毎日出会う臭〜いアイツ。意外と知らないうんちのお話。

2023.12.11

 12月11日は「胃にいい」の語呂合わせで「胃腸の日」らしい。これからの季節、忘年会やら新年会やら親族の集まりやらで、何かと胃腸に負担がかかる機会が多い。食べ過ぎ飲み過ぎにはくれぐれも留意して、胃腸にも配慮した年末年始を過ごしていただきたい。

 ご存知の通り胃腸は、食物を消化して栄養を吸収するための器官だ。どんな食物も……とは言えないが、口に入った大抵のものは胃腸を通って、うんちとして排泄される。真っ赤なトマトも、こんがり焼けたお肉も、白いご飯も、全部茶色いうんちになる。これは一体どういうことなのだろうか? そこで今回は、食物がどのようにうんちになっていくのかについて解説していく。

 

 

少し詳しく 〜うんち形成の場

 そもそもうんちはどこで作られるのだろうか? 食物の通る経路から考えてみよう。

 口から入った食物は、食道を通って胃で消化される。さらに腸を通って、最終的に肛門から排泄される。この「口→食道→胃→十二指腸→小腸→大腸→直腸→肛門」の通り道のどこかで、うんちが形成される訳だ[注1][注2]。口から肛門に至る通り道は一本の管になっているため、消化管と呼ばれており、口から十二指腸までを上部消化管、十二指腸から肛門を下部消化管という。

 それではここで問題だ。うんちは上部消化管と下部消化管のどちらで作られるのだろうか? 少し考えてほしい。

 ヒントになるかは微妙だが、一つ思い出してほしい。これまでの人生で一度は嘔吐おうとしたことはあるだろう。その時の吐瀉物としゃぶつは一体どんな色だっただろうか? 汚い話ですまない。今回の記事は大体こんな感じだ。

 口で細かく砕かれ、胃液と混ぜられた吐瀉物は、無色透明に食物の色が足された色をしており、うんちとは似ても似つかない色をしている。嘔吐は胃の内容物を逆流させる行為のため、嘔吐した時点では上部消化管内しか通っていないことになる。

 したがって先の問いの答えはここから考えることができる。そう、うんちは下部消化管内で作られているのだ。腸を通って肛門から出る間に食物はうんちになる。

 うんちは主に腸で作られることがわかった。しかしながらそもそも、うんちの材料はなんなのだろうか? 「そんなの食べ物でしょ?」と思われるかもしれない。もちろん食物が主なのは間違いない。間違いないのだが……うふふふ。

 という訳で続いてうんちの材料について解説していく。

 

 

さらに掘り下げ 〜うんち形成の材料

 皆さん、お風呂では毎日何をしているだろうか? 歌を歌ったり考え事をしたり、あるいは何も考えずポケ〜と心を落ち着かせている方もおられるだろう。お風呂での過ごし方は千差万別で、誰にも邪魔されない自由な時間だ。各々素敵なお風呂ライフを満喫していただきたい。

 お風呂で欠かせない行為の一つに、体や髪を洗うというのがある。日々の生活を通じて汚れた部分や、細胞分裂によって剥がれ落ちた古い細胞すなわちあかを落とすためだ。皮膚は細胞分裂の盛んな組織のため、垢も毎日作られる。

 そう、細胞分裂の盛んな組織では古い細胞も大量に生まれるのだ。

 これがうんちとどう関連するのだろう?

 実はうんちには食物だけでなく、古い細胞に由来するものが含まれている。

 例えば消化管の上皮細胞は、体内で最も細胞分裂の盛んな組織の一つである。腸の表面では表面積を広くするために、絨毛じゅうもうと呼ばれる突起と陰窩いんかと呼ばれるくぼみがセットで配置されている。陰窩の底で分裂した細胞は徐々に横へ横へと動いていき、最終的に絨毛の先端で剥がれ落ちる。すなわち垢だ。

 また、私たちの体内を駆け巡っている血球も細胞分裂が盛んに行われ、入れ替わりの激しい細胞だ。酸素の運搬を担う赤血球は長くとも120日くらいの寿命で、老化すると分解され色素を放出する。

 こうした消化管の不要な細胞や赤血球由来色素が、下部消化管を通る食物と混ざってうんちとして排泄されるというわけだ[注3]

 

 うんちの材料として、食物の他に古い細胞に起因するものも含まれていることがわかった[注4]。しかしちょっと待ってほしい。剥がれ落ちた上皮細胞はともかく、赤血球に由来する色素は血管内を流れているはずだ。どのようにうんちに混ぜられるのだろう?

