2年かけたマンボウのドキュメンタリー映画「野生の魚を追いかけ世界一周(原題:Around the World on a Wild Fish Chase)」が遂に完成!

2023.12.12

 2020年末、世界中のマンボウ研究者が協力したマンボウの専門書『The Ocean Sunfishes Evolution, Biology and Conservation』が発売された。

 

 この専門書の出版記念イベントとして、2021年2月24日に「Virtual Ocean Sunfish Symposium 2021」という第1回マンボウ国際シンポジウムがオンライン上で行われた。現在、「Virtual Ocean Sunfish Symposium 2021」での講演は、Youtubeですべて閲覧することができる。



 この専門書やシンポジウムをきっかけに、世界中のマンボウ研究者の間で交流が生まれた。そして2021年11月、イギリスのマンボウ研究者であるNatasha Phillips博士から、ナショナルジオグラフィックの助成金に当たり、マンボウのアウトリーチ映画を作る計画があるので、是非参加して欲しいとのお誘いを受けた。私はもちろん喜んで引き受けた。

映画の概要

 映画は研究者に取材する形式で、英語で作られる。英会話が苦手な私は台本を作る必要があるなと身構えたのだが……私が英会話を苦手なことは知られていたので、シンポジウムの動画をそのまま使うので大丈夫とPhillips博士から返ってきた。ホッと安心した。よって、私は改めて取材は受けていないが、映画にはちゃんと出演している!


 時は流れて、2023年9月、マンボウ映画は完成し、映画祭に出品したPhillips博士から、Inheritance Environmental Film Festivalに選考され、イギリスのテレビ3局(Latest TV、Sheffield Live!、NVTV)でも流されたとの朗報が来た。そして、2023年11月9日、映画祭への出品が終ったマンボウ映画は、Youtube上で一般公開されることになった! 


 映画のタイトルは「Around the World on a Wild Fish Chase(野生の魚を追いかけ世界一周)」。Phillips博士が所属する映像制作会社Swimming Head Productionsの作品だ(※Swimming Headはマンボウの英名)。

 

 映画はPhillips博士が案内役を務め、最も有名なアメリカのマンボウ研究者へのインタビューから始まり、様々な国のマンボウ研究者へのインタビューを通して、地球を一周するというドキュメンタリー映画。

 内容はマンボウ研究者の語りを聞くことがメインであるが、映像はその研究者に関連したものが映し出され、近年どのようなマンボウ研究が世界で進められてきたのかが何となく分かるようになっている。ある意味で各研究者がマンボウとどのように関わって来たのかという、それぞれの人生や思い出を垣間見ることができる。

 

 この映画に出演するマンボウ研究者は、案内役のPhillips博士を除いて、Tierney Thys博士、Joanna Alfaro博士、Marianne Nyegaard博士、私、Ching-Tsun Chang博士、Ana Ahuir-Baraja教授、Enrique Ostalé-Valriberas教授、Miguel Baptista博士、Lara Sousa博士、John Davenport教授、Krill Carson氏の11名、映画は約37分(各研究者3分前後)だ。

 

 なお、本記事で一般的に使われるマンボウとはマンボウ類の総称を指し、種としてマンボウMola molaを指す場合は『マンボウ』と表現した。また、私の話は今までの記事で大体話しているのでここでは省いている(映画の13分1秒~15分11秒に登場)。

 

 以下の画像リンクから動画を視聴できる。英語の字幕が付いているので、英語が得意な方は直接Youtubeを見るのが良いだろう。

 しかしながら、本記事では、私のように英語が苦手な方向けに、どういうことが話されているか分かるように、会話形式の補足も加えたおおまかな意訳を用意した(ナレーション等省いている箇所もある)。Youtubeを見る補助として活用して頂ければ嬉しい限りである。

 

 インタビューの"聴き手"(下記意訳中では台詞を太字で記載)は全編通してPhillips博士であるためお名前を省略させていただいている。

アメリカの研究者 Tierney Thys博士(1分39秒~4分36秒に登場)

ーマンボウをまだ見たことがない人に、どう説明しますか?

