カーボンナノチューブを実用化させるカギ 「くっつける技術」が確立

2024.03.08

カーボンナノチューブを化学的に接合 サムネ

(画像引用元番号①②)

 

みなさんこんにちは! サイエンスライターな妖精の彩恵りりだよ!

 

今回の解説の主題は、カーボンナノチューブを金属の表面に "植え付ける" 技術についてだよ!カーボンナノチューブは軽くて頑丈な "夢の材料" だけど、夢なままで終わっている理由の1つが、他の材料との接合なんだよね。

 

今回は、カーボンナノチューブを銅の表面と化学反応でくっつけることで、千切れるほど引っ張っても根元がくっついたままになるほど頑丈に接合できたんだよね!

 

今回の技術がもし実用化できるのならば、カーボンナノチューブが夢のままにならないかもしれないよ!

 

「カーボンナノチューブ」は “夢の材料”

カーボンナノチューブ (CNT)」という言葉を聞いたことはあるかな?文字通り炭素でできた非常に細い管で、最も細いものは髪の毛の数万分の1の細さしかないよ!

 

でも、カーボンナノチューブはアルミニウムの半分程度と軽いにも関わらず、強度は鋼鉄よりずっと高く、引っ張った時にはダイヤモンドすら超えることもあるよ!軽さと頑丈さを備えた "夢の材料" なんだよね!

 

だから、例えば将来的には宇宙エレベーターに使われる構想があるよ!宇宙エレベーターを作るには、現実的にはカーボンナノチューブ一択と言われるくらい、強度と軽さを備えた材料なんだよね!

 

あるいはそこまで大げさじゃなくても、建造物、航空機、船舶と言った、強度を求められ、かつ大型なので重量が大きくなりがちな構築物の建材とかに注目されているんだよね。

 

また、カーボンナノチューブは熱や電気をよく通すよ。しかも、1つの層のみでできていれば半導体、2つ以上の層でできていれば金属のような導体になるなど、電気的性質がかなりユニークなんだよね。

 

ナノスケールで合成可能なこと、柔軟に曲げられる上に耐久性もあることから、電子基板を構成するトランジスタなどの部品向けの開発が進んでいるんだよね!

 

カーボンナノチューブが “夢” なままなのは接合が理由?

カーボンナノチューブは "夢の材料"

【図1】カーボンナノチューブは、強度と軽さを兼ね備えたまさに "夢の材料" だけど、他の材料との接合が難しいという課題があったよ。 (画像引用元番号③)

 

ところが、カーボンナノチューブは合成から数十年経っている現在でも、広く実用化されているとは言い難い状況だよ。今は化学分析で使われているけど、これは構造を利用したもので、強度を利用したものではないよ。

 

かつての主たる問題は、長いカーボンナノチューブを合成することが困難だった点だけど、これも近年は徐々に改善されていっているので、この部分はこれからもどんどん改善されるところだと思うんだよね。

 

より問題なのは、カーボンナノチューブを他の材料と接合させることが難しいことなんだよね。カーボンナノチューブがいくら頑丈でも、他の材料との接合部が弱くて壊れてしまったら宝の持ち腐れになっちゃうよね。

 

カーボンナノチューブの特性をフルスペックで使う理想的な接合は、カーボンナノチューブと他の材料の表面を化学的に結合させることなんだけど、現状では安定した化学結合をさせることが極めて難しいんだよね。

 

また、一部の材料については物理的な接合でかなりの強度を持つんだけど、これは材料の特性に依存していて、電子デバイスで多用される銅のような金属ではうまくいかないんだよね。

 

あるいは、材料の表面から直接カーボンナノチューブを成長させるという手法も考案されているけど、これはこれで材料の種類や性質に依存するし、今のところは長く合成する点に課題があるよ。

 

カーボンナノチューブを化学結合させるのは、機械的な頑丈さだけでなく、電気的性質を使う上でも重要だよ。現状では接合部が不連続なので、カーボンナノチューブが通す電気や熱がうまく伝わらないという課題があるよ。

 

つまり、カーボンナノチューブと他の材料との間には大きな電気抵抗や熱抵抗があることを示しているので、これはカーボンナノチューブを電子デバイスに応用する上でも重大な難点となってしまうよ。

 

カーボンナノチューブを銅に植え付ける技術を確立!

カーボンナノチューブが銅と強く結合!

【図2】今回の化学反応で、銅の表面に対して垂直にカーボンナノチューブをくっつけることに成功したよ! (画像引用元番号①②③)

 

シンシナティ大学のChaminda P. Nawarathne氏などの研究チームはこの課題に挑戦し、「濡れたパスタが貼りついている状態」から「羊毛をヒツジに植え直す技術」と例えるほどの改善を施した研究結果を発表したよ!

