空から舞い落ちる宝石! 雪の結晶はどうできる!?

2024.01.22

 寒さが厳しくなり、いよいよ冬が本格化してきた。日本各地で積雪が観測され、都内でも雪が舞っている。雪は、積もると重く邪魔になり、溶けたかと思えば滑りやすくなりと、雪が降ること面倒くさく感じる方も多いかもしれない。しかしながら、葉月の中の小学生メンタルは雪が降ると内心ワクワクして、どのくらい積もるか楽しみにしていたりする。みんなには内緒だよ?

 雪が作る一面の銀世界はなんとも神秘的だが、同じくらい心惹かれるものがある。雪の結晶そのものだ。六花りっかとも呼ばれる花弁状の結晶は、キラキラと煌めいて私たちの心をときめかせる。それにしても元をたどれば、雪の結晶とは氷であり水の筈である。どうしてこのような不思議な形になるのだろう? そこで今回は、雪の結晶がどのように形成されるのかについて解説していく。

 

 

少し詳しく 〜結晶の種類

 そもそも雪の結晶は本当に花弁状の形状をしているのだろうか?

 安心してほしい。イラスト等で花弁状に描かれる事の多い雪の結晶だが、実際に花弁状の形状をしているものもある。板状結晶群と呼ばれる結晶の種類で、六花の別名の通りに6枚の花弁状が細くなったり厚くなったりしているものだ。また、6枚をベースにして十二花、十八花、二十四花などの結晶も存在する。

 ここまでの説明を読んで、引っ掛かりを覚えた方も多いのではないだろうか? 「──形状をしているものもある。」「板状結晶と呼ばれる──」まるで他の形状も存在するかのようだ。

 そう、実は雪の結晶は花弁状の形状だけではない。それでは他にどんな形状があるのだろう?

 いくつくらいに分類されるのか、少し考えてほしい。

  •  板状結晶群は、その名の通り板状、すなわち平面状に成長した結晶だ。さて、成長の方向は果たして1つだけだろうか?

 

 

 分類の仕方や定義にもよるが、実は雪の結晶は板状結晶群のほかにも、柱や針のような柱状結晶群や、細かな氷粒がたくさん付いた雲粒付うんりゅうつき結晶群など7つの大分類に大別される。大分類はさらに30以上の中分類、120以上の小分類に分けられそれぞれに名前がついているのだ[注1][注2]

 雪は花弁状の結晶だけでなく、実は様々な形状の種類があるという事がわかった。それでは、これらの結晶は全て異なる現象によって形成されているのだろうか?

 続いて、結晶形成の共通点について解説していく。

 

 

さらに掘り下げ 〜結晶の基本

 雪の結晶からは話が逸れるが、A4サイズのコピー用紙を使ってA0サイズの紙を作る方法について考えてほしい。とはいえ、そんなに難しいことではない。粘着テープさえあれば簡単に作る事が可能だ。

 まずはA4サイズの用紙を2枚用意して、長辺同士を粘着テープでとめる。これだけでA3サイズの紙になる。A3サイズの紙を2枚作ったら、同じように長辺同士をくっつけるとA2サイズになる。同様にA2サイズ2枚でA1サイズに、A1サイズ2枚でA0サイズの用紙になる。

 割と有名な方法なのでご存知の方もおられた事だろう。

 用紙を同じようにつないでいく事で、同じ比率のまま拡大する事ができるわけだ。

 

 せっかく作ったA0紙ではあるが、A4用紙を16枚もつないであるため大きくて邪魔だ。というわけで邪魔にならないように畳んでいくとしよう。半分に折ってA1に、さらに半分でA2に、続けて半分に折ればA3になり、最後にもう1度折れば元のA4サイズの面積だ。当然だがこの時、厚さは元の16倍になっている。

 同じものを使いながら、並べ方次第である時は面積だけが、ある時は高さだけが変化する。これが種々の結晶形成の差別化にとても重要なポイントなのだ。

 雪の結晶はまず、氷晶ひょうしょうという小さな氷が出来ることから始まる。氷晶は六角柱のような構造をしており、基底面に水平なa軸と、基底面に垂直なc軸からなっている。

