チョコは"百薬の長"? おいしく食べて健康に。|チョコと健康に関する最新研究の紹介

2024.02.13

2月14日はバレンタインデーだ。

この日に贈り物をする風習は国ごとに違っており、ヨーロッパでは「永遠の愛を誓う証」とされ、特に男性から女性への贈り物が一般とされている。

一方、日本だと独自の文化が定着しており、バレンタインデーにはチョコレートが贈られる。しかし、日本のバレンタインデーは単に恋人同士の特別な日ではなく、幅広い人々に対する思いやりや感謝の気持ちを示す機会となっている。

そのため、チョコレートの種類も多様で、感謝の気持ちを伝える義理チョコや友達同士で交換する友チョコ、家族に贈る家族チョコ、さらに自分へのご褒美に贈るマイチョコ、男性から女性に贈る逆チョコなどが存在する。

今回はバレンタインデーにちなんで、チョコに含まれる成分に着目した。どうやら様々な病気に対して効果を発揮するらしい。どのような効力なのか、最近の関連論文を紹介しながら解説していこう。

 

血管の病気リスクが低減する可能性がある

一つ目は、ダークチョコレートを定期的に摂取することで、原因が特定されていない高血圧(本態性高血圧という)と、静脈血栓塞栓症のリスク低減が見受けられたという。

この内容は、Scientific Reports誌に掲載された論文[※1]にて発表された。

ダークチョコレートとは、約40%のココア含有量で独特のほろ苦い風味を持ち、体に良いフラバノールやメチルキサンチンなどの物質が含まれている。その中に、プロシアニジン、カテキン、エピカテキンの3つの主要なフラバノールがある。過去数年間、このフラバノール含有量によって、健康的な利点をもたらすという報告がなされてきた。その中には、炎症を抑えたり、冠動脈疾患に関与する他の因子を減少させたりすることも含まれている。

 

この研究では、グレゴール・メンデルにちなんで命名された疫学的方法論にて、MRC統合疫学ユニットから入手したヨーロッパ系64,945人の遺伝子プロファイルを含むデータより、ダークチョコレートを定期的に摂取することでの健康効果と、心不全、血栓、脳卒中、冠動脈性心疾患、本態性高血圧などの疾患との関連を調べた。

 

その結果、本態性高血圧静脈血栓塞栓症のリスク低減との間に何らかの関連があることがわかった。

 

体内にはほぼ至るところに血管があり、その中を血液が駆け巡っている。

高血圧とは、その血液が血管を通る際に血管壁に与える圧力が正常より高く、慢性的に続く状態のことをさす。高血圧になると血管に常に負担がかかるため、血管壁が傷ついたり、血管の柔軟性がなくなり固くなったりして、動脈硬化を起こしやすくなる。

高血圧は自覚症状がないことが多いが、脳卒中や心疾患、腎不全などの発症原因となるので、臨床的には重大な症状のひとつだ。高血圧の原因は、遺伝的な要素や生活習慣などの環境要素が関係しているが、今回の研究データは本態性となっており、高血圧自体の原因の特定はされていない。

 

もう一つ、関連の可能性が示唆された静脈血栓塞栓症は、手足の静脈に血の塊(血栓)ができて、それが肺の動脈に詰まる病気だ。

この病気は、深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症という二つの病気の総称で、合わせてVTEとも呼ばれる。症状として血管が傷ついたり、血液の流れが悪くなったり、血液自体が固まりやすくなったりすると起こりやすくなり、重篤な合併症や突然死の原因になることがあるので、予防や早期発見が重要となってくる。

ただ、今回の結果ではダークチョコレートとVTEとの関連性は、証拠が不十分であるため因果関係までは確立することができず、他の病状でも因果関係は観察されなかった。

 

論文では、今後もダークチョコレートの摂取と病気のリスクの間の因果関係を探るためには、さらなる臨床研究が必要となってくると締めくくられているため、いったんの可能性として提示したい。

高カカオでアレルギー抑制作用

二つ目は、チョコレートの成分が直接身体に効くのではなく、間接的に健康を促す内容となっている。

高カカオが含まれたチョコレートを継続的に摂取すると、フィーカリバクテリウム属の腸内細菌(フィーカリバクテリウム プラウスニッツィ:Faecalibacterium prausnitzii)、短鎖脂肪酸産生菌の割合が増加する。