Thys博士「マンボウは本質的には大きな頭が泳いでいるだけの不器用な魚のように見えますが、水中で見ると信じられないほど優雅です。マンボウには秘められた能力がたくさんあります」

 

ー秘密と言えば、マンボウの第一の謎はその奇妙な形です。何故このように見えるか説明できますか?

Thys博士「マンボウはサンゴ礁の魚のグループに属し、速さのためではなく快適さのためにああいう形になったと私はいつも言っています。マンボウが属するフグ目はすべて面白い形の魚です。フグ類やハリセンボン類はマンボウの祖先なのです。フグ類やハリセンボン類の一部のグループが大海原に向かうと決めましたが、自分の血統から離れるのはかなり難しいです。どれだけトレーニングしても、マグロになることは決してありません。つまり、マンボウは進化的に本当にうまくやった者なのです」

 

ーそうですね。私達はマンボウを外洋アドベンチャーのために磨かれたスペシャリストのフグとはあまり考えていないように思います。しかし、あなたが言うように、このスペシャリストに適合するために何百万年もかけて進化してきたにも関わらず、マンボウは今ある種の危険に晒されているようです。マンボウに対する懸念についてお聞きしてもいいですか?

Thys博士「他の海水魚と同じように、懸念は厳しい環境だと思います。我々は産業規模の漁業を行っています。汚染物質があり、海洋は温暖化しています。こうしたたくさんの傷や死は海洋生物に影響を与えています」

 

ーこれらの課題のいくつかを念頭に置いた上で聞いてもいいですか。何故マンボウのケアをしなければならないのですか?

Thys博士「食用魚を引き抜いた一部の地域では、クラゲが侵入して問題を引き起こしています。だからマンボウみたいにクラゲを食べる魚が重要です。大きなマンボウは、海洋食物連鎖の回復力を維持する上で非常に重要な役割を果たしています」

 

ーマンボウが海洋生態系の重要なパーツであることに私も同意します。

Thys博士「私は純粋な好奇心からマンボウに興味を持つ人達が大好きです。サメの怖さに興味を持つこととは違います」

 

ー私も純粋な好奇心は好きです。おそらくマンボウは今でも私達の海で見られる神秘の一部を表しているのかもしれませんね。ありがとうございました。

 

ペルーの研究者 Joanna Alfaro博士(4分56秒~7分43秒に登場)

ーあなたが取り組んでいる漁業と、ペルー海域で見られるマンボウの種について教えて頂けますか?

Alfaro博士「私達は小規模漁業と海洋巨大生物が接する多くの仕事をしています。今までペルー海域には『マンボウ』だけがいると思っていましたが、人々と話したり写真を見せてもらったりしていると、ヤリマンボウ、クサビフグ、カクレマンボウもいることが分かりました。今のところ4種が確認されていますが、もう少し掘ればもっと見つかると思っています」

 

ー素晴らしいですね。ペルーはマンボウ科5種のほぼすべてを一度に観察できる世界でも数少ない場所の1つのようですね。

Alfaro博士「ええ、凄いことです。マンボウを好きではない人はいないでしょう。素晴らしい動物です」

 

ー漁業に関するあなたの研究についてお聞きしてもいいですか? 大規模な漁業がローカルな種の個体群に影響を与えることは知っていますが、小規模な職人的漁業はどうなのでしょうか? マンボウにも影響があるのでしょうか?

Alfaro博士「それは難しい質問です。私達は中北部の1つの漁業だけで推定をしました。その小さな船団では、年間約300個体のマンボウが捕獲されます。しかし、拡大推定すると、数千個体ものマンボウが捕獲されていることになります。それは心配なことです」

 

ー捕獲されるマンボウについてですが、それらは単なる偶発的な混獲なのでしょうか? それとも地元の市場に揚げられるでしょうか?

