パキケファロサウルスたち堅頭竜類は頭突きをしていたの?「石頭」の機能について解説!

2023.12.25

こんにちは! 恐竜好きな方へのサポートなどを行っているタレント「恐竜のお兄さん」加藤ひろしと申します。

今回のテーマは“パキケファロサウルスたち堅頭竜類けんとうりゅうるいが持つ「石頭(ドーム)」の機能について”です。

 

堅頭竜類 Pachycephalosauria は、二足歩行で、頭にドームを持つ植物食恐竜のグループです[注1]
頭にあるドームが非常に分厚い骨でできていることから、石頭恐竜なんて呼ばれていたりもします。

 

そしてそのドームの分厚さのおかげか、堅頭竜類の化石はほとんどの場合、頭骨、特にドーム周りのみが産出しています[注2][注3]

パキケファロサウルス Pachycephalosaurus の実物の頭骨とステゴケラス Stegoceras の頭骨レプリカ(筆者撮影)

 

今回はそんな堅頭竜類が持つ「ドームとその機能」に注目して、これまでどのような研究がおこなわれてきたのかを紹介していきたいと思います。

 


「頭突きをしていただろう」と考察した研究論文

 

「堅頭竜類は分厚いドームを使って“頭突き”をしていたのだろう」

 

そう考察した最初の研究論文は、1971年に出版されています。

 

今、生きている動物のなかで頭突きをおこなう動物として、ヒツジやヤギがいます。研究論文では、ヒツジやヤギと堅頭竜類の頭骨を比較したり、パキケファロサウルスとステゴケラスのドームや頭骨(ステゴケラスの場合は背骨も含む)それぞれの構造を踏まえて、

「堅頭竜類は同じ種の個体同士で争うときに、まるで破城槌はじょうついのように頭と頭をぶつけて戦っていた」

と結論付けました[注4]


 
続く1978年と1987年の研究論文では、ドームの骨組織や形態を踏まえて

「頭と頭をぶつけるよりも、頭を脇腹にぶつけた方が彼らにとって好ましい戦い方であっただろう」

と考察しました[注5][注6]

 

さらに1997年の研究論文では、頭を脇腹にぶつける戦い方を2タイプに分けました。そして、

「丸まったドームを持つパキケファロサウルス、ステゴケラス、プレノケファレ Prenocephale は首を左右に振って相手の脇腹を攻撃する戦い方をし、小さめのドームとその周りに大きなトゲ状の突起を持つ“スティギモロク Stygimoloch (≒大人になる一歩手前のパキケファロサウルス)”はトゲ状の突起を相手の脇腹に突き立てるかディスプレイとして使う戦い方をしたのかもしれない」

と考察しました[注7]

 

2008年の研究論文では平らな頭のホマロケファレ Homalocephale とパキケファロサウルスの頭骨を主な対象にして、構造物に対する歪みや力の掛かり具合をコンピューターモデルで予測する有限要素法による解析が行われました。

この研究のコンピューターモデルはかなり単純化されたものでしたが、解析の結果、

「堅頭竜類の頭骨は頭突きをしたとき、特にゆっくりした速さで頭突きをしたときの衝撃に耐えられる構造をしていた」

と考察しました[注8]

頭同士をぶつけるか、脇腹にぶつけるかはともかく、頭突きとしての使い方が考察されていました。

 

 

「頭突き以外の機能」を考察する研究論文

一方で、頭突き以外の機能を考察した研究論文も出版されています。
 

 2004年の研究論文で、堅頭竜類計7頭のドームの骨組織に関する分析を行った結果、堅頭竜類のドームは3つの異なる骨組織の層が重なってできていることがわかりました。

そして1978年の研究論文[注5]で頭突きに適した構造と考えられたドームの組織は第2の層の組織であり、表面にある第3の層が成長とともに分厚くなると、第2の層はより内部の構造になっていくことから、

「彼らのドームは頭突きのためではなく、お互いを認識するためのディスプレイに使われ、異性へのアピールはおそらく二次的な使い方であった」

と考察しました[注9]

 

 

最近の研究で分かったこと

 2004年の研究論文によって、頭突き以外の機能もより考察されるようになった堅頭竜類のドームですが、2010年代になるとその機能についての研究が新たな局面を迎えます。

 