この産生された短鎖脂肪酸がアレルギー抑制され、その作用をマウス・細胞・遺伝子レベルの解析を組み合わせることにより、詳細な作用機構を突き止めた。詳細は、The Journal of Immunology誌の論文[※2]に掲載されている。

 

短鎖脂肪酸とは、主に食物繊維が腸内細菌によって代謝される際に生成される炭素数が6以下の脂肪酸で、酪酸や吉草酸、プロピオン酸、酢酸などの総称だ。こちらも近年の研究から、この短鎖脂肪酸には、主にアレルギー反応やアナフィラキシーに関与する免疫細胞であるマスト細胞の働きを調節し、アレルギー反応を抑制する機能があることが明らかになっている。しかし、どのような作用機能なのかまでは判明されていなかった。

 

この研究では、まず短鎖脂肪酸(酪酸、吉草酸)を4~6日間マウスに経口投与することで、アレルギー反応やアナフィラキシーが有意に抑制されるのを評価し、その次に骨髄由来のマスト細胞を短鎖脂肪酸とともに培養することで、マスト細胞の表面であるIgE抗体の受容体(FcεRI) への影響の有無を調べている。

 

FcεRIに結合したIgE抗体に、さらにアレルギー反応の元となるアレルゲンが連結すると、分泌顆粒が細胞外に放出され、ヒスタミンなどのアレルギー誘因物質を細胞外に大量に放出することで症状を引き起こすのだが、IgE抗体の段階で誘導される脱顆粒が抑制されることが判明した

 

追加実験でフローサイトメトリー法および定量的PCR法を用いると、短鎖脂肪酸は、FcεRI関連遺伝子の転写を阻害することなく、細胞表面のFcεRI発現量を減少させることが示された。さらに短鎖脂肪酸の作用機構を解明するべく、定量的PCR法を用いて、マスト細胞上の膜輸送タンパク質や受容体を調べると、新たな受容体としてGタンパク質共役型受容体GPR109Aが浮上してきた。

 

今回の結果から、短鎖脂肪酸によるマスト細胞活性化抑制に関与する経路として、Gタンパク質共役型受容体GPR109Aを介する経路と、免疫関連タンパク質FcεRI遺伝子のエピジェネティックな発現調節を介する経路の2つが見出された。

GPR109Aについては、ニコチン酸(ナイアシン・ビタミンB3の一種)の受容体としても知られ、ニコチン酸と結合し、ホルモンの一種のプロスタグランジン産生が促進される。

 

さらなる実験として、プロスタグランジンの合成を阻害するNSAIDs(アセチルサリチル酸、インドメタシン)でマスト細胞を処理したところ、短鎖脂肪酸による脱顆粒抑制効果が阻害されていることから、今後の展開として、Gタンパク質共役型受容体GPR109Aにも焦点をあて、プロスタグランジンの合成には多価不飽和脂肪酸が関係することや分岐鎖脂肪酸には納豆などにも含まれているので、食事や日常生活と関連の深いテーマに発展していくとのことだった。

 

まとめ

本日紹介した論文はいずれも2024年のもので、チョコレートの成分により様々な病気に効果があることが続々と解明されていっている。

ただ、体内には脂肪と糖の別々の渇望経路があり、これらの経路を過剰に組み合わせると、いつも以上に食べたくなるので、何事も、適切な量でおいしく食していただきたい。

参考文献

Dark chocolate intake and cardiovascular diseases: a Mendelian randomization study, (2024). (DOI: 10.1038/s41598-023-50351-6)

Butyrate, valerate, and niacin ameliorate anaphylaxis by suppressing IgE-dependent mast cell activation: Roles of GPR109A, PGE2, and epigenetic regulation(DOI 10.4049/jimmunol.2300188)

【著者紹介】ゆり

日常の疑問から研究技術と社会の関連など、様々なジャンルを執筆している。薬品系のタンパク質構造解析を研究している人。裏で通信制高校の数学教師をしている。