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バイオ系研究所で働くテクニシャン(技術員)でありながら漫画家として活躍するAyaneアヤネさんによる「ラボりだな日々」(※ラボりだ…ラボから離脱すること。ラボから帰ることの意を持つ造語)。
第16回のテーマは「研究室での引継ぎと後片付け」です。
ラボりだな日々、第16回のテーマは「研究室での引継ぎと後片付け」です!
春は出会いと別れの季節。研究室も卒業や異動などでメンバーが入れ替わる時期です。漫画では、次の研究室へ異動するQさんがAyaneに「試薬が余ってるからもらってくれない?」と声をかけ、蓋を開けてみると、それは“ほとんど残っていない”試薬たちだった、というオチ……「んなことあるかー!」という内容ですがこれは実際にあった……(言葉を濁す
しかし、このような「引継ぎあるある」、実際の研究現場でもよくあるのではないでしょうか?
引継ぎって、難しい! 研究室を離れる際、「あとに残る人に迷惑がかからないように」と、きちんと引継ぎや片付けをしていくのが理想です。でも実際は、新しい職場の準備に追われたり、ギリギリまで実験していたり、なかなか完璧にはいきません。そして、うっかり残されてしまうのが「中途半端に残った試薬」や「なんとなく使い切れなかった備品たち」、「なんだかよくわからないサンプル」なのです。
本人は「誰か使ってくれるかも」「捨てるのはもったいない」と思って残していくのですが、もらった側にとっては、「これ、どうすれば……?」ということも。漫画のように、“見た目はあるけど実質カラに近い”というパターンもあったりして、ありがたみより困惑が勝る場面も。
知らぬ間に増えていく“誰のものかわからない荷物” ……さらに困るのが「誰のものかわからないまま放置された荷物」です。ラボの片隅に積まれた段ボールや試薬棚の奥のよくわからないボトル……。気づけば“ラボの遺産”として残され、誰も処分できないまま時が流れていくのです。
一番やっかいなのは、「使われているような、使われていないような」もの。新品ならともかく、半端に使った消耗品や、古びたマーカー、謎のノートなどは、「まだ誰かが使ってるかも」と勝手に捨てられず、ラボのスペースをじわじわと侵食していきます。
じゃあどうすればいいの? では、こうした引継ぎと後片付け、どうすればスムーズにいくのでしょうか?いくつかの工夫をご紹介します(当たり前のものも多いのですが)。
実験ノートやデータの整頓
物だけでなく、ノートや電子データの引継ぎも忘れずに。残る人が困らないように、最低限の説明や整理をしておくだけでも大助かりです。その際にすごく役立つのがラベル&リストです。名前、記録されているデータの日付や期間、内容をラベルし、さっと確認できるようリスト化しておくと残された人たちはとっても助かります。
「引継ぎ箱」や「処分予定品コーナー」を設ける
“使いかけだけどまだ使える”ものを一時保管する場所を設け、「〇日までに持って行かなければ処分します」と期限をつけると、気軽に必要な人が持っていけて、整理も進みます。
“いらないかも”と思ったら処分する勇気を
「これ、今後使う人いないと思うけど、捨てるに忍びない」など謎のひっかかりで処分しきれないものは、必要ならば関係者の確認を得て、「なんだかわからないけど捨てていいかわからないもの」へ進化する前に思い切って処分してもいいかもしれません。
とにかく早めに準備をはじめる
普段からきちんと整理整頓をしている人でも、いざ最後の締めをやり始めると時間がかかります。特に研究室に長くいた人が離れる際は、整理しなければならない物品、サンプル、そして、データも膨大です。新生活準備を控えた残り1週間で片付く…などは、ほぼありえません。できるだけ、きちんと時間をとり、離れる場所にも向き合いましょう。
去る人、残る人、迎える人。それぞれの立場で思いやりを持って動くことが、気持ちのいい引継ぎと新たなスタートにつながります。
“引き継ぎNo Thank You”とならないように、ラボの春は「整理整頓と感謝の気持ち」で迎えましょう!