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この記事では、ゴムの性質や特性について、ゴムメーカーの朝日ラバー様監修のもと、わかりやすく解説を致します。科学的にどういった特性があるのか?特徴や用途は?といった基礎知識を知って頂き、研究活動に役立てて頂ければと思います。
CONTENTS
伸びたり縮んだりする物質であるゴムですが、一般的な定義は次の2つです。
「わずかな外力を加えるだけで2倍以上に伸びる」
「外力を除くと瞬時に元の長さに戻る」
つまり、伸びたり縮んだりするもの、ということですね。
この定義からも分かるように、ゴムにあって金属やプラスチックにはない最大の特徴、それは「ゴム弾性」です。
もし金属で平パッキンを作ったら・・・。金属は硬く、ゴムのように小さな力では形は変わりません。そのためもしパッキンが金属製だったら隙間が生まれ、そこから空気や液体が漏れてしまいます。
これを、押されると変形し元に戻ろうとする力があるゴムで作ることで、空気や液体が漏れないようにすることが可能になるのです。
さて、このゴムが持つ「ゴム弾性」をより引き出すための工程があります。これがゴムにおける最大の発明、「加硫」です。
ゴムは、加硫材と熱と圧力を加えることで強固な弾性体へと変化します。この工程を「加硫(かりゅう)」または「架橋(かきょう)」といいます。
1839年にアメリカのチャールズ・グッドイヤーが、天然ゴムに硫黄を混ぜて熱をかけることで弾性を持つことを発見しました。その後、様々な研究がなされ、現在では数多くのゴム素材が開発され、生活を豊かにしています。
ゴムは大きく2種類に分けられます。
・天然ゴム…ゴムの樹から得られる樹液を原料とします。基本的に1種類のみです。
・合成ゴム…工場で化学的に生産されます。シリコーンゴムをはじめとして、100種類以上が存在しています。
またこの分け方の他に、ゴムの用途によって大きく2種類に分けることが出来ます。
・汎用ゴム…タイヤ原料等に使われます。天然ゴム(NR)、合成ゴムであるイソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)があります。
・特殊ゴム…汎用ゴム以外の目的で使用されます。汎用ゴムよりも耐油性・耐熱性・対候性等を改善した合成ゴムです。代表的なものに、クロロプレンゴム (CR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)などがあります。
ニトリルゴムから作られる手袋
フッ素ゴム製のパッキン
特性一覧表は主要なゴムについての、様々な定数表になります。ゴムは、同じ材質であっても配合によって大きく性能が異なることがあります。実際に検討を開始する際には事前に使用材料での評価が必要となります。
次に、ゴムの耐熱性・耐寒性に注目してみましょう。
耐熱性とは熱に強いかどうかを示す指標であり、使用限界温度の目安です。 使用限界温度を越えると、分子の回転や振動が激しくなり、ゴム分子の主鎖である炭素(C)─炭素(C)結合の断裂などが生じて、ゴムはその特性を失います。つまり、弾性が失われてしまうのです。一般的に化学的安定性の低い二重結合を多く含むゴムは耐熱性が低く(つまり結合が切れやすい)、二重結合が少ないゴムは耐熱性が高くなります。ゴムの耐熱性は天然ゴム・ウレタン<クロロプレンゴム・ニトリルゴム<エチレンプロピレンゴム・ブチルゴム<シリコーンゴム<フッ素ゴムの順に高くなります。
対して耐寒性とは低温環境で使用出来るかどうかの目安です。それぞれの材質に固有のガラス転移温度(過冷却な液体の状態から、アモルファスな固体、つまりガラスの状態に変化する温度)を下回ると、ゴム中の分子運動が非常に遅くなり、ゴムはその特徴である弾性を失います(伸び縮みしなくなってしまう!)。
例えば、代表的な耐寒性ゴムであるシリコーンゴムは低温でも分子運動が活発なため、−70℃〜−120℃程度まで弾性を保持します。また、天然ゴムも比較的耐寒性が良好で、−40℃程度まで弾性を失いません。