音の"なんそれ"4連発 君たちはどう認知するのか|音に関する現象を研究論文から解説

2024.02.26


キーンコーンカーンコーン。

このチャイムが聞こえると、授業や仕事を思い出して不愉快な気持ちや、下校後に友達と遊びに行った楽しい記憶が走馬灯のように思い出される。

 

音は日常にありふれており、防音室に入らないかぎり、耳にしないことはないだろう。そして音は数字と同様、世界共通語といってもいい分野だ。

 

前回は論文を読み、チョコレートに含まれる成分から人体にどのような影響を及ぼすのかを執筆させてもらったが、今回は趣向をかえて、音に関する論文をお届けする。

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“音楽”は自然と身につくもの

現代の日本にあるJ-POPと呼ばれる音楽、大体のリズムは4拍子か倍速ぐらいで、メロディはとても複雑なのに、主旋律が聞こえるので歌詞を見ると歌えるのが多い感じだ。他にも古典だと、和楽器でBPMが遅めでヒーリング効果のありそうな曲から、荘厳なものまで様々だろう。

当然のことながら世界の音楽に目を向ければ、多様性は更に増していく。

 

最初の論文はこれだ。

"Spontaneous emergence of rudimentary music detectors in deep neural networks" Nature Communications(2024)

ここまで分析をしなくてもいいとは思うが、言語化や特別な学習をせずとも、脳に音が自然と認識されることが、AIを用いて判明した。

 

通常、音関連は脳の聴覚野に収納されるのだが、動物や自然、機械音などにはほとんど反応しないのに、楽器や声楽などを混ぜ合わせた音楽には反応を示すニューロンが自然に生成されることを人工ニュートラルネットワークにて解析した。

 

実は、異なる文化民族でそれぞれに音楽が生み出され、発展してきたのにも関わらず、クラシック、ポップス、ロック、ジャズ、エレクトロニックなどを調べると、似たような形式の拍子や曲が使われていることが明らかになっている。

こういった音楽や曲たちは、どこから作られていってるのだろう。

インプットが祭囃子だったのが、アウトプットでクラシックのようなとんでもないジャンルに変幻してるかもしれない。実に面白い。

 

“大音量でゲーム”は難聴を加速?メカニズムから予防も

昔はゲームセンターに行って、ポップンミュージックなどのリズムゲームやゾンビを倒すシューティングに興じていた時期があった。もちろん家庭用もあったりするが、ちょっと出かけて、あのBGMやリアルな画面、銃の重厚感を体感するのがたまらない。

そういった一時的な爽快感は、取り返しのつかないことになるかもしれない。

2つ目の論文はこれだ。

"Risk of sound-induced hearing loss from exposure to video gaming or esports: a systematic scoping review" BMJ Public Health (2024)

 

ソファーに座っているか、ゲームセンターにいるかなどに関わりあいなく大音量でゲームを行うと、不可逆的な難聴や耳鳴りをもたらす難聴リスクを高める報告があった。


世界9カ国、米国、ドイツ、イタリア、ポーランド、日本、中国、インドネシア、韓国、オーストラリアで実施され、4種類のシューティングゲームとレーシングゲームにて、騒音に対して許容されるレベル(子ども約75dB、大人80dB)ぐらいの音を聴き続けると、20〜78%の幅があるが、耳鳴りや難聴リスクとなるとのことだった。

かなり幅があるようだが、そもそもなぜ、大音量を聴き続けると難聴になるのか?

 

下記の論文によれば、大音量にさらされると、耳の内耳という部分の亜鉛レベルが変化することで、調整が出来なくなり、最終的に細胞損傷につながると、マウス実験で判明された。

"Cochlear zinc signaling dysregulation is associated with noise-induced hearing loss, and zinc chelation enhances cochlear recovery" Proceedings of the National Academy of Sciences (2024)

 

メカニズムが判明していることもあって、難聴を予防するための薬を開発しているようで、現段階前臨床安全性試験でテストする治療法を開発中だそうだ。

 

特にe-Sportsを行うプロのゲーマーや、常に騒音に晒される工事現場の方々にも朗報だろう。市販薬として利用できるようにすることを目標としているらしく、著者も欲しいところだ。その先の用途に関しては目をつぶってもらいたい。

 

声のピッチは対人関係に影響するらしい


歌を聴いていると、高音や低音、最近はハスキーというか掠れているようなのや、明るい元気のある声、表と裏声を混ぜたミックスボイスなど、種類が多い。

 

喋り声も腹から音を出す歌声から喉に集約したような感じなので、アニメとか映画の吹き替えを見ていると、その人ごとに色んな表現をなさっていて、どんな筋肉の使い方をしているのかとふっとよぎる。

 

下記の論文によれば、直接会って話すなどの異文化交流をする際に、長期に関係を持ちたい、もしくは、社会的地位や認知を高めたい場合は、男女問わず声のピッチを低くすることが肝要だという。

"Effects of Voice Pitch on Social Perceptions Vary With Relational Mobility and Homicide Rate"Psychological Science (2024)

5つの大陸とニュージーランドを代表する22カ国の3,100人以上の参加者に録音を聴いてもらい、質問に答えてもらった結果だ。

音声に意味と感情を与える声調の変化を処理するニューロン群も聴覚野に存在する。

こういうものをコミュニケーションや恋愛のひとつのテクニックとして用いる、という書籍や記事も多数存在するが、悪用はせずに友好な関係を築いてもらいたいものだ。

 

「次の音はきっとこんな感じ」 この思考は宿命だった


ここまで音がありふれていると、たまに似たような旋律を耳にすることはないだろうか。

例えるなら、たまに聞くあの邦楽は、昔よく聴いていたあの洋楽に似ているみたいな要領だ。

下記に紹介する論文によれば、どうやらこの思考は、元から備わっていた機能だったのだ。
"Encoding of melody in the human auditory cortex."Science Advances (2024)

被験者たちを対象に色んなメロディを聴かせると、聴覚野はその次の音を予測し、それに特化したニューロン群が認知、処理をしてくれることが判明した。


似たような現象は音声でも起こることは先に解明されていた。聴覚野の皮質部にある特殊なニューロンは、すでに学習した単語とその文脈に基づいて、次の音声と単語を予測するという。

 

こうなると先のセクションで紹介した「声のピッチ」を併せて考えると、声というのはメロディの一部にも該当し、さらには社会的認知に影響を及ぼすのかもしれない。

なんにしても音楽を聴くだけで、実はかなり高レベルな頭の体操をしているのではないだろうか。

 

まとめ

今回は音が人体にもたらす4つの事柄を紹介させてもらった。

 

音は街のBGMや電車の発車メロディ、テレビや車の走行音、水道口から流れる生活音など、日常の側により添っているものだからこそ、気がつかない神秘が隠されている。

参考文献

"Spontaneous emergence of rudimentary music detectors in deep neural networks" Nature Communications(2024)

"Risk of sound-induced hearing loss from exposure to video gaming or esports: a systematic scoping review" BMJ Public Health (2024)

"Cochlear zinc signaling dysregulation is associated with noise-induced hearing loss, and zinc chelation enhances cochlear recovery" Proceedings of the National Academy of Sciences (2024)

"Effects of Voice Pitch on Social Perceptions Vary With Relational Mobility and Homicide Rate"Psychological Science (2024)

"Encoding of melody in the human auditory cortex."Science Advances (2024)

【著者紹介】ゆり

日常の疑問から研究技術と社会の関連など、様々なジャンルを執筆している。薬品系のタンパク質構造解析を研究している人。裏で通信制高校の数学教師をしている。