 続いてうんちがどのように出来るのかを解説していく。

 

 

もっと専門的に 〜うんち形成の過程

 突然だが、みなさんはプラモデルを作ったことはあるだろうか? 小さなパーツをいくつも組み合わせて作る、精巧で自由自在に稼働する模型だ。

 プラモデルは通常、ランナーと呼ばれる大きな枠から個々のパーツを切り出して組み立てていく。ランナーとくっついたままでは、邪魔になってパーツ同士がくっつかないからだ。どれだけ大きなプラモデルになっても、一度もランナーから切出さずに完結する物はほとんどないだろう。

 大きな物は細かい形の集合だが、細かい形を作るには大きな状態から切り離す必要があるのだ。

 それは人体というスケールでも同じだ。

 家庭科の授業で習った三大栄養素をちゃんと覚えているだろうか? 炭水化物、脂肪、タンパク質だ。しかしながら、これらの栄養素はそのまま私たちの体に使われるわけではない。炭水化物は単糖に、脂肪は脂肪酸に、タンパク質はアミノ酸に、それぞれ元の状態から細かくした形に分解されたのち、各組織で再度使用する形に合成し直される。

 この細かく分解する過程を消化といい、消化液と呼ばれる分泌液により行われる。

 消化液には様々な種類があり、舌から分泌される唾液だえきや、膵臓すいぞうから分泌される膵液すいえき、肝臓からから分泌される胆汁たんじゅうなど、様々な消化液が食物を消化する[注5][注6]。特に肝臓は、血液を貯めたり破壊する役目も担っている。そのため、胆汁には胆汁色素と呼ばれる赤血球由来の色素が含まれており、これがいくつかの段階を経てうんち特有の色を着色する。

 消化された食物は、まず小腸で栄養成分が、続く大腸で水分が体内に吸収される。こうして、食物のうち消化出来なかったか、消化したが吸収できなかった部分が、剥がれ落ちた細胞や消化液とともにうんちとして排泄されるというわけだ[注7]

 

 ここまで、うんちがどのように出来るかについて解説してきたが、いかがだっただろうか? うんちは生きていく上で欠かせない生理現象の一つであるとともに、健康のバロメーターでもある。日々のうんちの様子をなるべく観察して、健康な生活を送ってほしい。

 最後に、記事の趣旨からは少し外れるがトイレに関する研究について2つ紹介して、記事を締めさせていただく。

 

 

ちょっとはみ出し 〜トイレライフを追求する

健康管理はトイレで

 健康に生きて行く上で注意しなければならないのが、病気の予兆を見逃さないことだ。というわけで異常がないかのデータを測定するため、まず10 km歩いてきてほしい。そのあとは一律で同じメニューを食べていただいて、その後1時間の昼寝を……。それから…………。面倒臭くてやっていられないって? 葉月もそう思う。データの取得は、日常生活の中で自然な形で行うのが望ましい。

 ところで私たちは生きていく上で必ずトイレに行く。老いも若きも男も女も例外なくトイレに行く。そう、トイレを使えば誰もが自然な形でデータを測定することができるのだ。

 トイレの便座を利用した検出方法で、自律神経機能を評価しようという試みがある。トイレは循環器疾患による死亡事故の多い場所でもあるため、死亡リスクの低減につなげようというわけだ。

快適で不快なトイレ

 トイレの個室が開くのを待っている間、あなたは何を思っているだろう? 「早く出てきて」とか「次の予定の時間に支障ないかな」というようなことを考えているのではないだろうか。

 それではトイレの個室に入っている間、あなたは何をしているだろう? ついついスマートフォンを触っていたりしないだろうか。ふと気になって、カバンの中身を漁るようなことはしていないだろうか。

 駅や店舗、社屋など多くの人が使うトイレは、当然のことながら多くの人が快適に使えることが求められる。一方で、快適度が高すぎるとそれだけ待ち時間は増加してしまう。快適でありながら、「早く出ないと」と不快に思わせるトイレが求められているのだ。個室の寸法から、この難問に挑んだ研究がある。仮想空間上に再現した様々な寸法の個室トイレを体験してもらい、体感時間を答えてもらうという方法で調べたものだ。トイレの設計も奥が深い。

関連記事

笑ってはいられない『うんこ』実験!! 人工的に"作る"実験のウラ話

参考文献

  • 嶋田正和ら. 『新課程 視覚でとらえるフォトサイエンス 生物図録』. 数研出版.