頭突きによってできたと考えられる、堅頭竜類のドームにみられる怪我や病気の痕』についての研究論文が2012年[注10]を皮切りに、2013年[注11]、2021年[注12]、2023年[注13]と立て続けに出版されたのです。

 

なかでも2013年の研究論文では、14種以上の堅頭竜類のドーム109点を調べ上げた結果、そのうちの24点に怪我や病気の痕がみられました。

怪我や病気の痕がみられる堅頭竜類の複数の種のドーム(白い矢印で痕を示す)
引用元:Peterson, J.E., Dischler, C., and Longrich, N.R., 2013. Distributions of Cranial Pathologies Provide Evidence for Head-Butting in Dome-Headed Dinosaurs (Pachycephalosauridae). PLoS ONE, 8(7): e68620.

 

そしてその痕が残った位置を踏まえて、「バイソンと似た頭突き(図のA)」「ヒツジと似た頭突き(図のB)」「ヤギと似た頭突き(図のC)」、この3パターンの頭突きを考察しました[注11]

 

 

 

堅頭竜類のドームを対象にした有限要素法による解析を行った研究も発展し、2011年の研究論文では堅頭竜類に加え、頭突きをおこなう現存する生き物であるジャコウウシやダイカーなどの複数の哺乳類の頭骨をCTスキャンし、有限要素解析も行いました。その結果、堅頭竜類の頭骨はジャコウウシやダイカーの頭骨と同じく、頭突きをしたときの衝撃に強いことが分かりました。

 

下の図はステゴケラス(CT画像)、シロハラダイカー(CT画像)、オオツノヒツジの頭骨のドームを比較した図ですが、先述した2004年の研究論文[注9]で明記された「ドームにみられる3つの異なる骨組織の層(図のz1,z2,z3)」の骨密度も図示されています[注14]

ステゴケラス(A)、シロハラダイカー(B)、オオツノヒツジ(C)の頭骨にみられるドームを比較した図(CT画像は色が明るいほど骨密度が高くなる)
引用元:Snively, E., and Theodor, J.M., 2011. Common Functional Correlates of Head-Strike Behavior in the Pachycephalosaur Stegoceras validum (Ornithischia, Dinosauria) and Combative Artiodactyls. PLoS ONE, 6(6): e21422.

 

 

また、ステゴケラスの肩周り・前肢・腰周り・後肢の筋肉を推定した2022年の研究論文では「骨盤と後肢の骨の形態や推定される筋肉も、頭突きへの適応であると解釈する」と考察しました[注15]

 

 

まとめ

ここ10年ほどの、「病気や怪我の痕があるドームの化石の分析」「今生きている頭突きをする哺乳類との比較や頭骨の強度の分析」「腰周り・後肢の筋肉の推定」を行った複数の研究論文により、

「パキケファロサウルスたち堅頭竜類は頭突きをしていただろう」と考えられています。

しかしながら、実は堅頭竜類の化石は頭骨以外ほとんど発見されていないので、さらなる研究が進むためにも、病気や怪我の痕が残る頭骨以外の化石の発見が期待されます[注16]

頭突きをする哺乳類のなかでも有名なオオツノヒツジ(筆者撮影)

 

 

現代において、すでに絶滅してしまった堅頭竜類の頭突き行動を観察することは不可能です。しかし、今を生きている哺乳類の、相手への頭突きは比較的みられる行動です。もし動物園で頭突きする哺乳類を見かけたら、ぜひとも戦いの一部始終を見届けて、パキケファロサウルスたちにも思いを馳せてみてください。

 

 

参考文献(本文登場順) 

① Maryańska, T., Chapman, R.E., and Weishampel, D.B., 2004. Pachycephalosauria. In: Weishampel, D.B., Dodson, P., and Osmolska, H., eds. The Dinosauria, Second edition. University of California Press. Berkeley, 464-474. (本文へ戻る)

② Evans, D., Schott, R.K., Larson, D.W., Brown, C.M., and Ryan, M.J., 2013. The oldest North American pachycephalosaurid and the hidden diversity of small-bodied ornithischian dinosaurs. Nature Communications, 4: 1828. (本文へ戻る)

