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みなさんこんにちは! サイエンスライターな妖精の彩恵りりだよ!
今回の解説の主題は、地球温暖化の影響で南極大陸にある隕石の大半が消えてしまうかもしれないという研究結果だよ。
なんだか地球温暖化でホームランが増えるみたいな話に聞こえるけど、影響はもう少し分かりやすいものである一方、その結果はかなり深刻で、最悪の場合西暦2100年までに76%が消滅するみたいだよ!
南極で発見される隕石は数が多い上に科学的に重要なサンプルであり、分析結果が多くの研究に使用されていることを考えると、この影響はかなり深刻であると言えるよ!
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宇宙から地球へと落ちてきた後、燃え尽きずに地表に到達した天体の破片を「隕石」と呼んでいるよ[注1]。隕石の名前は、一部の古典的なものを除くと、発見された地名から名前を付ける、というルールがあるんだよね[注2]。
地名、つまり落下場所と、岩石の種類で隕石を分類すると、その数は世界中で7万4000個以上発見されているんだよね!こう聞くと結構多いんじゃないかな。
さて、隕石の落下してくる方向に偏りはないので、本来なら地球のどこでも、面積当たりの落下数は変わらないはずだよ。ところが実際には、全体の約3分の2に当たる4万8000個以上もの隕石が「南極大陸」で発見されているよ!
余りにも数が多すぎることと、南極大陸には細かい地名や住所が存在しないことから、南極隕石には地名を頭に付けた後に、5桁の数字で管理しないといけないほどなんだよね!
これほどまでに偏りがあるのは様々な理由があるけど、第一に挙げられるのは、南極大陸が氷に覆われている唯一の大陸である、という点だよ。
南極大陸の大部分はどこまでも氷で覆われているので、氷以外の何もない場所が続いているのが普通にあるよ。氷の平原にポツンと転がった石は、高い確率で隕石である、と言えるくらいの確率だよ!
しかも、周りは氷で真っ白な中で、黒っぽい色の石がある、という状態は、すごく遠くからでも見つけやすいよね。探しやすさも、南極での隕石の発見が多いことの理由にもなるよ。
他の大陸の場合はこうはいかないよ。あちこちが石だらけなので、落下が目撃されてすぐに探さないと行方不明になってしまうよ。なので砂漠などの例外的なケースを除けば、古い隕石はほぼ見つからない、となってしまうのよね。
また、南極大陸の氷のでき方も理由の1つと考えられているよ。氷の正体は降り積もった雪であり、上からどんどん重なるので、下側は重圧がかかって、氷河のように少しずつ流れていくよ。
もし、氷の動いた先に山脈のような硬い障壁があると、深部の氷が地表へと湧き上がるような動きが起きるんだよね。地表へと湧き上がった氷は、低温と乾燥した環境で少しずつ昇華して消えていくよ。
もし氷床の上に隕石が落下した場合、この氷の流れに囚われて一緒に移動するんだよね。ただし、地表に湧き上がった後、氷と違って隕石は昇華しないので、そのまま残されるよ。
隕石を物理的に削り取るような風化もほとんど起こらないことから、南極隕石は氷の上で数百年から数千年も残り続けるんだよね!だから探索開始から数十年しか経ってない人類が隕石を見つけることができるんだよね。
南極を調査すると、実に600ヶ所以上もの隕石が豊富なエリアが見つかっているよ。このような偏りは氷床の動きが最も説明しやすく、かつ南極で隕石が発見しやすい理由の1つにもなってくるんだよね。
とはいえ、広い南極大陸の全てを調査しきることは到底できず、隕石の豊富なエリアに限っても、まだ30万個から85万個もの採集されていない隕石が南極大陸の表面に転がっていると推定されているんだよ!
南極以外も含めた地域での発見済みの隕石が7万4000個以上であることを考えれば、軽くその10倍前後の南極隕石が採集されないまま残されている、ってことになるよね!
そして、南極で見つかる隕石は、天文学を始めとしたいろんな科学の分野で注目されているよ。これも、南極で隕石が大量に見つかることや、その環境が理由として挙げられるよ。
さっき言った通り、南極では石がポツンと落ちていたらそれが隕石、と呼べるくらいに見つけやすいんだけど、これによって岩石の種類で区分した様々なタイプの隕石を見つけることができるようになるよ。
隕石にもいろんな種類があって、鉄とニッケルの合金のような明らかに石っぽくないものから、内部を切断しなければ地球の岩石と区別することが不可能なものまで、実に様々なものがあるんだよね。
金属の塊なら、目撃者のいない何億年前の隕石であっても発見することができるけど、普通の岩石と変わらないものだったら、落下直後以外には見逃される可能性が高い、ということで、実は発見に偏りが生まれるんだよね。
太陽系の平均的な組成や、隕石の元となる小惑星のタイプはそれぞれどれくらいの割合であるのか、みたいな疑問を答える時、このようなバイアスがかかっているのは不便だよね?