 結晶がa軸方向に成長すると、六角形が次第に拡大していき、板状の結晶を形成する。一方で、c軸方向に成長すると、氷晶の厚みが増していき、柱状の結晶を形成するという訳だ[注3][注4]

 ちょうど、紙を並べて面積を広げていくか、積み重ねて厚さを高くしていくかと同じようなものだと思ってもらえば良い。

 

 結晶形成の基本は六角形の氷が形成されることから開始されるという事がわかった。しかしながら、これではただの六角板や六角柱だ。多様で美しい結晶の数々はどのように成長しているのだろう?

 続いて結晶の成長過程を見ていく。

 

 

もっと専門的に 〜結晶の成長

 少し話題は逸れるが、お湯とお砂糖を使ってこんな事をしてみよう。

 ティーカップいっぱいにお湯を注ぎ、その中にお砂糖をこれでもかと溶かす。お砂糖がある量に達すると、砂糖はそれ以上溶けきらなくなる。飽和という状態だ。

 さて、ここでティーカップのお湯を静かに冷ましていこう。どうなるだろう? 実は、見た目上何も変化しない。しかしながら、お砂糖の溶ける量は温度に依存するため、冷えたティーカップには理論上よりも多いお砂糖が溶けていることになる。このように、実際に溶けている量が熱力学的な溶解度よりも多くなっている状態を、過飽和状態という。

 過飽和状態の物質は不安定なため、小さな刺激を与えると急速に結晶を形成する[注5]

 これは液体に限った話しではなく、気体においても同様だ。

 雪の材料である水蒸気も、温度に依存して大気中に溶ける量が決まっている。冬の低温で冷やされて過飽和状態になった水蒸気は、風などの刺激によって水H2Oの結晶を急速に成長させる。すなわち雪だ。

 実は、雪の結晶が多様な姿を形成するのはこのタイミングだ。

 結晶が成長するとき、刺激や温度変化が緩やかだと、ゆっくりと成長する。すると、それぞれの面が均一に大きくなっていくため、氷晶が成長する場合は単純な六角板や六角柱になる。

 しかしながら急速に成長した場合、結晶は角や稜線りょうせん沿いなどのとがった部分から成長していく。氷晶は六角柱の形状なので、それぞれの頂点が成長の基点になる。したがってa軸方向に成長する場合には花弁状に成長し、c軸方向に成長する場合には針状に成長するというわけだ[注6]

 

 ここまで、雪の結晶の形成過程について解説してきたが、いかがだっただろうか? 雪の結晶は触れると融けてしまうため、観察する際には低温をいかに維持するかが鍵だ。気象庁気象研究所によると、よく冷やした暗い色の布で雪を受け止め、マクロレンズを使って近い距離で連写することでスマホでも綺麗に撮影できるらしい。

 最後に、記事の趣旨からは少し外れるが結晶に関する研究について2つ紹介して、記事を締めさせていただく。

 

 

ちょっとはみ出し 〜結晶を調べる

立体構造の予測精度を競い合う

 氷砂糖をご存知だろうか? 大きく育てたグラニュー糖の結晶で、果実酒やジュースを作る際に利用する。葉月は高校生時代の部活後に、ポリポリしてた頃があった。甘かった。

 氷砂糖はグラニュー糖の低分子なので立体構造も簡単に計算できるが、大きな分子となるとそうはいかない。そのため結晶を使った方法を用いて、分子の立体構造を解析する。

 X線などを利用した立体構造の解析は高い精度で解析できる反面、煩雑はんざつだ。コンピューター1つで立体構造が予測できるならそれに越したことはないが、残念ながらあらゆる条件に対応した予測手法はまだ発見されていない。予測精度の向上のため、世界中で様々な手法を競い合わせ、より良い予測手法を模索しようという試みがある。まるで部活の全国大会みたいだ。

タンパク質の結晶を解析する

 結晶というとどんなイメージがあるだろうか? 金属や鉱物、塩や砂糖などの固いものを想像する方が多いのではないだろうか。しかしながら、世の中にはたくさん水を含んだ柔らかい結晶というものもある。私たちの体を構成する大切な物質であるタンパク質の結晶などだ。同じ構造をしたタンパク質が規則的に整列する事で結晶を形成する。このタンパク質の結晶から何がわかるのだろう?

