世界一小さな科学館!?科学の仕掛けの密集地帯「理科ハウス」に迫る!!

2023.12.26

皆さん、こんにちは。サイエンスコミュニケーターの佐伯恵太です。
突然ですが、クイズです!もしかしたら世界一小さいかもしれない科学館、どこにあるでしょうか!?

正解は、、、日本の逗子市です!名前は「理科ハウス」。

理科の基礎的な知識や理科実験も楽しめて、最新の科学技術や研究成果についても知ることができる「理科ハウス」。お客さんが様々な形で科学を楽しめる仕掛けが、これでもかというくらいにギュッと詰め込まれています!本日はそんな理科ハウスをご紹介します!

理科ハウスとは

理科ハウス1階:数歩歩けば新たな仕掛けに出会える空間

 

理科ハウスに一歩足を踏み入れると、天井には分子模型、壁には元素周期表、テーブルに並んだ水や凹面鏡など、「理科」に関係する様々な展示が視界に飛び込んできます。しかし理科ハウスの特徴は、それらを眺めて知識を得ることではありません。全ては「体験の入り口」なのです。

展示物がたくさんあり、自分で触って体験できるものがあります。
展示を通して、理科の本質的な学びができます。
理科をすでに学習している方のほうが楽しめます。
顕微鏡があり、いつも使うことができます。
実験ショーをして、みんなで結果を予想します。
わからないことは、スタッフがやさしくお答えします。
理科に関する疑問をみんなで考えます。

ー理科ハウスHPより

 

一体どんな体験ができるのでしょうか!?これからじっくり理科ハウスの中身に迫っていきたいと思います!

気づいて、学んで、一緒に考える科学館

左から学芸員の山浦安曇さん、人体模型、館長の森裕美子さん

 

館内には至る所に様々な仕掛けがありますが、特に決まった順路などはありません。館長の森さん、学芸員の山浦さんは、圧をかけないよう、あたたかく見守ってくださっています。

何かが気になっている素振りを見せたりしていると、声をかけてくださる仕組みです。

 

透明な液体の正体は!?

最初に挑戦したのはこちら。透明な液体の正体を当てるというシンプルなゲームです。

ペットボトルの中に「精製水・ミネラルウォーター・ジン・塩水・炭酸水」が入っているのですが、見た目はどれもよく似ています。じっくり観察したり、様々な方法を使って違いを見出すことができれば正解に近づくことができます。学芸員のTさんと一緒に挑戦したのですが、残念ながら全問正解ならず・・・。最後に思わぬ落とし穴がありました。

ちなみに、間違えても恥ずかしくない雰囲気を作りながら盛り上げていただけるので(ここ重要!)、失敗を恐れずに楽しむことができます。もちろん、楽しいだけではなく理科を学ぶ上で重要な様々な知識を、クイズや体験を通して学ぶことができます。

 

やかんモビール:どれか一つにおもりが入っています

次に挑戦したのは「やかんモビール」です。ぶらさがっているやかんのうち、どれか1つにおもりが入っていて、それを当てるというもの。熟考の末、何とか無事に正解することができました。笑

他にも、階段の手すりにDNAの二重螺旋構造があったり、トイレの中が一つの細胞になっていたりと、至るところに仕掛けがあり、どんどん時間が溶けていきます。

 

 

ひとり実験の醍醐味とは

 

理科と言えば、理科実験!理科ハウスでも、理科の実験をすることができるのですが、理科ハウスが提供しているのは「ひとり実験」です。その名の通り、一人で実験ができるコーナーです。理科の教科書に載っている様々な実験を一人で楽しむことができます。

コロナ禍において、学校でも理科実験ができていないことを知って、「三密を避けながら」取り組めるよう考案されたそうです。しかし感染症対策になるだけでなく、思わぬ効果も。

「ひとり実験」では、時間を気にしたり周りとペースを合わせたりする必要がないため、たっぷりと試行錯誤ができるのです。これは科学を学ぶ上では極めて重要なことです。

また、実験ショーなどでは、いわゆる「映える」実験が人気ですが、こちらのひとり実験のコーナーでは、一見地味で基本的な実験をじっくり楽しむ子も多いそうです。

 

そんなひとり実験ですが、他のお客んと「競う」こともできるようになっています。例えば、「マッチ棒ロケット」の実験では飛距離を、「簡単モーター」では回転時間を競います。記録やランキングが掲載されるので、それが大きなモチベーションに繋がり、リピートの理由にもなるようです。「ひとりで」と「みんなで」の良いとこ取りですね!