一方で、南極ではどんな種類の隕石であれ、見逃されることがほとんどない、ということで、平均値に近い割合で隕石が採集できると期待できるんだよね。
さらに、南極大陸の厳しい環境も、隕石にとっては良い感じだよ。イメージ通り、南極大陸は気温がとても低い上に、とても乾燥しており、空気中の微粒子もほとんど存在しないよ。
隕石には宇宙環境を知るための様々な情報が眠っているけど、地球に落下した瞬間から、水や酸素などの様々な汚染物質による化学反応が進行して、貴重な情報は失われてしまうよ。
だけど、南極大陸は液体の水がほとんどないし、低温では酸素などの多くの化学反応の進行が遅くなるよ。よって、隕石の汚染による情報の喪失が、南極では他の地域と比べて進まないというメリットがあるよ。
また、この環境は生物も容易に寄せ付けないわけで、人間活動に限らず、細菌から大型動物までを含めた様々な生物に由来する汚染も進行しない、ということを表しているよ。
特に、南極大陸以外で多数の隕石が見つかっているサハラ砂漠では、地元住民が集めて売買するビジネスが成立しているために、研究する上ではどうしても南極隕石と比べて不利な部分がでているんだよね[注3]。
こんな感じで、科学者にとって南極大陸は、大量の隕石を長期間保存している巨大な冷凍収蔵庫みたいな感じなんだよね。だからこそ多数の南極隕石が採集され、それが研究の大きな手掛かりとなっているんだよ!
ところが、ブリュッセル自由大学のVeronica Tollenaar氏とHarry Zekollari氏などの研究チームによると、この状況は地球温暖化により、かなり危機的になっていることが明らかにされたよ!
一見すると関係がなさそうな話だけど、実は割と簡単な理由で説明できるよ。隕石の大半は黒色なので、白色主体の南極氷床と異なり、熱をよく吸収するよ。
つまり、隕石は周りの氷よりも熱しやすく、温度が上昇するわけ。なので、隕石はその周りに付着している氷を融かして沈んでいき、最終的には氷の下に埋もれて消えてしまう、ということになるよね?
一度氷の下に沈み込むと、隕石の発見は事実上不可能になってしまうので、研究者の目線からすれば、これは隕石が失われたのと同等のことが起きているのを意味するんだよね。これは実に問題だよね?
実際、氷の表面温度が-9℃を上回る地域で、隕石がほぼ発見されないこと、熱を考慮したモデル計算でもほぼ同じ温度で隕石が沈みだしたことから、高すぎる気温は隕石を氷の下に埋めてしまうことが考えられるよ。
そこで研究チームは、南極地域の気候変動モデルを、隕石の沈み込みに特化した形で構築し、今後の地球温暖化による気温上昇が、どれくらいの隕石を氷の下に隠してしまうのかを計算してみたよ。
その結果、現在の気温上昇が続くと、毎年5000個もの隕石が氷の下へと沈む、と計算されたよ。1年間で採集可能な隕石はせいぜい1000個なことを考えると、回収可能な量の5倍も貴重な隕石が失われることになってしまうよ!
これはかなり悪いお知らせで、現在のペースで気温上昇が続くという楽観的な見通しであっても、西暦2050年までに南極氷床の約54%が失われてしまう、というかなりまずい状況が予測されるんだよね。
しかも、温室効果ガスの排出量が現在よりずっと多くなり、気温の上昇率がさらに高くなるかもしれない、という最悪なシナリオでは、西暦2100年までに約76%もの南極隕石が失われてしまうことになるよ!
これは、特に高度が低い地域、つまり気温がより高い地域でより影響が大きくて、標高1800mから2000mの地域では、最大で約88%が失われるという、とてもひどい状況が発生することにあるよ。
正直、この最悪なシナリオを歩む可能性は全然あるので、貴重な科学データを含む多数の隕石の大半にアクセスできなくなってしまう、というのも非現実的な話ではないんだよね。
地球温暖化というのは、南極にある隕石という、一見するとつながりが見えてこないものにも影響を与えることが今回の研究でよくわかるよね。
南極隕石は大量に溜まっている地域でそのほとんどが見つかることから、高度の低い地域を優先して採集してしまう、という次善策は考えられるけど、ただこれはあくまで国際的な調整が必要で、しかも対処療法だよね。
むしろ、南極隕石が科学に関する基礎的データを提供しており、天文学を始めとしてかなり広い科学分野が研究に利用している、ということを考えると、地球温暖化対策でそれを保護する方がよっぽど重要になってくるはずだよ。
地球温暖化やその対策に関する啓発を行ったり、あるいはその人が本気になるきっかけには様々なアプローチがあると思うけど、南極隕石がそのきっかけの1つになってもいいんじゃないかな、とは私も思うんだよ。
[注1] 隕石の定義
現在の隕石の定義は「地球の表面で採集された、大気圏外から飛来した自然天体の破片」とされています。宇宙空間にあるうちは小惑星、落下中は流星や火球と判断されるため、流星や火球を指して「落下中の隕石」とするのは厳密には誤りとなります。本文に戻る
[注2] 隕石の名前
隕石の名前は原則として、最初の発見地の地名に由来し、地名が指す範囲はその時々で変化します。異なる種類の組成を持つ、科学的に別物の隕石が同じ地域で発見されることは、隕石の発見自体が稀であることからほとんど起こりませんが、それが起きた場合には番号やアルファベットで区別します。特に南極大陸や砂漠のように、地名が曖昧、または広範囲過ぎて大量の隕石が見つかるような場所では、5桁の番号を付けて区別します。「ヤマト」や「アラン・ヒルズ」は南極隕石で使用される地名の代表例です。本文に戻る
[注3] サハラ砂漠の隕石
サハラ砂漠の、特にモロッコとチュニジアにまたがる地域では、大量の隕石が見つかっています。これは地元住民が売買目的で集めており、市場に流通した後に研究者が発見することも多いため、正確な来歴が不明な場合が多くあります。また、磁石を使って集めるという関係上、隕石に刻まれた古代の磁場が失われてしまいます。これは隕石の正確な起源を解く重要な手掛かりの1つが失われていることを意味します。本文に戻る
<原著論文>
<参考文献>
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