実は「謎」だった、チーターが陸上最速の動物な理由を解明! 中間的な体格の動物が"最速"なのはなぜ?

2024.03.15

チーターが陸上最速な理由 サムネ

(画像引用元番号①)

 

みなさんこんにちは! サイエンスライターな妖精の彩恵りりだよ!

 

今回の解説の主題は、チーターのような中間的な体格の動物が最速な理由を調べた研究だよ!

 

チーターは100km/hを超えるトップスピードを叩き出すけど、一般的に動物は体格が大きいほど身体能力の数値が大きい傾向にあることを考えると、中間的な体格のチーターがトップというのは例外的と言えるよ。

 

今回の研究では、様々な体格の動物のスピードを予測し、中間的な体格の動物が最速であることを示す方程式を編み出したよ。それだけでなく、これは巨大恐竜の体つきの復元にも関わる研究かもしれないよ!

 

「チーター」のような中間的な体格の動物が最速なのはなぜ?

中間的な体格の動物が最速

チーターは陸上では最速の動物と言われていて、最高速度は100km/hを超えるよね!でも、動物は一般的に「体格と数値が比例関係」にあるので、なぜ中間的な体格のチーターが最速なのかはよく分かっていなかったよ。

 

最も足が速い動物と言えば、ネコ科の「チーター」である、というのは結構知っている人も多いんじゃないかな?その速さは最高で100km/h以上にも達するという健脚っぷりだよ!

 

チーターの足の速さは哺乳類では間違いなく最速で、哺乳類を離れて無脊椎動物まで含めた動物も含め、陸上を足で移動する動物としては最速であるというのが一般的な見解なんだよね。

 

ただこの事実は、動物を広い視界で見てみるとちょっと変なんだよね。というのは、動物の大きさは、動物にまつわる様々な数値と絡んでいて、一般的に大きさと比例関係に増減するからだよ。

 

例えば力の強さ、手足の長さ、寿命、脳の大きさなど、身体の大きさに比例して変化する数値はいくつもあるよ。一部に例外はいるものの、大部分は体格が大きい動物ほど数値が大きいという傾向にあるよ。[注1]

 

動物は非常に多様性がある形態をしているけど、それでも同じ重力の影響下にあり、酸素呼吸を行い、有機物を代謝し、筋肉で身体を動かすといった、非常に基本的な部分は共通しているからこそ現れる特徴なんだよね。

 

ところが足の速さについては、小さな昆虫でも大きなゾウでもなく、ちょうど中間くらいの体格を持つチーターが最速という、これらの傾向に当てはまらない能力だということになるよ。

 

しかも、チーターだけが異常に速いというわけではなく、例えばガゼル、スプリングボック、インパラ、アカシカなど、70km/h以上で駆け抜けることが可能な複数の動物も、チーターとほぼ同じくらいの体格なんだよね。

 

足を動かして地面を蹴りつけて移動するという、これまた基本は共通しているのに、なぜ中間的な体格の動物が最速の動物に君臨しているのか。この辺は動物行動学の大きな謎の1つだったよ。

 

筋肉を新しい視点で検証する!

動物の速さを予測する方程式

筋肉をギアに見立てれば、筋肉の動きはその速さに加えて、収縮する範囲も重要じゃないのか?と考えたのが今回の研究だよ。それを元に方程式を組み、動物の動く速さを予測したよ。 (画像引用元番号②③④)

 

インペリアル・カレッジ・ロンドンのDavid Labonte氏などの研究チームは、この謎を解決するため、動物の動きをモデル化する研究に取り組んでみたよ。

 

まず、動物の筋肉の動きに関する従来のモデルを検証したよ。このモデルでは、なぜチーターのような中間的な動物が一番素早いのか、という点が不明なんだけど、なぜうまくいかないのかを検証した形だね。

 

検証を進めたLabonte氏らは、これまで重視されてきた「筋肉が動く速さ」に加えて、「筋肉が収縮できる範囲」も、最終的な動きの速さに影響するのではないか?と考えたよ。

 

筋肉が動く速さというのは、単純に筋肉がどれくらいの速度で伸び縮みできるかという話で。昆虫が文字通り目にもとまらぬ速さで動けるのは、身体が小さいことが大きな理由の1つだよ。

 

特に、身体が小さければ小さいほど、体重当たりの筋力が増すために、昆虫は自分の体重の何十倍もの重さを持ちあげられる、なんて芸当ができるわけだね!