Alfaro博士「漁師に「マンボウをどうするの? 食べるのですか?」と聞きました。何人かは「食べてみたが、肉はあまり魅力的ではなかった」と答えました。見た目はゼラチン質だし、寄生虫も多いです。ある意味、彼らはマンボウを食べるのをためらっていました」

 

ーそれは少なくともマンボウにとっては良いニュースですね。

Alfaro博士「マンボウにとっては良いことですが、状況は変わる可能性があります。この国では持続可能な漁業に取り組む姿勢はほとんどありません。私達が未だに苦労している主な問題の1つは、混獲を報告する方法です。それまでマンボウ類はペルーでは報告されておらず、私達が始まりでした。人々とのネットワーク作りを始めることが私達にとっての鍵でした。こうした人々との関係を確立することが重要であることはご存知でしょう」

 

ーはい、あなたの言う通りだと思います。最も重要なことは、これらの地球規模の問題に私達が協力して取り組むことです。私達は皆同じことに直面しています。ありがとうございました。

 

ニュージーランドの研究者 Marianne Nyegaard博士(8分23秒~12分34秒に登場)

ーマンボウを研究することは常に課題です。誰もが予想していたよりも多くの種が存在することが判明しました。新種をどのように発見したか教えていただけけますか?

Nyegaard博士「私がインドネシアで博士号取得のための研究していた時、インドネシアのマンボウがオーストラリアのマンボウと関連があるかどうか知りたいと思いました。そこでオーストラリアの漁業者に皮膚サンプルを採取してもらい、思いつきでニュージーランドにも同じことを依頼しました。ニュージーランドからのサンプルの中に未記載種があったので、それは本当に偶然でした。最初に発見したのは私ではなく、何人かの日本の研究者が既にこれを発見しており、私のデータは同じ傾向を示していました。その時の大きな挑戦は、この魚の姿を見つけることでした。その後、未記載種はより小型であることが判明しました。おそらく2.4~2.5 m以上にはならないのではないかと思っています。しかし、それでも大きな魚です。未記載種が座礁した時に人々がとても協力的で、ニュージーランドから私に連絡してくれたのはとても幸運でした。私が遺伝子サンプルを取得して、それが本当に探していた未記載種であることを確認し、それを記載できるように形態学的データも取得しました。本当に役立つことが分かったのは、博物館のコレクションです。博物館は実際にこの種をたくさん持っていました。当時、それぞれの種がどのように見えるかについて混乱がありましたが、最終的に、隠れたり変装したりすることを意味するラテン語の tectus から取って、Mola tecta (カクレマンボウ)と名付けました。英語名「HoodWinker」はそこから来ています」

 

ー凄い! あなたはスキューバダイビング中のマンボウの写真識別もされているのですよね。それはどのような仕組みですか?

Nyegaard博士「ダイバーがマンボウの写真を送ってくれるという仕組みです。種はウシマンボウです。この巨大な魚は、サンゴ礁にやってくる、寄生虫を満載した食料運搬車のようなものです。インドネシアには、ウシマンボウを掃除しようと待ち構えている、お腹を空かせたクリーナーフィッシュがいます。掃除中は、ダイバーが彼らにかなり近づくことができます。本当に落ち着いていて、クリーナーフィッシュの邪魔をしなければ、近づいてこの現象を観察することができます。彼らは掃除に忙しく、自分のスペースが必要なので、ダイバーは落ち着いて距離を置く必要があります。ウシマンボウの写真を受け取ったら、カタログを作り、メタデータを精査します。いつ、どこで撮られた写真なのか? そして、カタログと比較するプロセスを開始します。これはマンタ、ジンベイザメなど数多くの他種で行われている照合作業とまったく同じ原理です。ウシマンボウは信じられないような体表模様のパターンを持っているので、この作業に最適です。とても複雑で個性的。最初の撮影から数年後に写真が一致する個体もいました。観察できるシーズン終了後にウシマンボウがどこに行くのかは分かっていません。毎シーズン戻ってくるかどうかを確認するのに十分なデータはないですが、同じ場所に戻って来ることは間違いないと考えています」

 

ー素晴らしい。ウシマンボウとのダイビングは楽しんでいますか? 一緒に潜るのにウシマンボウはかなり臆病なのでしょうか?

Nyegaard博士「ええ、すごく楽しいですね。マンボウ類は私のお気に入りの動物です。ダイビングするのが本当に楽しいのにはさまざまな理由があります。1つは、見た目が非常に強そうで、まるで水中のエイリアンを見ているかのようです。勇敢な個体は我々をチェックしに来ますが、中にはダイバーが見えただけでサンゴ礁から泳ぎ去ってしまうような臆病な個体も確かにいます。ウシマンボウはとても速いので、我々が追いつくことはできないことを知っているかのようです」

ーありがとうございました。

 

台湾の研究者 Ching-Tsun Chang博士(15分38秒~17分4秒に登場)

ーマンボウ対象漁業について少し教えて頂けますか?

