ツルツルでキュッキュ! 洗剤が汚れを落とす仕組みを解説!

2023.12.19

 としせまっている。もっとゆっくりすればいいのにせまってきている。新年しんねん清々すがすがしい気持きもちでむかえたいものだが、そのためにも、やらねばならないイベントがある。

 

 そう、大掃除おおそうじだ。

 

 大掃除おおそうじかせないもののひとつに洗剤せんざいがある。キッチンやトイレなどにこびりついた頑固がんこよごれを魔法まほうのようにとしていく洗剤せんざいは、大掃除おおそうじつよ味方みかただ。しかしながら、洗剤せんざい使つかうとよごれをとすことができるというのは、あらためてかんがえると不思議ふしぎだ。そこで今回こんかいは、洗剤せんざいがどのようによごれをとしているのかについて解説かいせつしていく。

 

 

少しくわしく 〜洗剤と界面活性剤〜

 そもそも洗剤せんざいとはなにでできているのだろう? 筆者ひっしゃいえにあった洗剤せんざいをあつめ、もっとおお成分せいぶんてみた[注1]。まず食器用洗剤しょっきようせんざいには「界面活性剤かいめんかっせいざい」とかれている。つづいて衣料用洗剤いりょうようせんざいもやはり「界面活性剤かいめんかっせいざい」、さらにトイレよう洗剤せんざいにも「界面活性剤かいめんかっせいざい」と表記ひょうきされていた。

 

 つぎに、からだよごれをとす洗剤せんざいについても調しらべてみる。シャンプーは最初さいしょに「みず」とかれていたが、その次に「ラウレス硫酸りゅうさんナトリウム」とかれている。ボディソープも「みず」「グリセリン」につづき、「ミリスチンさん」と記載きさいされている[注2]。これらはいずれも界面活性剤かいめんかっせいざい一種いっしゅだ。

 

 どうやら洗剤せんざい主成分しゅせいぶんは、界面活性剤かいめんかっせいざいというものらしい。

 

 それでは、界面活性剤かいめんかっせいざいとはなんなのだろう?

 

 

 界面活性剤かいめんかっせいざいは『親水性しんすいせいちいさなあたまと、親油性しんゆせいながった物質ぶっしつ』だ。親水性しんすいせい部分ぶぶんっているからみずかすことができ、親油性しんゆせい部分ぶぶんっているためあぶらかすことができる。

 

 それではみずあぶら同時どうじ存在そんざいする環境かんきょうではどうなるのだろう?

 

 っているかたおおいが、みずあぶらをいれると、あぶら同士どうしでくっついてじりうことはない。界面張力かいめんちょうりょくばれる、面積めんせきちいさくしようとするちからがはたらくためだ。この界面張力かいめんちょうりょくによって、あぶらよごれは強力きょうりょくりついている。しかしそこに界面活性剤かいめんかっせいざい存在そんざいすると、あぶら界面張力かいめんちょうりょくちいさくすることができる。界面活性剤かいめんかっせいざいまれることでみずけようとするからだ。そのため、あぶらあつまることができずにひろがってしまう。

 

 とはいえ、あぶらのほうもそのままの状態じょうたいみずけているより、あぶら同士どうしあつまっているほう安定あんていする。したがってあぶらは、界面活性剤かいめんかっせいざいとくっついたあぶら同士どうしあつまってちいさな球体きゅうたい形成けいせいする。この球体きゅうたいはミセルとばれ、中心ちゅうしんあぶらあつまったものではあるが、表面ひょうめん界面活性剤かいめんかっせいざい親水性しんすいせいあたまいている。そのためみずけているし、あぶらきそうな親油性しんゆせい場所ばしょ再度さいどくっついてしまうこともない。

 

 こうした界面活性剤かいめんかっせいざいのはたらきによりあぶらよごれがちいさくがされ、きれいになるというわけだ。

 

 

 界面活性剤かいめんかっせいざいがミセルをつくることで、あぶらがしやすくしてよごれをっていることがわかった。それではすべてのよごれが界面活性剤かいめんかっせいざいとせるのだろうか? 残念ざんねんながら界面活性剤かいめんかっせいざいはそこまで万能ばんのうではない。それでは界面活性剤かいめんかっせいざいとせないよごれはどうしているのだろう。

 

 つづいて、おも有機物ゆうきぶつよごれをとす成分せいぶんについて解説かいせつする。

 