 

Nawarathne氏らの研究チームは以前、銅や白金の表面にカーボンナノチューブを化学的に結合する実験に既に成功していたんだけど、何しろ小さな話なので、くっ付いている状況を解析する研究が進んでいなかったよ。

 

今回は化学結合の状況をより詳しく見ることや、実験結果の改善を狙って、以前の研究を改良した手法を考案したよ。また数値計算を使うことで、実験結果をより詳しく解析したよ。

 

今回の研究では、予め合成されたカーボンナノチューブを材料に、電子デバイスで多用される良導体である銅の表面にうまく結合するかどうかを試してみたよ。

 

今回はこれまでの研究を踏まえ、フェニルアミン<[注1]という有機化合物の構造が銅の表面とカーボンナノチューブの端との間で結合させるような状況を作ったよ。

 

事前の数値計算や実際の実験の両方で、銅の表面とカーボンナノチューブの端は、お互いに相性が悪く、直接ではうまく化学結合をしてくれないのが分かってるのよね。だからフェニルアミンを間に挟むんだよね。

 

より詳しい説明は注釈に譲るけど[注2]、2種類の物質を混ぜ合わせて銅の表面にフェニルアミンの薄い膜を作り、そこにカーボンナノチューブの端をくっつけた上で、120℃という比較的温和な温度で加熱する作業を行ったよ。

 

銅とカーボンナノチューブの反応

【図3】銅とカーボンナノチューブは、フェニルアミンという構造が間に挟まることで化学的に結合しているよ。 (画像引用元番号④)

銅との共有結合でのカーボンナノチューブの強度

【図4】カーボンナノチューブと銅は、炭素原子1個と銅原子2個が共有結合することで頑丈に結びついているよ。その強さは、引きちぎった時に根元が残るほどだよ! (画像引用元番号④⑤⑥⑦)

 

化学反応の結果や数値計算による解析から、銅とカーボンナノチューブはフェニルアミンを介して互いに強く化学結合していることが分かったよ!

 

この化学結合は、炭素原子1個と銅原子2個が互いに共有結合をしていて、銅にある複数の結晶構造にも対応していたよ。もう少し分かりやすく言えば、様々な形の銅にも対応し、頑丈にくっ付いている、ってことだね!

 

どれほど頑丈かというと、粘着テープをくっつけて剥がしてみると、カーボンナノチューブの方が先に千切れてしまい、根元の部分が残るほどだよ!どれくらい頑丈にくっ付いているかが分かるね!

 

また、銅とカーボンナノチューブが化学的に結合しているので、電気や熱もスムーズに通したよ。これは、カーボンナノチューブを電子デバイスに使う上でとても利点になるよね!

 

カーボンナノチューブが “夢の材料” ではなくなるかもしれない?

今回の実験は、Nawarathne氏が知る限り、カーボンナノチューブの端と銅が共有結合という形で化学的に結合した初めての事例で、カーボンナノチューブを頑丈に金属にくっ付けた事実上初めての実験だよ。

 

カーボンナノチューブの用途を広げるための課題である頑丈な接合が今回実現したわけだけど、他にもどんな材料でできるのかとか、カーボンナノチューブの種類を変えても結合するかも検討しないといけないね。

 

また、長く合成することにはまだまだ課題があるから、宇宙エレベーターみたいな巨大な建造物とかはまだまだ遠いけど、それでも大きな一歩を踏んだ感じだね!

 

今回の研究を弾みに、カーボンナノチューブは名前こそ知られているけど実用化が遠い "夢の材料" という状況から、使っていて当たり前になる時代もそう遠くはないかもしれないね!

注釈

[注1] フェニルアミン  本文に戻る

ベンゼン環の1ヶ所に1個の炭素原子がくっついた「フェニル基」に、窒素原子1個を基本とした「アミン基」がくっついた構造。

[注2] 銅とカーボンナノチューブの反応  本文に戻る

フェニルアミン基の元となるp-フェニレンジアミンを、亜硝酸ナトリウムと塩酸の溶液と共に反応させ、銅の表面に塗布すると、フェニルアミン構造のフェニル基側が銅原子と化合します。次にカーボンナノチューブの端の部分にある水酸基がフェニルアミン構造のアミン基側と化合して結びつきます。

 

文献情報

<原著論文>

  • Chaminda P. Nawarathne, et al. "Creating covalent bonds between Cu and C at the interface of metal/open-ended carbon nanotubes". Nanoscale Advances, 2024; 2. DOI: 10.1039/d3na00986f

 

<参考文献>

       

      <画像引用元の情報> (必要に応じてトリミングを行ったり、文字や図表を書き加えている場合がある)

      1. 銅と結合したカーボンナノチューブの模型: 原著論文Fig 1

      2. 銅とカーボンナノチューブの接合部の電子顕微鏡写真 (スケールバー10µm) : 原著論文Fig 8

      3. 合成したカーボンナノチューブの写真: プレスリリースより (Photo: Andrew Higley, UC Marketing + Brand)

      4. 銅と接合したカーボンナノチューブの電子顕微鏡写真 (スケールバー500µm) : 原著論文Fig 8

      5. カーボンナノチューブが銅と接合する反応の詳細: 原著論文Fig 6

      6. 銅とフェニルアミンの結合のシミュレーション図: 原著論文拡張資料Fig S2

      7. カーボンナノチューブが千切れた際に根元が残るという概念図: 原著論文拡張資料Fig S11

         

        彩恵 りり(さいえ りり)

        「バーチャルサイエンスライター」として、世界中の科学系の最新研究成果やその他の話題をTwitterで解説したり、時々YouTubeで科学的なトピックスについての解説動画を作ったり、他の方のチャンネルにお邪魔して科学的な話題を語ったりしています。 得意なのは天文学。でも基本的にその他の分野も含め、なるべく幅広く解説しています。
        本サイトにて、毎週金曜日に最新の科学研究や成果などを解説する「彩恵りりの科学ニュース解説!」連載中。

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