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みなさんこんにちは!CEなかむーです!
今回は第10回で臨床工学技士の受験事情と就職事情について深堀した際に触れた「改正臨床工学技士法」についてさらに深堀していこうと思います。国家資格が制定され次第にお仕事の領域が拡大している臨床工学技士にとってはまさに「今」が大きな転機となっています。法律が変わったことでこれからなにができ、どう変化していくのかを考えてみます。
それではどうぞご覧ください!
CONTENTS
まず改正「前」までの臨床工学技士法についておさらいです。以下に臨床工学技士法について一部抜粋します。
(目的)
第一条 この法律は、臨床工学技士の資格を定めるとともに、その業務が適正に運用されるように規律し、もつて医療の普及及び向上に寄与することを目的とする。(定義)
第二条 この法律で「生命維持管理装置」とは、人の呼吸、循環又は代謝の機能の一部を代替し、又は補助することが目的とされている装置をいう。2 この法律で「臨床工学技士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、臨床工学技士の名称を用いて、医師の指示の下に、生命維持管理装置の操作(生命維持管理装置の先端部の身体への接続又は身体からの除去であって政令で定めるものを含む。以下同じ。)及び保守点検を行うことを業とする者をいう。
「臨床工学技士法」とは、日本において臨床工学技士の業務に関する法律のことを指します。臨床工学技士は臨床工学技士法に基づいて日本の国家資格として認定されており、医療とりわけ病院等においては、医師や看護師などと協力し、医療機器の適正な管理や設定、患者への指導などを行う医療技術専門職です。そのため、その活動には高度な技術と専門的な知識が必要です。臨床工学技士法は、臨床工学技士がその資格をもってどのような業務を行い、どのような権限があるかを明確に規定していて、資格の取得要件、業務の範囲、倫理規定、監督体制などが含まれています。これにより、患者様の安全や医療の質を保つための基準が設けられ、臨床工学技士が安心して業務を遂行できるようになっています。
臨床工学技士法だけに限らず、医療系国家資格は法律により厳格に規定されており、厚生労働省や関連する行政機関が監督し、法令遵守を確保する仕組みも含まれています。また、日本臨床工学技士会からは臨床工学技士業務指針が発刊されており、具体的な業務に関しても幅広く働き方が明記されており、業務指針に基づいて安全に業務を行うようになっています。
例えば臨床工学技士が放射線技師のようにレントゲン撮影することは臨床工学技士法には定められておらず、これは一般的には放射線技師の独占業務として定められているため、臨床工学技士が撮影などをすることは違法となります。同様に医師が手術をしたり、手術時に傷口を縫合したりすることがありますが、これは医師の独占業務であり臨床工学技士や看護師が縫合したり手術をすることはできません。このように医療系国家資格には「独占業務」というものがあり、他資格が他の医療系国家資格の業務範囲を超えて業務をしてはいけないということを法律によって規定しています。
さて、この臨床工学技士法ですが医師の働き方改革を受けて、今まで医師が行っていた業務の一部を臨床工学技士へ委譲する(タスクシフト)ということが改正臨床工学技士法の中身となります。これは臨床工学技士だけでなく、放射線技師や臨床検査技師などでも医師の仕事の一部を委譲する同様の改正が行われました。
以下に改正臨床工学技士法について具体的な変更点について記載してみます。
1については今まで輸液ポンプやシリンジポンプを使用して行っていた薬剤投与や静脈への針の穿刺等は法律上臨床工学技士はできませんでしたが、今回の改正において手術室や集中治療室限定でそれらの行為が法律的に問題なく行えるようになりました。
2についても同様に今までの心臓カテーテル治療の際、装置のボタンを押す行為は医師しか認められていなかった場合についても臨床工学技士が医師の指示の下で操作することができるようになりました。また、3については今まで腹腔鏡手術等において内視鏡用ビデオカメラの保持は一般的には医師の業務として認識されていましたが、こちらも臨床工学技士が医師の指示の下で業務を行えるようになりました。
医療は日々進化し続けていることは言うまでもないことなのですが、働き方や業務内容についても日々変化を続けているということを認識しておく必要があり、時代に合った働き方や業務を都度法改正を入れながら適応させていくということはとても大事なことです。
これは現場で働く医療従事者すべてに言えることなのですが、忙しいから、人がいないから、自分ができるからと自己都合などで法解釈を捻じ曲げ、法律で定められた業務範囲を逸脱した行為は違法となるということは肝に銘じておかなければならないことです。
さて、令和に大幅に改正された臨床工学技士法によってこれから臨床工学技士の働き方はどのように変化していくのでしょうか?すでに新たな領域で活躍している臨床工学技士も多くいらっしゃるのでその業務の一部を少しご紹介したいと思います。
最近大学病院などで特に増えていると感じているのは「麻酔アシスタント臨床工学技士」です。日本麻酔科学会では2005年に「麻酔科医マンパワー不足に対する日本麻酔科学会の提言」が作成され、麻酔科医師の過重労働の改善、麻酔科領域においての医療安全の向上を目的として、麻酔業務を法的に可能な範囲で臨床工学技士が麻酔科アシスタント業務に取り組んでいる施設があります。業務内容としては術前の麻酔器点検や薬剤の準備、術中バイタルサインの確認、抜管後の患者退室、集中治療室業務など手術前から手術後まで麻酔科に関わる業務に携わっています。また、整形外科手術や脳外科手術などで使用される術中神経モニタリング装置を用いた業務なども行っている施設があります。手術中に使用されるありとあらゆる医療機器に精通した臨床工学技士が麻酔科アシスタントとして活躍することで、手術の円滑な進行に加え、麻酔に熟知していることで、生体モニタリング波形の変化に対し、瞬時に迅速かつ適切な対応がとれることが期待されています。
医療×ITということで病院やクリニックなどでは電子カルテシステムが導入され、近年では医療機器などにもBluetoothやインターネットを活用した遠隔モニタリング技術が導入されてきています。ICT化が進んでいる現代の医療ですが、工学分野にも精通している臨床工学技士が病院内のシステムエンジニアや医療情報管理業務に従事することが増えてきています。業務内容としては院内のネットワーク管理やシステム構築といったインフラ整備、医療機器と電子カルテシステムを紐付け、医療情報を取り込んだりする運用管理など多岐に渡って業務を行っています。今後医療AIなどの開発が進んでくると、それらを運用、管理する医療従事者として臨床工学技士を活用する施設が増えてくるかもしれません。
いかがでしたか?
臨床工学技士法が改正されたことで新たな領域へ踏み出す臨床工学技士もどんどん増えてきています。法律的に根拠をもって業務に従事すること、より高いレベルでの医療安全性や他職種の働き方も踏まえたうえで、時代の必要性に合わせて法律を変化させていくこともとても大事なことだと思います。今後も多方面で活躍する臨床工学技士の働き方から目が離せません!
次回も臨床工学技士のお仕事事情について深堀していきます!
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