③ Mallon, J.C., and Evans, D.C., 2014. Taphonomy and habitat preference of North American pachycephalosaurids (Dinosauria, Ornithischia). Lethaia, 47(4): 567-578. (本文へ戻る)

④ Galton, P.M., 1971. A Primitive Dome-Headed Dinosaur (Ornithischia: Pachycephalosauridae) from the Lower Cretaceous of England and the Function of the Dome of Pachycephalosaurids. Journal of Paleontology, 45(1): 40-47. (本文へ戻る)

⑤ Sues, H-D., 1978. Functional morphology of the dome in pachycephalosaurid dinosaurs. Neues Jahrbuch für Geologie und Paläontologie, 8: 459-472. (本文へ戻る)

⑥ Sues, H-D., and Galton, P.M., 1987. Anatomy and classification of the North American Pachycephalosauria (Dinosauria: Ornithischia). Palaeontographica Abteilung A. , 198: 1-40. (本文へ戻る)

⑦ Carpenter, K., 1997. Agonistic behavior in pachycephalosaurs (Ornithischia: Dinosauria): a new look at head-butting behavior. Contributions to Geology, University of Wyoming, 32(1): 19-25. (本文へ戻る)

⑧ Snively, E., and Cox, A., 2008. Structural Mechanics of Pachycephalosaur Crania Permitted Head-Butting Behavior. Palaeontologia Electronica, 11(1); 3A. (本文へ戻る)

⑨ Goodwin, M.B., and Horner, J.R., 2004. Cranial histology of pachycephalosaurs (Ornithischia: Marginocephalia) reveals transitory structures inconsistent with head-butting behavior. Paleobiology, 30(2): 253-267. (本文へ戻る)

⑩ Peterson, J.E., and Vittore, C.P., 2012. Cranial Pathologies in a Specimen of Pachycephalosaurus. PLoS ONE, 7(4): e36227. (本文へ戻る)

⑪ Peterson, J.E., Dischler, C., and Longrich, N.R., 2013. Distributions of Cranial Pathologies Provide Evidence for Head-Butting in Dome-Headed Dinosaurs (Pachycephalosauridae). PLoS ONE, 8(7): e68620. (本文へ戻る)

⑫ Dyer, A.D., LeBlanc, A.R.H., Doschak, M.R., and Currie, P.J., 2021. Taking a crack at the dome: histopathology of a pachycephalosaurid (Dinosauria: Ornithischia) frontoparietal dome. Biosis: Biological Systems, 2(2): 248-270. (本文へ戻る)

⑬ Dyer, A.D., Powers, M.J., and Currie, P.J., 2023. Problematic putative pachycephalosaurids: Synchrotron µCT imaging shines new light on the anatomy and taxonomic validity of Gravitholus albertae from the Belly River Group (Campanian) of Alberta, Canada. Vertebrate Anatomy Morphology Palaeontology, 10(1): 65-110. (本文へ戻る)

⑭ Snively, E., and Theodor, J.M., 2011. Common Functional Correlates of Head-Strike Behavior in the Pachycephalosaur Stegoceras validum (Ornithischia, Dinosauria) and Combative Artiodactyls. PLoS ONE, 6(6): e21422. (本文へ戻る)

⑮ Moore, B.R.S., Roloson, M.J., Currie, P.J., Ryan, M.J., Patterson, R.T., and Mallon, J.C., 2022. The appendicular myology of Stegoceras validum (Ornithischia: Pachycephalosauridae) and implications for the head-butting hypothesis. PLoS ONE, 17(9): e0268144. (本文へ戻る)

⑯ Farke, A.A., 2014. Evaluating combat in ornithischian dinosaurs. Journal of Zoology, 292(4): 242-249. (本文へ戻る)

 

【著者紹介】恐竜のお兄さん 加藤ひろし

恐竜についての難しい研究論文について、わかりやすく解説しています。
そのほかにも、動物園・博物館・恐竜イベント等をさらに楽しむ為に注目すべきポイントについて紹介します。幅広い知識を子供から大人まで、ご要望に応じた層に分かりやすく対応いたします!
出身地:東京都
誕生日:1993年10月28日
身長:167cm
資格:学芸員資格(博物館資料の収集・整理・保管・展示・調査など)
   大型特殊自動車免許(ブルドーザー・ショベルカー・クレーン・除雪車など)
   車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削)運転技能講習修了

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