子どもの愛着について詳しく知ろう

2024.03.05

子どもの発達理論における愛着という理論についてご存知でしょうか?愛着を正しく理解することによって、子どもとの関わり方のポイントを押さえられます。また、愛着障害についても誤解の無いようしっかり理解していきましょう。

愛着とは?

 愛着とはイギリスの精神科医ボウルビィが提唱しました。

ボウルビィは生まれてから3年の養育がとても大切だと唱え、この3年の間に養育者と親密な関係性が構築されることで子どものその後の人生における人への信頼の仕方が変わる、というものになります。

エリクソンの発達課題にも言われている通り、この頃は周りの大人を信頼できるかどうかが発達の課題になります。[※1] 

信頼頼の仕方が変わる、というのは安心感を持って人を期待できるかどうか、人との接触を求めるかどうか、人との距離感が適切であるかどうか、などが挙げられます。

 愛着を形成するためには誰か特定の養育者との信頼関係の構築が必要になりますが、愛着自体は『人との関係性の構築パターン』のベースになるものです。愛着形成がどのような形に作られたかによってこれから出会う人との関係性の作り方が決まってきます。

 ここで言う養育者ですが、「母親」と固定されるものではありません。その人と関わりその人の養育に携わる人が養育者となりますので、母親の他にも父親、祖父母、保育士なども含まれることを正しく理解していただきたく思います。

というのも、ボウルビィの愛着理論が日本に浸透する頃、「特定の養育者」を「母親」としてしまった経緯がありました。その結果、3歳頃までは母親がしっかり面倒を見ないと子どもがかわいそう、という考え方が広がってしまったのです。

これがいわゆる3歳児神話と呼ばれるものとなっております。

 

愛着を意識した子どもとの関わり方は?

 愛着を意識するためのポイントは2つです。身体的な触れ合い応答的な関わりが大切になるので、一つずつ確認していきましょう。

 まず、直接的な触れ合いですが、これは抱っこしたり一緒に遊んだりあやしたり、という直接的な身体的な接触に関わります。ハーロウのアカゲザルの実験[※2]が有名ですが、動物が生きるためには栄養や排泄などの機能的な部分がなければ生きていけないのはもちろんですが、さらに精神的なぬくもりや安心感を求めることが知られています。

人も同様で、赤ちゃんは抱っこをするととても落ち着いて穏やかな表情を見せることが多いです。それは抱っこしている人のぬくもりや柔らかさを感じて精神的に充足を感じているからです。

数十年前には「抱き癖」という名の下にあまり抱っこをしすぎると良くない、という考え方が広まっていましたが、そもそも子どもは満たされるまで抱っこされたいという欲があるのは当たり前の話であり、抱っこを少なくすることによって「満たされていない状態に慣れてしまっている」という言い方に換えることもできるでしょう。

もちろん、満たされていない状態は別の形で発散されていくことが考えられます。子どもは抱っこ、触れ合いの欲が満たされると次には探索欲が出現します。自分から抱っこを離れて遊びを始めるので、時間がある時にはたくさん抱っこをすることが大切です。

 次に応答的な関わりになりますが、これは出生後すぐに始まります。

生まれたばかりの子どもは泣くという行為で周りの養育者に働きかけます。これはお腹が空いていたり、暑かったり寒かったりという「不快」を伝えてくれています。養育者は、この泣き声を聞いたときにあやしたりおむつを変えたりミルクをあげたり、という形で不快を取り除きます。これを繰り返し行うことで、子どもは周りを信頼して自分から働きかけることが増えていきます。

もし、不快などを働きかけていても何も返ってこない、不快が取り除かれない状態が続いた時この世界に失望してしまいます。結果「周りに何かを求めても結局は自分がなんとかするしかない」という少し心の淋しい状態に陥ってしまうかもしれません。

ここで心配になるのは、言葉を発せない小さな子どもが何を望んでいるのかわからない、という養育者の声をよく聞くことがあります。しかし、子どもはなにか働きかけてくれようしているというそれだけで、心は満たされますし、子どもは子どもなりに自分の働きかけを工夫するようになっていきます。

もし、気持ちを汲み取る養育者の方がエスパーのようになんでもすぐに理解できるような状態にあると、今度は子どもから働きかけを工夫するということが少なくなってしまいます。例に上げると、その結果として発語が遅くなる、ということも十分に考えられます。

なので完璧な応答はできなくても大丈夫です。

 

愛着障害について

 愛着障害という言葉を聞いたことがある人も増えてきたと思います。愛着障害はDCM-5にも定義されている障害の一種となっていて、愛着関係がうまく形成されていない結果、人との関わり方に著しく苦手意識を感じている人が診断されています。診断基準などに関しては、引用を参考ください。[※3]

 ここで大切なのは、障害という考え方です。「苦手」「機能不全」などのいわゆるできない状態があるのと、それによって社会的に不利益を被っている場合に障害というような考え方を当てはめるのが今の社会の考え方になります。

愛着障害等の精神的な障害の場合は診断基準などを参考にしても「(考え方によっては)当てはまる」と解釈を広げて自己診断しがちです。

ですが、実際に愛着障害と診断される人はあまり多くはないということはご理解いただけたらと思います。

 

まとめ

 愛着という考え方は3歳頃までの養育者との関わり方である程度決まってくることはご理解いただけたかと思います。そして、そのポイントは身体的な接触と応答的な関わりです。子どもと関わる時、そこをポイントに抑えていただけたらと思います。

もちろん、一人でその関わりをすることはとても難しいので、周りの養育者や保育士などの協力を得ながら、たくさんの大人の中で子どもを大切に育てる意識を持っていきましょう。

参考文献等

※1 Bowlby,Jによる愛着理論の編成 (本文へ戻る)

※2 霊長類研究から見たアタッチメント (本文へ戻る)

※3 連合小児発達研究科 (本文へ戻る)

 

永⽥ 良介(ながた りょうすけ)

保育⼠、社会福祉⼠、精神保健福祉⼠。
主に、児童期における精神的な悩みや疾患などを主に取り扱う実践家。