 

Labonte氏らはこれに加えて、筋肉が収縮できる範囲も重要なのではないかと考えたよ。筋肉が収縮できる範囲というのは、筋肉の体積が大きいほど、つまり身体が大きいほど有利になってくるわけだね。

 

この辺は走る速さという観点ではこれまであまり注目されてこなかったよ。ただ、坂道に遭遇した時に自転車のギアを変えるような関係性で、筋肉の大きさと走る速さが関連している可能性は全然あるよね。

 

Labonte氏らは「筋肉の動きの速さと収縮できる範囲が共に関連している」という仮説が正しいかどうかを検証するため、動物が自分の身体を動かすことに関わる、独自の方程式を組み立てたよ。

 

そしてこの式が正しいかどうかを確かめるために、体重0.0001gのダニから体重6トンのゾウまで、数百億倍もの体重差がある400種類以上もの動物の走る速さを方程式から算出し、実際に測定された値との比較を行ったよ。

 

中間的な体格の動物が最速と確認!動ける限界は体重40トン?

最速の動物は体重50kg

今回の方程式で予測された動物の走る速さと、実際の動物の実測値を比べると、どちらも最高速度が一致したよ!トップスピードは体重50kgであり、これはチーターと一致するよ! (画像引用元番号⑤)

 

その結果、ほぼ全ての動物について、走る速さの最高速度を計算することに成功したよ!この方程式に基づくと、最も足が速い動物は体重50kgと予言されるけど、まさにチーターがその体重に該当するよ!

 

この方程式が成り立つのは、筋肉と体重との関係にあるよ。慣性の法則により、停止した物体は力を加えない限り動こうとしないから、動かすためには力、つまり筋力を加える必要があるよね?

 

体重が軽いうちは、筋力による身体の押し出し力が十分に強いので、慣性の法則で停止している状況がほぼ無視されるよ。これにより、体重のほぼ三乗根に比例する速さで走ることができるよ。

 

ところが、体重が重くなってくると慣性の法則が利き始め、走る速さがそこまで増大しなくなってくるよ。やがて、体重が重すぎるために慣性の法則の方が勝ち始め、段々と身体を速く動かせなくなってしまうよ。

 

今回組み立てられた方程式で、筋力による身体の押し出し力と、慣性の法則で制止しようとする状態とのせめぎ合いによって、最高速度を叩き出せる体重が50kg、ということになる訳!

 

しかも、この方程式を更に先に進めると、もっと面白いことが分かるよ。というのは、慣性の法則はかなり強いので、やがて重すぎて筋力だけでは動けなくなる体重の数値が出てくるからだよ!

 

体重40トン超の動物は動けない?

今回の方程式を元にすると、体重40トン以上の動物は自力では動けないことになってしまうよ。いくつかの恐竜は40トンを超える体重が予測されているので、復元に一定の影響を及ぼすかもしれないよ! (画像引用元番号①⑤)

 

今回の研究ではさらに、体重が40トンを超えると、動物は自分の筋力だけでは陸上を歩けなくなる、と予測されたよ。現在の地球にいる最も重い陸上動物はアフリカゾウの6.6トンなので、これはかなり重いね!

 

でも太古の地球、例えば恐竜が文字通り闊歩していた中生代なら話は別だよ。ティタノサウルス類と呼ばれる非常に巨大な恐竜は、体重が40トンを超えていたと推定される種がいくつもいるからね!