 

さらに掘り下げ 〜洗剤と酵素〜

 わたしたちがきていくうえで、べることはかせない。食物しょくもつくだき、すりつぶし、ドロドロにかし、そのうえ分子ぶんしレベルにまで細切こまぎれにして、わたしたちはきていく栄養えいようおぎなっている。

 

 よごれをこまかくすることがきれいにすることにつながるのは界面活性剤かいめんかっせいざいでみたとおりだ。それでは、わたしたちが栄養えいよう摂取せっしゅ使つかっているこの機構きこうも、よごれをとすのに使つかえないものだろうか? もちろん使つかわれている。

 

 わたしたちが食物しょくもつ分子ぶんしレベルにこまかくできるのは、そのためのはたらきをする専用せんよう物質ぶっしつがあるからだ。その物質ぶっしつ総称そうしょう分解酵素ぶんかいこうそという[注3]分解酵素ぶんかいこうそはタンパクしつ一種いっしゅで、文字もじどお物質ぶっしつ分解ぶんかいしてこまかくするはたらきがある。分解酵素ぶんかいこうそのはたらきにより、食品由来しょくひんゆらい糖質とうしつ脂質ししつ、わたしたちのからだから衣類いるい付着ふちゃくしたタンパクしつなど、おもに有機物ゆうきぶつよごれが分解ぶんかいされ、きれいになる。

 

 分解酵素ぶんかいこうそのはたらきによって、すべての有機物ゆうきぶつよごれをがとせる! ……とおもいたいが、残念ざんねんながらそうではない。分解酵素ぶんかいこうそにはそれぞれ担当たんとうできる物質ぶっしつまっているためだ。たとえばデンプンであればアミラーゼ、タンパクしつであればプロテアーゼといった具合ぐあいだ。酵素こうそ担当たんとうする物質ぶっしつ基質きしつといい、ことなる基質きしつには対応たいおうする分解酵素ぶんかいこうそもちいる必要ひつようがあるのだ[注4]

 

 

 生体せいたい由来ゆらい物質ぶっしつである酵素こうそ利用りようすることで、有機物ゆうきぶつよごれを簡単かんたん分解ぶんかいできることがわかった。しかしながらよごれには、無機物むきぶつよごれも存在そんざいする。このようなよごれはどのようにとされるのだろうか?

 

 つづいて、無機物むきぶつよごれにはたらく仕組しくみについて解説かいせつする。

 

 

もっと専門的に 〜洗剤と液性〜

 わたしたちの生活せいかつもっと身近みぢか無機物むきぶつよごれといえば、水垢みずあかではないかとおもう。水垢みずあか水中すいちゅうけているミネラルぶん(=金属きんぞくのイオン)がえんとなっててきたものだ。こうしたよごれはみずたいする溶解度ようかいどがとてもちいさい。わかりやすくいえば、けにくい。そのため、たんみずをかけただけではなかなかちない厄介やっかいよごれだ。それではどうしたらよいのだろうか?

 

 界面活性剤かいめんかっせいざいあぶらをミセルにしたように、酵素こうそ有機物ゆうきぶつこまかく分解ぶんかいしたように、けにくい無機物むきぶつよごれもけるかたち変換へんかんしてしまえばよい。

 

 そもそもえんは、金属きんぞくイオンなどのアルカリにふくまれるようイオンと、炭酸たんさんイオンなどのさんふくまれるいんイオンが結合けつごうした化合物かごうぶつ総称そうしょうだ。えん性質せいしつわせによってまるため、わせをえてしまうだけで、溶解度ようかいど変化へんかする。

 

 それではどのようにわせをえるのだろう?

 もっと簡単かんたん方法ほうほうさんやアルカリにとおすことだ。

 

 みずがそうであるように、洗剤せんざいもまた液体えきたいである以上いじょう液性えきせい(すなわちpH)がある。酸性さんせい洗剤せんざいあるいはアルカリ洗剤せんざいばれるものだ。当然とうぜんのことながら酸性さんせい洗剤せんざいにはさんが、アルカリ洗剤せんざいにはアルカリがけている。したがって、洗剤せんざいちゅうには対応たいおうするイオンがけている。

 

