ホメオスタシスで心の健康を目指す

2024.02.09

 人間は、常に自分の身体を一定の状態に保とうとする機能を持っています。それをホメオスタシス(恒常性)と呼びます。例えば、体温は常に36.5度付近に保とうとしています。風邪を引いた、などで身体に異常が起こったときに、非常事態をなんとかやり過ごし、そしてまた日常に戻っていきます。

 それでは、今回はこのホメオスタシスとメンタル、主にお薬との関係性について開設していきましょう。この考え方が身につくと、回復への一歩となるかもしれません。

メンタルが弱っているときにはどのような反応がある?

 まずは、人間の正常な状態(ホメオスタシスが維持されている)とはどのような時であるか?を考えていきます。

人間が生きていく中で、ストレスが全くない状態というのはあまり考えられません。現代であれば人間関係、昔に遡ると飢饉や天災、更に遡って紛争や多種族との争いなど、人間は常にストレスをまといながら生きていくというのが正常です。

そのような時、覚醒モード(交感神経)が働き、様々なことに対抗して頑張ることができたり、目が冴えたりします。そして、その後は休息モード(副交感神経)が働き、眠くなったり内臓系もが働きを抑えて体力回復に努めることができます。

 正常か、正常じゃないかを見定めるポイントは身体的な不調が生じているというところが一つ、挙げられます。胃が痛い、眠れない、食べすぎてしまう、飲みすぎてしまう…。そのような症状は、身体の中の恒常性を保とうとする機能が崩れ始めているサインだと思ってください。

そして、これらが起こっているストレス環境下の中で何もせずに自然治癒するようなことはほとんど望まれないことも覚えておいてください。[※1]

薬にはどのような効果がある?

 さて、このような状況下に陥ったときには心療内科などに受診することをおすすめしていますが、その中でも薬物療法は即効性があるので大体の場合に第一選択として促されます。希死念慮のような、生命の危険がある場合はなおさら、薬物療法を行う形になります。

 精神系のお薬には色々種類がありますが、わかりやすく言うと「気持ちが安定する薬」「不安な気持ちを紛らわせてくれる薬」「寝付きを良くする薬」などがあります。

ここではその薬の成分や詳しい効能は説明しませんが、身体にとって薬がどのような役割を果たしてくれているのかを考えていきます。

 強いストレス環境から離れることができないと、人間はホメオスタシス(恒常性)を失っていきます。そうなると、異常な状態が続いてしまう、というわけです。これが身体症状です。

そこに精神系の薬を投与することによって、不足している「正常と異常の差」を埋めることができます。

強いストレス環境が続いて活動モードから休息モードに切り替えることが難しくなっている。これが不眠症として現れている。そこに、無理やり休息モードに切り替える睡眠薬というものを身体に投与することによって、正常な状態に戻っている。

精神系のお薬は、こういった機能を持っています。

薬をやめるとどうなる?

 それでは、このような状況になったときに薬を飲めば正常になることはわかりましたが、薬を飲み続けなければならないのでしょうか?

以前ご紹介した認知行動療法や休職、転職などで環境を変えてストレスを減らすことによって身体にホメオスタシスを取り戻させて、薬がなくてもホメオスタシスが正常な働きができるようになると薬をやめることができるようになります。

しかし、身体は「自分の機能+薬」でホメオスタシスを保っていたので、急に薬を減らすとそのバランスが崩れてしまいます。崩れてしまったバランスを整えようとしますが、心と身体がうまくついていないので振り子が振れているときのような状態で気持ちもプラスに傾きすぎたりマイナスに傾きすぎたりするようです。

その時「やっぱり薬やめたら身体の調子が悪い」「薬やめれない」という気持ちが浮かんできます。

 ですので、断薬をしていく際には基本的にはお医者さんと相談しながら、ゆっくり進めていくことが非常に重要になります。

イメージは腰痛があるときにコルセットをしながら腰回りの負担を少しずつ軽減していき、コルセットをしている時間を短くしていって最終的にはコルセットをしないで生活ができるようになる、というところです。

腰痛などの痛みや怪我が伴うものになると自然治癒することもありますし、客観的に評価しやすいのですがメンタルの問題は尺度が人それぞれだったり客観性(自分の辛さを客観的に見る)や共感性(どれだけ辛いか周りが共感する)が大変むずかしい作業になります。

まとめ

メンタルにおいても正常に保とうというホメオスタシスが働いていること、そしてそれが保てなくなったときに薬などの療法を使用すること。薬などを減らしていく際にもホメオスタシスが働き、振り子のように振れながら徐々に恒常性を保てるようになること、ということを理解できたでしょうか。

もしメンタルが不調にある場合は、信頼できる人に話をして、自分自身のメンタルが今どうなっているかを把握し、その動きについて注目できるとホメオスタシスと結びつけて正常に戻ろうとしているという小さなプラス変化に気づくことができるのではないでしょうか。

参考文献等

※1 注意欠如・多動症の理解 (本文へ戻る)

※2 注意欠如多動症ADHDが示す「落ち着きのなさ」の再考 (本文へ戻る)

 

永⽥ 良介(ながた りょうすけ)

保育⼠、社会福祉⼠、精神保健福祉⼠。
主に、児童期における精神的な悩みや疾患などを主に取り扱う実践家。