セルフ認知行動療法を実践してメンタルケアをしよう

2024.01.29

皆さん、認知行動療法という言葉はご存知ですか?聞いたことがない人も多いと思うのですが、今回は認知行動療法を自分自身に向けることによって自分で自分のメンタルケアを実践できる方法を紹介します。

認知行動療法の概要について

まず「認知」という言葉を正しく理解しましょう。認知とは、ある対象(物、事象)を知覚した上でそれが何であるか判断したり解釈したりすることをいいます。

 

今回の認知行動療法については、この認知の中の「判断、解釈」をつかいます。人は認知をするとき、その対象について自分自身の過去の経験や周りの評価などを無意識に取り入れながら判断、解釈します。

 

それが世間一般の認知と近しいところにあるのであれば問題はないのですが、例えばその人がその物事についてとてつもない辛い経験を付随させた場合、その物事自体に不快感や拒否反応を示すことになります。

そんなとき、治療者がその物事の認知の仕方について丁寧に取り扱い、治療対象者と時間をかけて話し合いをすることによってその認知を少しずつ変えることができます。

 

簡単な説明ですが、これが認知行動療法という取り組みのプロセスになります。[※1]

セルフ認知行動療法とは?

それでは、セルフ認知行動療法はどのように実践するのでしょうか。簡単に言うと「いつもの思考パターンから外れた考え方をやってみる」ということが肝になります。

 

まず、ストレスがかかったとき、嫌な事があったときに実践してみましょう。自分にとって嫌な事象があったときの「嫌なところ」を詳細に考えてみます。

嫌な事象の中の「嫌な部分」を取り上げることによっていつもの思考パターンから外れるきっかけを作ることができます。

 

そして、その嫌な部分に注目したあと、その嫌な原因を別の視点で考えてみます。また、その思考から導き出される行動を変えることによって別の結果を見出すことも大切です。

 

そしてその結果を「たまたま」ではなく「行動を変えると結果も変わる」という認知をすることによって考えを変えていきます。

 

起きた出来事は変えることができませんが、その出来事から受け取る判断や解釈は自分の気持ち次第で変えることができるので、これらを実践することにより受けるストレスを軽減できるのです。[※2]

実例を挙げて紹介

ここまで抽象的な説明の仕方をしてきましたので、実例を上げて具体的にどのようにセルフ認知行動療法をすることができるのか説明していきましょう。

職場の嫌な上司

Aさんの働いている職場の上司Bさんは、上司という役職柄誰かに注意をしたり指摘することが多くあります。そして上司Bさんは話し始めるとき、軽く咳払いをする癖があります。

Aさんは、一時期仕事が立て込みBさんに指摘を受けることが多くありました。その時の嫌な経験があり、Bさんが咳払いをすると緊張するようになっています。実際に注意を受けることがあってもなくても、咳払いをされる事自体に不快な感情を抱くようになったのです。

 

この事例では咳払いが嫌なことが起こる前触れという認知の仕方になっています。軽いトラウマというような扱い方をしても良いと思いますが、このような状態では平穏に働くことは難しくなってしまいます。

 

そこで、このプロセスを細分化して考え直してみます。

もともと、咳払いをすること自体は不快ではありません。咳払いのあとに話しかけられ、更にその内容が注意指摘だった場合にストレスとなることをしっかり捉え直します。

いろいろな解釈の仕方はあると思うのですが、ここでは「咳払いをするのは風邪気味だから」という別の解釈を採用しましょう。

すると、「咳払いをしても話しかけられない」→「咳払い自体には深い意味はない」という認知の仕方に考え直すことができれば、職場内で不要なストレスを感じることは少なくなるでしょう。

学校での指導

中学校に通うCさんは、普段の学校生活において、提出物などを忘れてしまいがちです。そして、そのことについて正直に「忘れました」と先生に伝えることがとても苦手です。

その苦手の背景には、小学校のときに提出物を忘れたことを正直に先生に伝えたところ、ひどく叱責された経験があり、それ以降正直に伝えることができません。

 

このときCさんの中では「提出物を忘れたことを言うのは強く叱責されること」という認知の仕方をしています。ただ、詳細を考えるとその時の先生の期限だったりとか、提出物の内容によってその結果は変わりますしそもそも人が違えば対応も変わるはずなのですが、Cさんは「先生に正直に伝えることは怖い」という結果に直結しています。

 

ここでセルフ認知行動療法を行うのであれば行動という部分で注目し、自分自身が提出物を忘れたと正直に伝え、それによって叱責されないという結果を生み出し、その結果にしっかり注目するというプロセスが必要になります。

また、それが難しい場合は他人の「正直に伝えて叱られない」という事象を見てそれを自分の認知に反映させるというやり方ができるのではないかと感じます。

最後に

認知行動療法は中程度、重度のうつ病や不安症などに効果を表すとされていますが普段から自分で行うことによって自分自身に対するストレスを減らすことができ、それがうつ病などの予防に繋がります。

 

ある出来事に対して、いつもと違うパターンの思考をする癖を自分で見抜くことから始めてみましょう!

参考文献等

※1 認知行動療法の共通基盤マニュアル (本文へ戻る)

※2 認知行動療法と認知行動変容アプローチ (本文へ戻る)

 

永⽥ 良介(ながた りょうすけ)

保育⼠、社会福祉⼠、精神保健福祉⼠。
主に、児童期における精神的な悩みや疾患などを主に取り扱う実践家。