Chang博士「マンボウは世界中で混獲されています。しかし、アジアの一部の国では、台湾や日本のように漁業対象種として捕獲されています。台湾東部では食用としてよく利用されています。アジア諸国では年間水揚げ量が100トンに達することもあり、特に台湾では年間900トンに達することもあります。これまでのところ、マンボウに対する特別な保護アプローチはありませんが、ガラパゴス島やインドネシアのように、マンボウが見られる海洋保護区もいくつかあります」

 

ーそれは本当に興味深いですね。マンボウとその保全の将来についてあなたの考えを聞いてもいいですか?

Chang博士「私は、マンボウは非常に大きな体を持つ特別な動物だと思っています。しかし、マンボウの寿命や自然成長率、成熟年齢など、その生活史的特徴の多くはまだ解明されていません。だから、マンボウの生態情報をもっと研究することが重要だと思っています。それはマンボウの個体数を維持するための保全政策や対策を立てるための十分なデータを提供してくれるでしょう」

ーありがとうございました。

 

スペインの研究者 Ana Ahuir-Baraja教授(17分24秒~19分23秒に登場)

ー何故寄生虫の研究に魅力を感じるのですか? また、一個体のマンボウには何個体の寄生虫がいるのでしょうか?

Ahuir-Baraja教授「寄生生物群集は、海洋食物網における生物間の要素であり、その均衡の維持と安定に役立っています。寄生虫群集は、宿主の摂食行動や生態、系統学などに関する情報を提供してくれます。マンボウ科は世界的に最も寄生虫の多い魚の一つです。私の経験では、全長2 mを超える個体では、消化管だけから10000個体以上の寄生虫が採集されました」

 

ーぞっとするような、信じられないような話です。マンボウには何種の寄生虫がいるのですか?

Ahuir-Baraja教授「今日まで原生生物、吸虫類、単生類、カイアシ類、条虫類などを含む70種以上の異なる種が存在することが分かっています」

 

ーこれらの寄生虫は魚に害を与えるのですか? それともマンボウは寄生虫による余分な負担に耐えられるのですか?

Ahuir-Baraja教授「寄生虫の病理学的な情報が不足しているため、まず肝臓や腎臓、エラなどの重要な臓器に影響を及ぼしているかどうかを知る必要があります。寄生虫がマンボウの浮力、成長、運動、生存に影響を及ぼしているのかどうかを理解するためには、さらなる研究が必要です」

 

ーまるで1匹の魚だけで生きている小さな生態系のようですね。

Ahuir-Baraja教授「そうですね。マンボウは主要な器官のすべてに大量の寄生虫が生息し、様々な寄生種が生息する浮島のようなものです。マンボウは寄生虫学にとって夢のような存在です」

素晴らしい。寄生虫の世界に対する真の洞察をありがとうございました。

 

スペインの研究者 Enrique Ostalé-Valriberas教授(19分57秒~22分16秒に登場)

ーセウタの伝統的な漁業について教えて下さい。どのように行われているのですか?

Ostalé-Valriberas教授「セウタの漁業はボート7隻ほどの非常に小さなものです。ここの漁師のほとんどはアルマドラバ(※日本でいう定置網)で働いています。マンボウのような非商業種は、漁獲されても最終的に海に返されます」

 

ーそれは本当に環境に優しいですね。最近、あなたは網から大きな魚を放すことに協力し、それが話題になりました。何が起こったのか教えてもらえますか?

Ostalé-Valriberas教授「はい。あの日、私達は同僚数人とサンプリングに出かけていました。私達と一緒に働いているアルマドラバのスキューバダイバーが、私に特別なマンボウが漁獲されたと電話をしてきました。そこで私達は急いでアルマドラバに行き、観察したり、サンプルを採取したりしました」

 

ーそれはどれくらいの大きさで、どれくらいの重さでしたか?