 水垢みずあか主成分しゅせいぶん炭酸たんさんカルシウム(CaCO3:Ca2+とCO32-)というえんだ。たとえばこれに強酸きょうさんである塩酸えんさん(HCl:H+とCl-)をくわえると、炭酸たんさんイオンと塩化物えんかぶつイオンがわって塩化えんかカルシウム(CaCl2)を作る。このとき弱酸じゃくさんである炭酸たんさんしょうじることから弱酸じゃくさん遊離ゆうりと呼ばれる。弱酸じゃくさん遊離ゆうりは、弱酸じゃくさんえん強酸きょうさんとおすことでしょうじる反応はんのうだ。反対はんたいじゃくアルカリのえんきょうアルカリをとおせば、弱塩基遊離じゃくえんきゆうりだ。

 

 塩化えんかカルシウムはきわめてみずけやすいえんなので、あらながすことが可能かのうになるというわけだ[注5]

 

 

 ここまで、洗剤せんざいがどのようによごれをとしているかについて解説かいせつしてきたが、いかがだっただろうか? よごれをとしているのは、界面活性剤かいめんかっせいざい酵素こうそといった洗剤せんざい成分せいぶんだけではない。みず有機溶剤ゆうきようざいなどのよごれをかす溶剤ようざいや、ゴシゴシとこすったりクルクルとまわすなどの物理的作用ぶつりてきさよう関与かんよしている[注6][注7]。それぞれのよごれにてきした方法ほうほうでしっかりあらながして、清々すがすがしい年越としこしにしていただきたい。

 

 最後さいごに、記事きじ趣旨しゅしからはすこしはずれるが、洗浄度せんじょうど評価ひょうかかんする研究けんきゅうについて2つ紹介しょうかいして、記事きじめさせていただく。

 

 

ちょっとはみ出し 〜綺麗さを評価する〜

ふく洗浄度せんじょうど評価ひょうかする

 家庭科かていか授業じゅぎょうおもしてほしい。エプロンづくりやナップサックづくり、ボタンけなど被服ひふくつくかたなおかたかんする実習じっしゅう案外あんがいおおい。それではあつかかたはどうだったろう? たたみかた虫干むしぼしの方法ほうほう、そしてあらかたなど被服ひふくあつかかたかんする実習じっしゅうはどのくらいあっただろう。学校がっこう先生せんせいにもよるだろうが、座学ざがくしか記憶きおくにないというひと案外あんがいおおいのではないだろうか。

 

 なぜあらかた実習じっしゅうすくないのだろう? もちろん授業時間じゅぎょうじかん確保かくほ課題かだいというめんもある。しかしながら、もっと根本的こんぽんてき問題もんだいがある。そのあらかたがどれだけ有効ゆうこうかを、客観的きゃっかんてき評価可能ひょうかかのうかつ全国的ぜんこくてき実践可能じっせんかのう方法ほうほうでなければならないのだ。この問題もんだいをWindowsの基本きほんソフトであるペイントを使つかって解決かいけつしようとする研究けんきゅうがある。グレースケール処理しょりおこない、視覚的しかくてき評価ひょうかできないかというこころみだ。

 

食品加工環境しょくひんかこうかんきょう洗浄度せんじょうど評価ひょうかする

 清潔せいけつにするのは、心地ここちよくごせるからという心理的しんりてき理由りゆうだけではない。病原菌びょうげんきん毒素どくそ環境かんきょう維持いじすることで、わたしたち自身じしん健康けんこうたもつという衛生的えいせいてき理由りゆうもある。そのため、わたしたちは日頃ひごろからからだあらい、けた衣類いるい洗濯せんたくする。しかしながら、病原物質びょうげんぶっしつもっと基本的きほんてき侵入経路しんにゅうけいろである、くちにするもの、すなわち食品しょくひんについては、食品しょくひんあつか企業きぎょうまかせている場面ばめんすくなくない。それでは、どのような環境かんきょうととのえれば清潔せいけつ食品加工しょくひんかこう現場げんばつくられるのだろうか。

 

 付着ふちゃくした食品しょくひんよごれの残存ざんぞん度合どあいを、調理器具ちょうりきぐ素材そざい着目ちゃくもくして調しらべた研究けんきゅうがある。木製もくせい、プラスチックせい、シリコンせいのヘラに付着ふちゃくしたアレルゲンが、洗浄後せんじょうごにどれだけのこっているのかを評価ひょうかしたものだ。報告ほうこくでは木製もくせいものでのみアレルゲンの残存ざんぞん確認かくにんされている。

 

 清潔せいけつこまかなことのかさねで実現じつげんするもののようだ。

 

 

参考文献

  • 野々村 美宗. 『化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学 基礎から応用まで』. フレグランスジャーナル社.

