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動物が数を数えることができることは様々な実験から確認されており、人為的にトレーニングした犬だけでなく、自然に数を学習する動物も知られている。
例えば鳥の中には天敵の大きさを音を何回出すかで表現して周りに知らせる種も存在する。従って、賢いカラスが我々の数字を見たり聞いたりして、鳴き声の数で表現すること自体は特に驚くことではない。
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今日紹介するドイツチュービンゲン大学からの論文は、カラスが示された数を理解し、それを鳴き声で表現するとき、実際には頭の中で何が起こっているのか、脳の活動を全く調べることなく、明らかにした研究で、5月24日 Science に掲載された。
タイトルは「Crows “count” the number of self-generated vocalizations(カラスは自分が出す声の数を数えている)」だ。
人間の子供でも、最初は数を一つ二つと順番に数えるが、徐々に抽象的な数字が理解できるようになって、イチ、二と数えなくとも数字の意味がわかるようになる。
この幼児の数の数え方はは、カラスにも教えることができ、この研究ではアラビア文字の1、2、3とともに、異なる音を聞かせ、それぞれの数を見たとき、カーという声の数で見た数を表現させることができる。すなわち、2という文字、あるいは2に対応する音を聞いたとき、「カー、カー」と2回答えるように訓練できる。
普通ならカラスは賢いとおしまいにしてしまうのだが、このグループは、訓練しても一定の頻度で間違うことに興味を持った。間違いのほとんどは、「見た or 聞いた」数より少なく、あるいは多く発生してしまうためだ。また、表現する数が多いほど、間違いが多い。
これは、この数え方の特徴で、3を数のシンボルとして理解するのではなく、イチ、二、サンと頭の中でカウントする刺激として理解しているからだ。
とすると、大きい数を見たときほど、頭の中でカウントするので、発声までに時間がかかると予想できるが、その通りで、発声前に数を頭の中でカウントしているのがわかる。
この研究のハイライトは、このカウントした結果を発声につなげるときに、「カー」という音自体と発声までの時間が、数字の大きさに対応するのではないかと着想し、数を「見た or 聞いた」ときの発声を記録し、最初の音のトーンでカラスが理解した数を予測できるか調べ、第一声までの時間とトーンで鳴き声の数を予測できることを見事に示している。
もし最初に頭の中でカウントして数を理解しておれば、なぜ間違うのか。これを解くため、間違った時の、第一声までの時間とトーンを調べると、頭の中では理解できていることが明らかになった。とすると、最初は3回鳴こうと決めたのに、途中で4回になってしまうことになる。
このときの、身体の動き、声のトーン、数など様々なパラメータを記録して、答えを発声しているときの反応を3次元空間に投射すると、間違う場合、例えば2回目の鳴き声と3回目の鳴き声がこの空間上で極めて近接してしまい、通常の3回目と認識できないため、3回発声しても2回と勘違いして答えていることがわかる。この間違いの原因には、例えば首が動くなど他の要因が発声に影響したと考えられる。
以上が結果で、極めて単純だがカラスの反応を、人工知能にインプットすることで、カラスの頭の中で起こっていることを解析するという、まさに AI 時代の脳研究を代表する研究のように思う。
以前、言語の発声を子供の経験をニューラルネットにインプットすることで調べる画期的研究を紹介したが、おそらく数の認識、空間の認識、そして時間の認識なども、脳と AI を一対一で対応させることで、明らかにされる時代が来たように思える。