7年ぶりにリニューアル!日本科学未来館の新常設展示を体験!

2023.12.22

皆さん、こんにちは。サイエンスコミュニケーターの佐伯恵太です。私の推し科学館である「日本科学未来館(以下、未来館)」が、実に7年ぶりに常設展示をリニューアルされたということで、11月22日の一般公開の前に開催された内覧会に参加してまいりました!

新常設展示の見どころ

未来館 館長の浅川智恵子さん(プレス内覧会)

 

今回のリニューアルでは、「ロボット」「地球環境」「老い」をテーマに制作された4つの新しい常設展示が公開されました。早いものでは3年ほど前から準備が始まっていたそうです。展示ごとに雰囲気や楽しみ方は異なりますが、共通しているのは「未来の社会課題を自分ごととして考える第一歩」を目指した展示であるということ。

「社会課題について考える」と聞くと、少し身構えてしまうかもしれませんが、未来館ではエンタメ性抜群の様々な体験型展示を通して、社会課題や最新の科学的知見について楽しく学ぶことができ、自然にアイデアや考えが湧き上がってくるような仕組みになっています。

百聞は一見にしかずということで、早速展示をご紹介いたしましょう!

「ナナイロクエスト -ロボットと生きる未来のものがたり」

「ナナイロシティ」内観(画像提供:日本科学未来館)

 

最初にご紹介するのはこちら!体験型展示というより、もはや一つのテーマパークのような展示です!

舞台は、人とロボットがともにくらす未来のまち「ナナイロシティ」。まちの町長「オサボット」が起こしたトラブルを解決するために、ナビゲーターの「アスカ」と一緒にまちを探索しながら様々なミッションに挑戦します。

オープニングからしっかりと世界観が作り込まれていて、「ナナイロシティ」の世界に引き込まれます!

写真左から:アスカとオサボット

 

こちらの展示では「ともだちロボットツアー」「ものづくりロボットツアー」「からだロボットツアー」の3つのシナリオの中から1つを選んで体験できます。今回体験したのは「からだロボットツアー」。人間の身体や感覚を拡張するロボットについて考えることがテーマになっているシナリオです。

こちらに身体拡張の一例が

 

ミッションは、タブレット端末「ナナタブレット」を、ナナイロシティの様々な場所にある「イロイロセンサー」にかざすことで進行していきます。内覧会では大人3人で挑戦しましたが、時間の都合もあり、残念ながらミッションクリアできず......。

しかし、内覧会で初めてお会いした方々と、ミッションを通じて楽しく会話をすることができ、体験を共有することの価値や可能性を感じました!

ナナタブレット(画像提供:日本科学未来館)

 

「からだロボットツアー」の所要時間は60-80分、推奨年齢は中学生以上ということで、ゆっくり時間をかけて挑戦されることをオススメします!親子や大人のお友達同士でも楽しめると思います。

「ハロー! ロボット」

トーキング・ボーンズ(弱いロボット)

 

続いてはこちら!「ハロー! ロボット」という名の通り、たくさんのロボットたちが出迎えてくれます。また、最新ロボティクス研究について学んだり、実際にロボットたちと触れあうことで、多様なロボットとくらす未来について想像することができます。

たくさんのロボットたちの中からきっと「推しロボット」が見つかることでしょう。私のイチオシは、未来館オリジナルパートナーロボット「ケパラン」です!

未来館オリジナルパートナーロボット「ケパラン」

見た目の可愛らしさだけでなく、繊細で滑らかな動きに驚かされます!そしてこのファンサービス!!生まれたばかりのようなケパランですが、何と「多くの人との触れあいの中で、変化、成長していく」のだそうです。ケパランファンはリピート必至です!

他にも「aibo(アイボ)」や「LOVOT(ラボット)」などのお馴染みのロボットから、「けんけんロボット」や「ウマ後肢型ロボット」といった、最新のロボットまで、たくさんのロボットに出会うことができます。

こちらの「ハロー! ロボット」は「ナナイロクエスト」のすぐ隣にあります。ロボットたちと実際に触れあうことと、未来のロボットとのくらしを想像することを通して、ヒトとロボットの関係について、様々な視点で考えることができます。

「老いパーク」

「老いパーク」外観

 

お次はこちら!何とも珍しい「老い」をテーマにした展示「老いパーク」です。この展示では、多くの方が自覚しやすい目、耳、運動器、脳の老化現象を、6つの体験型展示で擬似的に感じることができます。

内覧会では、運動器の老化による移動能力の変化を体験できる「スーパーへGO」に挑戦しました。足に錘をつけ、カートを持って近場のスーパーを目指して歩きます。

「スーパーへGO」体験中

 

体験中、横断歩道を歩いている時に車のクラクションが鳴るのですが、「自分が車の進路を遮っていることがわかっていても、体が思うように動かない」というのは辛いものがありました。反対に、人から親切にされると凄く安心でき、嬉しい気持ちになりました。体の変化が、心に及ぼす影響を感じることができたのは、自分にとって大きな収穫でした。

老化したら、どうする?