  • 新名 史典ら. 『最新版 ビジュアル図解 洗浄と殺菌のはなし』. 同文舘出版.

  • Rob Lewis, Wynne Evans. 『基礎コース 化学』. 東京化学同人.

  • 数研出版編集部. 『新課程 視覚でとらえるフォトサイエンス 化学図録』. 数研出版.

  • 佐々木 麻紀子. 『 最近の洗濯用洗剤−家庭洗濯の視点から−』. 日本衣服学会誌 2016年 59 巻 2 号 53-56.

  • 駒津 順子ら. 『クエン酸によるカルシウム系汚れの洗浄に 関する消費者情報の実験的検証』. 日本家政学会誌 2019年 70 巻 10 号 643-652.

  • 大矢 勝. 『よくわかる最新洗浄―シャツの黄ばみの正体と解消法―』. 日本家政学会誌 2019年 70 巻 1 号 42-46.

  • 大矢 勝. 『洗浄科学の入門知識』. オレオサイエンス 2023年 23 巻 5 号 265-270.

  • 深沢 太香子, 久保 沙織. 『ペイントソフトを用いた洗浄性評価法の有用性』. 教職キャリア高度化センター教育実践研究紀要 3 55-64, 2021-03-31.

  • 上永吉 剛志. 『食品工場における洗浄プロセスの統計的評価』. 日本食品工学会誌 22 (2), 47-51, 2021-06-15.

脚注

[注1] どれが最も多い成分なのかは、成分表示の順番を見るだけでいい。洗剤やボディソープなどの成分は薬機法により規定されており、使用量の順番で記載するように定められているためだ。
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[注2] どうでもいい話だが、改めて身の回りの洗剤について観察してみたところ、食器用洗剤がマスカットの香り、ハンドソープが桃の香り、ボディソープに至ってはそのままフルーツの香りだった。どうやら葉月は果物系の甘い香りが好きらしい。本当にどうでもいい話し。 (本文へ戻る)

[注3] わざわざ「『分解』酵素」と記載したのは、分解とは反対の働きを持つ酵素も存在するからだ。こちらは合成酵素と呼ばれ、物質同士を結合させる役割を持つ。これらの働きをどのように行うかによって酵素はさらに細分化される。酵素の世界は奥が深い。 (本文へ戻る)

[注4] また、酵素全般に言える事だが、基本的に水中かつ体温に近い温度で働くように出来ている。そのためかつては、ほとんど界面活性剤からなる洗剤に入れることなど、考えられなかった。しかしながらバイオテクノロジーの進歩と企業努力により、界面活性剤がある低温でもよく働くものも増えてきている。 (本文へ戻る)

[注5] とはいえ、家庭で塩酸を使用するのはあまりにも危険だ。インターネットで検索するとクエン酸を使った方法が多く見つけられる。クエン酸は炭酸より強い酸で、また生成するクエン酸カルシウムも炭酸カルシウムより水に溶けやすいため、洗浄に利用できるという事のようだ。しかしながら、放置していると再度炭酸カルシウムの結晶が出来るため、浸け置きせずよくすすぐ必要がある。 (本文へ戻る)

[注6] 例えば泥汚れは洗剤一つでササッと綺麗、とはいかないがこれは泥の粒子が汚れた部分にギチギチに詰まっているためだ。そのため、ゴシゴシと力技で掻き出してやる必要があるのだ。 (本文へ戻る)

[注7] 洗剤の使用目的の一つに菌を殺して繁殖を抑えるというものがある。実はこれを意味する「殺菌」「消毒」という文言は薬機法で認められた商品にしか使えない。一方、「除菌」「滅菌」「抗菌」などはそうではない。頭の片隅に入れておくと、商品選びの参考になるかもしれない。 (本文へ戻る)

 

【著者紹介】葉月 弐斗一

「サイエンスライター」兼「サイエンスイラストレーター」を自称する理科オタクのカッパ。「身近な疑問を科学で解き明かす」をモットーに、日々の生活の「ちょっと不思議」をすこしずつ深掘りしながら解説していきます。

【主な活動場所】 Twitter Pixiv

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