 一言でタンパク質といっても、その種類も機能も膨大だ。生体内でどのような役割を担っているのかを知る手がかりの1つに、立体構造がある。兵庫にある大型放射光施設SPringスプリング-8エイトではタンパク質結晶を用いた立体構造解析の簡便・自動化の技術が研究されており、従来利用できなかった小さな結晶からも構造を解析する事が可能になっている。

参考文献

  • 亀田 貴雄, 高橋 修平. 『雪氷学』. 古今書院.

  • 菊池 勝弘, 梶川 正弘. 『雪の結晶図鑑』. 北海道新聞社.
  • 数研出版編集部. 『新課程 視覚でとらえるフォトサイエンス 化学図録』. 数研出版.

  • 数研出版編集部. 『新課程 視覚でとらえるフォトサイエンス 地学図録』. 数研出版.
  • 気象庁気象研究所
  • 小畑 繁昭ら. 『 結晶構造予測 現在から未来へ』. 日本結晶学会誌 2020年 62 巻 4 号 260-268.
  • 山本 雅貴ら. 『SPring-8 のタンパク質結晶構造解析』. 日本結晶学会誌 2022年 64 巻 1 号 2-9.

脚注

[注1] これはあくまでも「雪」の結晶についてであり、あられひょうみぞれの結晶を加えて8大分類とする考え方もある。このように雪や霰などを専門に扱う学問分野を雪氷せっぴょう学という。つくづく、学問の世界は広く奥深い。 (本文へ戻る)

[注2] とはいえ、空から降るすべての雪がいずれかに分類可能なわけではない。というのも、結晶を観察するまでの間に結晶が破損したり、あるいは絡まってしまったりする場合もあるからだ。とくに結晶同士が絡まって大きな雪の塊として降ってきたものをぼたん雪という。 (本文へ戻る)

[注3] 氷晶が六角柱なのに、なぜ針状に成長するのかという疑問があるかもしれない。もちろん結晶成長によって先が細くなるというのもある。しかしながら、縦横比も関係している。実は氷晶の元のサイズは0.01 mm程度であり、柱状結晶の長さは数 mmと、縦横比に100倍以上の差があるのだ。 (本文へ戻る)

[注4] 主に成長する軸がa軸とc軸のどちらになるかは、結晶成長時の気温によって決定される。板状結晶を形成しやすい温度帯と、柱状結晶を形成しやすい温度帯は交互に現れるため、降る雪にはそれぞれの結晶が混在して見られる。また、それぞれの結晶に小さな氷粒が付着すると、雲粒付結晶になるのだ。 (本文へ戻る)

[注5] そのため、大きな結晶を作りたいときには溶液を振動の少ない場所に静置し、保温しながら冷ましていくことが重要だ。数日程度かけて室温程度に冷ましていけば、徐々に大きな結晶に育っていく。なぜこんなことを知っているかって、中学時代に葉月が実際にやった方法だからね。 (本文へ戻る)

[注6] 尖った部分が成長すると、さらに先鋭化することになる。したがって尖った部分はさらに成長しやすくなり、結果としてずんずんと伸びていくのだ。受験勉強みたいだ。 (本文へ戻る)

 

【著者紹介】葉月 弐斗一

「サイエンスライター」兼「サイエンスイラストレーター」を自称する理科オタクのカッパ。「身近な疑問を科学で解き明かす」をモットーに、日々の生活の「ちょっと不思議」をすこしずつ深掘りしながら解説していきます。

【主な活動場所】 Twitter Pixiv

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