  • Abraham L. Kierszenbaum, Laura L. Tres. 『組織細胞生物学 原初第5版』. 南江堂.
  • 岡田 泰伸ら. 『ギャノング生理学 原書26版』. 丸善出版.
  • John D Phillips. “Heme biosynthesis and the porphyrias”. Mol Genet Metab . 2019 Nov;128(3):164-177.
  • 西木 栄策, 石井 仁. 『 トイレブースの寸法と扉位置・隙間が時間評価ならびに印象評価に及ぼす影響-ヘッドマウントディスプレイを用いた仮想空間による検討- 』. 人間‐生活環境系シンポジウム報告集 2022年 46 巻.
  • 馬場 紘太郎. 『トイレでの自律神経機能評価に向けた心弾図 計測に関する研究』. ライフサポート 2021年 33 巻 1 号 9.

脚注

[注1] それではここで問題だ。消化管は体内にあるだろうか? 体外にあるだろうか? わざわざ訊ねるくらいなのだから想像もつこうが、答えは体外だ。これは生物学の世界では、切って開かなくても触れられる部分を体外と表現するためで、鼻や気道、肺も体外に含まれる。 (本文へ戻る)

[注2] 盲腸炎という病気がある。炎症により横腹がめっちゃ痛くなり、患部を外科手術で切除する必要がある病気だ。さて、どこを切るのだろう? 盲腸を丸ごと切るのだろうか? 実は盲腸は大腸の入り口部分で、炎症は盲腸のうち虫垂という箇所で起きる。そのため正式には虫垂炎といい、切るのは虫垂のみだ。 (本文へ戻る)

[注3] 鳥は緑色のフンをするが、これもやはり胆汁色素による影響だ。胆汁色素には主に赤褐色のビリルビンと、青緑色のビリベルジンの2種があり、人では前者、鳥では後者が多いのだ。 (本文へ戻る)

[注4] また、うんちをスムーズに送り出すため、腸から粘液という潤滑剤のようなものが分泌される。これも当然うんちには混じるのだが、通常は目視できる程ではない。目視できるほど出たら病院へGOだ! (本文へ戻る)

[注5] 膵液は膵臓のランゲルハンス島という分泌腺から分泌される。ランゲルハンスさんが「島状に点在する細胞があるぞ!」という理由で命名したのだが、名前が面白い+生物学を学ぶと必ず知るので「ランゲルハンス島に行ってくる」はちょっとした鉄板ギャグである。ちなみにサイズは直径0.1 mmほど。 (本文へ戻る)

[注6] このように書くと、消化は全て人の力だけで行われるようだが、実はそうではない。腸管内には無数の細菌が住み着いており、これらも消化に関与する。このような細菌群を腸内細菌そうという。腸内細菌叢は人によって違うため、同じ物でもどれだけ消化されるかは人によって変化する。 (本文へ戻る)

[注7] 便秘改善には食物繊維という話を聞いたことはないだろうか? 肛門の筋肉は直腸内のうんちの量が増えて圧力が高まると緩むように出来ている。そのため、便秘改善にはうんちを増やせば良い。食物の食物繊維は消化されない成分なので、食物繊維の多い食事を摂るとうんちの量も増えるというわけだ。 (本文へ戻る)

 

【著者紹介】葉月 弐斗一

「サイエンスライター」兼「サイエンスイラストレーター」を自称する理科オタクのカッパ。「身近な疑問を科学で解き明かす」をモットーに、日々の生活の「ちょっと不思議」をすこしずつ深掘りしながら解説していきます。

【主な活動場所】 Twitter Pixiv

このライターの記事一覧