 

また、最新の科学技術によって、老いに対して、どのように対処できるのかを紹介する展示もあります。未来における「老い」はどのように変化していくのでしょうか。

適切な睡眠や栄養、運動によって老化を緩やかにすることはできますし、未来のテクノロジーで、さまざまな老いに関する問題が解決していくかもしれません。しかしおそらく「老いが完全になくなる」ことはないでしょう。だとすれば、老いというものをポジティブに捉えて「自分らしい老いとは何か」を考えることも重要なのではないでしょうか。

自分らしく老いることは、自分らしく生きることなのかもしれません。ゲーム体験を通じて楽しみながら、老いについて考えてみませんか?

「プラネタリー・クライシス -これからもこの地球でくらすために」

「プラネタリー・クライシス」外観(画像提供:日本科学未来館)

 

最後は、地球の危機を実感し、私たちに何ができるのかを考える展示「プラネタリー・クライシス」です。残念ながら、3つの展示で内覧会の時間を使い切ってしまい、こちらの展示は体験出来ませんでした(2時間近くあったのに......)。

「プラネタリー・クライシス」では、まず没入感のある大型映像シアターで、地球環境をさぐる旅に参加します!映像と連動した振動や熱、風などの体感効果で、現地にいるように感じることができる、臨場感抜群の映像体験です。

「プラネタリー・クライシス」大型映像シアター(画像提供:日本科学未来館)

 

こちらでは、​​気候変動の危機にさらされている地域の人々のくらしを体感し、科学的なデータに基づいて急激に変化する地球環境の今を捉えながら、私たちのくらしが多様な環境問題を引き起こしている現状を理解していきます。

また、こちらの展示では国産の木材を主な材料として、設計段階から地球環境に配慮したさまざまな工夫を行っているそうです。

地球環境に配慮した展示棚(画像提供:日本科学未来館)

 

さらに、現在、環境問題の解決に向けて取り組んでいらっしゃる方々、12組のアクションについても紹介されています。地球環境が危機を迎えている中で、決して楽観視するのではなく、かと言って諦めてしまうのでもない。自分ごととして捉えて、何か少しでも行動してみる。この展示からそんな輪が広がっていくと良いですね。

さいごに

未来館 科学コミュニケーション室 室長 瀬口慎人さん(プレス内覧会]

 

今回、新たに4つの常設展示が誕生しました。かねてから「体験」を大切にされてきた未来館ですが、その体験の質や深みが大きくグレードアップしているように感じました。また、全ての展示で「意見共有」を大事にされています。自分のアイデアや考えを投稿できる仕組みがたくさんあり、来場者の方々の投稿も、展示の一部になっています。

常設展ではありますが、ロボットの展示は定期的に更新される予定ですし、成長するケパランや、来場者の方々の様々なアイデア・考えなど、その時々でしか見られないものも色々あると思います。さらに、遠隔地でも展示の一部を楽しめるようになるシステムや、テクノロジーを活用したより豊かな展示体験なども開発中ということで、今後も目が離せません!

気になった方は是非、未来館へ!

[関連リンク]

日本科学未来館 
 

【著者紹介】佐伯 恵太

俳優 / サイエンスコミュニケーター。
1987年5月30日生。京都出身。京都大学大学院理学研究科で修士号を取得し、日本学術振興会特別研究員(DC1)として同大学院博士後期課程に進学。1年間の研究活動の後、俳優に転身した異色の経歴の持ち主。現在は、科学とエンターテイメントの架け橋になるべく、俳優・サイエンスコミュニケーターとして活動中。
【出演ドラマ】BS時代劇「大富豪同心」シリーズ / 「ABEMAヒルズ」コメンテーター / 日本科学振興協会(JAAS)正会員 / 「エンタメ×科学」のプロ集団「asym-line(アシムライン)」代表
プロデューサー・監督・出演者として、YouTube科学番組「らぶラボきゅ〜(※)」を手がけている。
※「東京応化科学技術振興財団」助成事業

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