Ostalé-Valriberas教授「全長2.9 m、全高3.2 mのウシマンボウでした。体重は計量器が1000 kgまでしか計れなかったので、残念ながら正確な体重は計量できませんでした」

 

ーつまり1000 kg以上あったということですね。信じられない。

Ostalé-Valriberas教授「はい」

 

ーこのサイズの魚をリリースするのは難しかったのではないでしょうか?

Ostalé-Valriberas教授「もちろんそうです。漁師は経験が豊富で、マンボウは10分~15分ほどで網から外されました。あまりにも大きいので私は調査にストレスを感じました。何故なら、ボートはとても危険ですし、人もたくさんいます。すべてがあっという間でしたが、調査できて幸運でした」

ー素晴らしい。すべてがとてもうまくいったようですね。漁師にとっても魚にとっても。ありがとうございました。

 

ポルトガルの研究者 Miguel Baptista博士(22分37秒~24分33秒に登場)

ーマンボウには危険な毒素が含まれているのではないかという懸念が何故あるのでしょうか?

Baptista博士「マンボウはフグ類を含むフグ目に属します。フグ類は食中毒、麻痺、さらには死に関わることで有名です。これはほとんどのフグ類の種が強力な神経毒であるテトロドキシンまたはポリオキシンを含んでいるために起こります。マンボウとフグ類の系統発生上の近縁関係の結果として、マンボウも生物毒を持つのではないかと考えられることがあるからです」

 

ーこれまでの研究で何か分かったのでしょうか? マンボウにはそれらの毒素が含まれていましたか?

Baptista博士「これまでに3つの研究が行われ、マンボウのテトロドトキシンの存在が評価されました。マンボウ属の筋肉や肝臓、ヤリマンボウとクサビフグの筋肉からはテトロドトキシンやその誘導体は検出されませんでした。しかし、そのうちの1つの研究では、溶血性エッセイから、東アジア産のヤリマンボウ標本の筋肉にポリオキシン様化合物が存在することが示唆されました。科学的な証拠から、マンボウにはテトロドトキシンは含まれていないことが示唆されていますが、これらの魚にポリオキシンが含まれているかどうかを評価するためには、さらなる研究が必要です」

 

ーあなたは海洋マイクロプラスチックについても研究されていますね。マンボウでも見つけましたか? それは私達が心配すべきことでしょうか?

Baptista博士「はい、マイクロプラスチックは、海面から深海、海岸堆積物、マンボウなどの海洋生物に至るまで、海洋環境全体にわたって報告されています。マンボウのマイクロプラスチック汚染をより深く理解するために、私と同僚はマンボウの胃の内容物を調べています。これらの魚のほぼ 80% からマイクロプラスチックが検出されました。そのため、懸念の余地があります」

ーこれは明らかに私達全員がもっと認識すべきことです。調査結果を共有していただきありがとうございました。

 

イギリスの研究者 Lara Sousa博士(24分53秒~28分33秒に登場)

ー外洋で魚をどのように追跡するのでしょうか?

Sousa博士「今ではたくさんの新しいテクノロジーがありますが、ここでは私が博士号取得のために使用したものについてお話します。マンボウの鰭に付けたスポットタグのスマートポジションのみを使用しました。魚が水面に現れるたびに、その位置が ARGOS 衛星に送信されるため、ほぼリアルタイムで衛星にアクセスできます。次に、魚の体に取り付けられ、温度、深度、光レベルを毎秒記録するポップアップ衛星タグであるPSATSも使用しました。予め決められた時間が経過すると、タグは自らを切り離し、水面に浮上し、これらのデータを送信します。光レベルを使用して、マンボウの位置を三角測量して地理的位置を特定することができます。最後は、基本的に PSAT タグである fast-Loc GPSタグですが、水面にいる時に GPS コンステレーションを捕捉して計算できる機能もあります。これらより深さ、温度、光レベルと合わせて、マンボウが向かっていた場所の、より洗練された高解像度の GPS 位置が得られます。これらは私が博士号取得のために使用した3つの異なるタグです」

 

ー主な発見は何でしたか? マンボウはどこまで移動できるのでしょうか?