一つの指標で競い合うものだけでなく、石を積み上げていく「ロックバランシング」では、技だったりありえなさで感想を述べあうなど、様々な取り組み方で楽しめるものが用意されています。それまで興味がなかった分野に興味が持てたり、思わぬ才能が発揮できるかもしれません。

圧巻の生解説

 

そして、「理科ハウス」を語る上で欠かせないのが「生解説」です!対象年齢や所要時間が内容によりますが、長いものだと2時間を超える充実の解説です。「三浦半島はどこからきたのか」の生解説では、動画を観たり、現地から採取された石や化石を眺めながら、三浦半島の成り立ちを学びます。

 

NHKの知的エンターテインメント番組「笑わない数学」をより一層楽しむための生解説もあります。こちらの生解説は、お客さんの「番組を観ていたら、途中でわからなくなってモヤモヤするんですよね〜」という一言をきっかけに誕生したそうです。

理科ハウスに行って何かモヤモヤを吐露すれば、生解説のラインナップを増やしていただける・・・かもしれません。

ちなみに、生解説はリピーター向けで、はじめての方は科学館をくまなく見たり、じっくり実験を楽しむのがオススメだそうです。「せっかく行くのだからできれば生解説も・・・」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、いざ行ってみると、納得されると思います。

営業時間の最初から最後まで(4時間)いても、科学館のほんの一部しか体験することができないのですから。

 

さいごに

お客さんの素朴な質問にお客さんが答えるアナログなコミュニケーション

「理科ハウス」という名前から、小中学校の理科を想像される方が多いと思います。理科実験や、理科の基礎から体験を通して学べるのは理科ハウスの特徴の一つですが、理系分野の「ノーベル賞」受賞研究の解説があったり、最新の科学についても学ぶことができます。

そして何より印象的だったのは、森さんと山浦さんのパッションです!生解説では2時間を語り尽くすトーク力がありながらも、聞き役に回ればとても熱心に話を聞いてくださり、気づけば大学院時代の研究の話を長々と語ってしまいました(それも本当に最後まで楽しそうに聞いてくださるのです)。理科ハウスは、誰の心にもある「理科を楽しむ魂」に火を灯してくれる、そんな場所なのです。

ちなみに、本当に「世界一小さい科学館」かどうかはわからないそうです。笑

しかし実際に体験してみると「世界一濃密な科学館」かもしれないと感じました。ぜひ皆さんも一度、体験してみてはいかがでしょうか!?

[関連リンク]

理科ハウスHP 
 

【著者紹介】佐伯 恵太

俳優 / サイエンスコミュニケーター。
1987年5月30日生。京都出身。京都大学大学院理学研究科で修士号を取得し、日本学術振興会特別研究員(DC1)として同大学院博士後期課程に進学。1年間の研究活動の後、俳優に転身した異色の経歴の持ち主。現在は、科学とエンターテイメントの架け橋になるべく、俳優・サイエンスコミュニケーターとして活動中。
【出演ドラマ】BS時代劇「大富豪同心」シリーズ / 「ABEMAヒルズ」コメンテーター / 日本科学振興協会(JAAS)正会員 / 「エンタメ×科学」のプロ集団「asym-line(アシムライン)」代表
プロデューサー・監督・出演者として、YouTube科学番組「らぶラボきゅ〜(※)」を手がけている。
※「東京応化科学技術振興財団」助成事業

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