分野・業種と出会い、社会実装のスピードとインパクトを高めたいという思いがあります。
いかがだったでしょうか?
「抱きつきしめじ」の画像から人の感動体験のメカニズムに迫る今泉さんの研究は非常に興味深いですね。
オーダーメイドの伴侶ロボットがあなたの隣にいる未来も近いかもしれません。イグノーベル賞の受賞も応援しています!
今泉さんの研究を応援したい!という方はぜひアカデミストのサイトより支援をお願いいたします!
今泉さんのTwitterはこちら ⇒https://twitter.com/ImaizumiTaku