Sousa博士「マンボウはかなり長い距離を移動します。北東大西洋での最長記録は、往復で3000 km以上だったと思います。タグ付けした場所から750 kmは離れていたと思います。しかし、例えば、日本のマンボウも2000 km以上移動しています。この長距離移動は私の調査から得られた重要な知見であり、また世界的な知見でもあると思います。春の初めにマンボウにタグをつけると、気温の上昇とともに、おそらく北大西洋でその季節に知られている生産性の上昇に従って、マンボウはすべて北上し始めました。夏の終わりから秋の初めにかけて、マンボウは再び南下し始めました。このような季節的な南北移動は、北西大西洋や日本で確認されています。このようなことは、基本的に気温の上昇や生産性の上昇に伴って、あらゆる場所で起こっているようです」

 

ーこれらの動きは回遊と呼ぶことができるのでしょうか?

Sousa博士「私は部分的な回遊だと思っています。何故ならすべての個体群が移動するわけではありませんでした。マンボウの一部はどこにも移動せず留まっていました。タグを付けた大型個体の大半は移動していましたが、小型の個体は残る傾向がありました。しかし、未成熟な1個体でも500 km以上移動した例がありました。そのため、移動するかどうかの原動力は成熟ではないと思っています。マンボウにはまだまだ分からないことがたくさんあります」

ーそうですね、ありがとうございました。

 

イギリスの研究者 John Davenport教授(29分6秒~31分33秒に登場)

ー私達が過去に座礁後に寄付された死んだマンボウの解剖で、一緒に調査した時のことです。私達は本当に奇妙なものをいくつか見つけました。表皮の下にある厚い白い層(カプセルまたは皮下組織)。それが何であり、どのように機能するかについてもう少し詳しく説明していただきたいです。

Davenport教授「魚の観点からすると、それは本当に奇妙です。何故なら、このゴム状の半硬質材料の層は、他のほとんどすべての魚の層とは全く異なるからです。これは私達をとても興奮させたものの 1 つです。この層は何をするのでしょうか? 実は素材自体が海水よりも軽いことが分かりました。マンボウに一種の救命胴衣を与え、沈まないようにしています。この層があるため、水中でも問題なくホバリングできます。しかし、解剖中に、他にも多くの機能があることが分かりました」

 

ーこれだけでも魅力的ですね。おそらく救命胴衣として機能するのですが、他にも2つの要素が発見されました。それらについて説明して頂けますか?

Davenport教授「まず、マンボウには2種類の筋肉がある。ほとんどの筋肉は白い筋肉で、無酸素運動をしていますが、赤い筋肉もあります。マンボウが冷たい水の中に潜る時、この赤い筋肉が体を温めるのでしょう。おそらくウェットスーツのように、熱を逃がさないようになっているのだと思います。もう一つは、カプセル(皮下にある厚い白い層)が外骨格のような働きをする素材だということです。私達は魚には内骨格があるという考え方に慣れています。例えば、サバを食べれば、魚の内部骨格にどれだけの骨があるか分かりますよね。しかし、マンボウの場合、まずカプセルが魚に一種の剛性を与え、泳ぎを素早くするのに役立っています。というのも、硬直した魚体は、うねりや抵抗の多い魚体よりもはるかに容易に水中を進むことができるからです。また、いくつかの筋肉はこの外骨格(皮下にある厚い白い層)に付着していました。それは2つの大きな鰭を動かし、マンボウを比較的高速で移動させるのに役立っています。つまり、皮下にある厚い白い層は救命胴衣であり、ウェットスーツであり、骨格なのです」

ー信じられない。マンボウの秘密はさらにまだまだありそうですね。ありがとうございました。

 

アメリカの研究者 Krill Carson氏(32分5秒~36分12秒に登場)

ーあなたは実際に多くの動物を救い、多くの悲劇を防ぐ組織を運営しているのですね。なぜマンボウが座礁するのか聞いてもいいですか?

Carson氏「ウェルフリート港は、岬での座礁が多い場所です。港口はとても深く、港は4.5マイルと非常に長いです。そのため、浅瀬で危険な内港へと動物達を導くことになります。4.5マイル港内を移動し、内港に入ると、彼らは動けなくなる。潮が引いてしまうと、干上がった状態になります。つまり、健康な魚が悪いタイミングに悪い場所にいるのです」

 

ーそれは大変なことのように思います。あなたが普段扱っているマンボウの大きさはどれくらいですか?