 

40トンを超えると歩けなくなるのに、40トン越えの恐竜がいたということは、何かが違うということだね。つまりこれは、40トンを超えるという復元予想が間違っている可能性があることになるよ。

 

実際のところ、最大の恐竜のほとんどは不完全な化石記録しかなくて、体重も全長も推定値に大きな幅があるよ。40トンを超えるとされた恐竜も、実際には40トン以下の推定値もあるからね。

 

あるいは、今回の方程式で単純に推定できないような、現生の動物には観られない筋肉の付き方をしていた可能性もあるよ。そうすれば、40トンを超えても動けるかもしれないからね。

 

しかし、恐竜の復元図は多かれ少なかれ現生の動物を参考にしているよ。もし今回の方程式に当てはまらない筋肉の付き方をしている場合、それは復元図自体も書き換えなければいけない、ということになるからね。

 

となると、従来の復元から推定した体重もアテにならないということになるから、結局先に説明した、40トン越えという推定が間違っている、という話にも繋がってくるわけだね。

 

いずれにしても今回の研究に基づけば、推定体重が40トンを超えると推定される巨大恐竜は、体格や復元図を大幅に書き換える必要があるかもしれない、ということに繋がるよ!

 

動物の動きの要「筋肉」の見方は近年大きく変わっている!

今回の研究は、チーターがなぜ陸上最速の動物なのかを明らかにすると共に、過去の地球にいたであろう巨大生物の復元にもある程度影響するかもしれない結果を出した点で面白いよね!

 

ちょっと前には、筋肉を動かすだけでは決して出すことができない爆音を出す工夫をする魚を紹介したけれども、今回の研究もまた、動物の筋肉にまつわる長年信じられてきた内容に挑戦した研究だよ。

 

どちらの研究も「動物の動きは筋肉の速さに縛られている」という前提は余りにも単純すぎると示した点で、昨今の動物行動学の研究は結構面白い状況になっていると私は感じたよ!

 

Labonte氏らは、今回の研究空を飛ぶことや水中を泳ぐという、やはり筋肉によって制御された動物の移動方法にも当てはめる研究を続ける予定だよ!

注釈

[注1] 体格が大きい動物ほど数値が大きい  本文に戻る

大部分の動物はこの傾向に当てはまりますが、小数の例外がいます。例えば、ヒトを含めた一部の霊長類とコウモリの仲間において、体格から予想されるより大幅に長い寿命を持っています。霊長類は高度な社会性、コウモリは体温の高さと免疫系の特殊さがカギであると言われていますが、はっきりとは分かっていません。

 

文献情報

<原著論文>

  • David Labonte, et al. "Dynamic similarity and the peculiar allometry of maximum running speed". Nature Communications, 2024; 15, 2181. DOI: 10.1038/s41467-024-46269-w

 

<参考文献>

       

      <画像引用元の情報> (必要に応じてトリミングを行ったり、文字や図表を書き加えている場合がある)

      1. アンペロサウルスの復元図: WikiMedia Commons (Autor: ДиБгд / Public Domain)

      2. 筋肉の力をギアに喩えた概念図: 原著論文Fig. 1a
      3. トップスピードの計算式: 原著論文本文よりキャプチャー
      4. 指数Γの計算式: 原著論文本文よりキャプチャー
      5. 動物の走る速さのグラフ: 原著論文Fig. 1d

         

        彩恵 りり(さいえ りり)

        「バーチャルサイエンスライター」として、世界中の科学系の最新研究成果やその他の話題をTwitterで解説したり、時々YouTubeで科学的なトピックスについての解説動画を作ったり、他の方のチャンネルにお邪魔して科学的な話題を語ったりしています。 得意なのは天文学。でも基本的にその他の分野も含め、なるべく幅広く解説しています。
        本サイトにて、毎週金曜日に最新の科学研究や成果などを解説する「彩恵りりの科学ニュース解説!」連載中。

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