Carson氏「最も小さいものでは100ポンド以下、大きいものではおそらく1500ポンドを超えるものがいます。私達が扱っているのは主にケープコッド湾で、おそらく水域の北部に生息する幼魚だと考えられます。夏から秋にかけては、たくさんのクラゲがいるので、楽しく食事をしていることでしょう。しかし、海水が冷たくなるにつれて、マンボウは南へ向かう必要があることに気づきます。この秋から初冬にかけて、私達が扱う他の多くの動物と同じように、彼らは罠にかかってしまいます。ウミガメ、マンボウ、シビレエイ、海鳥もこのエリアに捕らわれます。最終的に、脱出する方法を見つけられなければ、座礁してしまいます」

 

ーそれはとても難しそうですね。マンボウが浜辺に座礁し、通報を受けたら、次にどうするのですか?

Carson氏「ご存知のように、座礁は即時性が重要です。より早く誰かをその動物のところに連れて行くことができれば、より成功率が高くなります。そのため、ボランティアの地域住民を訓練しています。海洋生物学者である必要はありません。ただ、熱意があり、積極的に参加してくれる人が欲しいのです」

 

ーそれほど迅速に対応するチームがあるのは素晴らしいことですね。本当に大きな動物をどのように移動させるのでしょうか?

Carson氏「私達は皆ボランティアなので、安くやります。マンボウは水深が数インチでもあれば、大きくても簡単に動かすことができるということが分かりました。物理を味方につけるのです。まず、私達のファースト・レスポンダーであるカヤッカーが海に飛び込みます。次に、動物に紐をつけ、フラフープに乗せます。これは私がリサイクルショップで見つけたフラフープです。ファーストレスポンダーは、フラフープとマンボウをカヤックの後ろに取り付け、マンボウをカヤックに乗せて湿地帯から桟橋を回り込ませ、浅瀬から脱出させます。ケープコッド湾に戻り、さらに岬を回って暖かい越冬地へと南下を続けます」

 

ーすごいです。何百、おそらく何千もの動物を救出する人々の素晴らしいネットワークですね。あなたの仕事は本当にインスピレーションを与えてくれます。

Carson氏「あなたのような素晴らしい人達、一般の人々にも出会えます。誰もがとても好奇心旺盛で、袖をまくり上げて水に飛び込み、できる限り手伝おうとすることがよくあります。それは本当に人間性への信頼を与えてくれます。ご存知のように、私達は今、気候変動や海洋ゴミなどの非常に大きな問題に取り組んでいますが、喜んで助けてくれる人がいることを知っています。これは、組織全体が協力して、本当にこの地球を救うために知っていることや学んだことを共有する、保守的な取り組みになるでしょう」

ー人間が心を一つにすることで、いかにポジティブな変化をもたらすことができるかを示しています。これこそ今、私達が聞くべきポジティブなニュースだと思います。ありがとうございました。

 

まとめ

 映画の内容は大体このような感じだ。世界にはもちろんこの映画に登場しなかったマンボウ研究者がもっといる。しかし、この映画に登場した研究者達は、現在マンボウ研究で活躍している人達なので、今後も注目に値することだろう。

 Phillips博士は最後に「何年もこの魚を研究してきた後でもまだまだ学ぶことはたくさんありました。マンボウにはまだ多くの謎が隠されています。マンボウは今多くの困難に直面していますが、私はマンボウの未来に希望を抱いています。マンボウの味方になる世界的なネットワークができ始めています」と締めくくっている。


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参考文献

Thys, T. M., Hays G. C., Houghton J. D. R. (eds.). 2020. The ocean sunfishes: Evolution, biology and conservation. CRC Press, Boca Raton.

【著者情報】澤井 悦郎

海とくらしの史料館の「特任マンボウ研究員」である牛マンボウ博士。この連載は、マンボウ類だけを研究し続けていつまで生きられるかを問うた男の、マンボウへの愛を綴る科学エッセイである。

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