【ギネス世界記録2023年度版】水中動物世界一の記録を調べてみた【50種】

「世界一」は人々を非常に惹き付ける力がある。

ギネス世界記録は様々な世界一に関する記録を収集・記録する組織だ。ギネス世界記録は毎年本を出版し、2023年度版の本は『ギネス世界記録2024』というタイトルである。

前回の記事で、私はマンボウ類とギネス世界記録との深い関わり合いについてお話しした。しかし、世界一の記録は他にもたくさんある。マンボウ類以外にはどのような現生の水中動物（ワニや水鳥などの陸上でも生活できる種は除く）の記録が掲載されているのかが気になった。

そこで今回は、英語版の『Guinness World Records 2024』の内容を調べ、現生の水中動物の世界記録をカテゴリー別にまとめて、箇条書きした。思っていたより多かったので、各動物がどういう姿なのか気になった方は、是非学名をググってみて欲しい。

 

※編集部注：編集部の方で参考画像を追加しております。誤り等ございましたら編集部宛にお問い合わせください。

 

体の長さ世界一

Longest colonial animal（群体動物の中で世界最長）

ケムシクラゲ科の1種 Apolemia uvaria は、2020年3月16日に西オーストラリア沖で螺旋を形成しているのが目撃され、その長さは全長119m と推定された（※実際には計測されていない）。

Largest animal ever（動物の中で世界最大）

シロナガスクジラ Balaenoptera musculus は、1909年に南大西洋の捕鯨基地で測定されたメスの長さが33.57mだった。本種はまた、199kgの最大の心臓、容量5,000リットルの最大の肺、長さ 8ｍ, 2～3t の最大の赤ちゃんなど、体のパーツが動物の中で世界最大であるものが多い。

 

Largest fish（魚類の中で世界最大）

ジンベエザメ Rhincodon typus は、2001年5月にインド沖のアラビア海で捕獲されたメス個体の長さが 18.8mだった。本種はまた動物の中で最も厚い皮膚を持ち（典型的には10cm）、2022年7月に発表された研究によってオキアミだけでなく海藻も食べていることから世界最大の雑食動物であることも判明した。

 

Largest predatory fish（捕食性の魚類の中で世界最大）

ホホジロザメ Carcharodon carcharias は長さ6m を超えたとされる個体の報告が多数ある。

 

Longest bony fish（硬骨魚類の中で世界最長）

1963年7月18日にアメリカのニュージャージー州沖で海洋科学者のチームによって観察されたリュウグウノツカイ属の1種 Regalecus glesne の個体は、長さ約15.2 m であった。

 

Longest invertebrate（無脊椎動物の中で世界最長）

ダイオウイカ Architeuthis dux は長さ約13 m に達し、頭足類最長である。

 

Longest zooids（個虫群の中で世界最長）

カツオノエボシ Physalia physalis は、一見すると1個体の動物に見えるが、実は形態の異なる複数の個虫が集まってできた群体動物である。カツオノエボシは 50 m に達する長い触手を持つ。

 

Largest octopus（タコ類の中で世界最大）

確実に計測されたミズダコ Enteroctopus dofleini の最大個体は 長さ4 m、重さ71 kg であり、本個体はタコ類の中で最長記録と最重量記録を兼ねる。

 

Largest marine crustacean (leg span)（脚を広げた長さの海洋甲殻類の中での世界最大）

タカアシガニ Macrocheira kaempferi の脚を広げた最大の長さは 369 cm である。

 

Longest sea snake（ウミヘビ類の中で世界最長）

海生爬虫類のラセンウミヘビ（正式和名？） Hydrophis spiralis は、長さ275 cmに達する。

 

Largest grenadier fish（ソコダラ科魚類の中で世界最大）

ムネダラ Albatrossia pectoralis は長さ2.1 mに達する。

 

Largest sea slug（ウミウシ類の中で世界最大）

アメフラシ属の1種 Aplysia vaccaria は、長さ99 cm、重さ14 kg近くになり、本種はウミウシ類の中で最長記録と最重量記録を兼ねる。

 

Largest freshwater crustacean（淡水甲殻類の中で世界最大）

タスマニアオオザリガニ Astacopsis gouldi は、長さ80 cmに達する。本種はまた、世界最大の淡水無脊椎動物でもある。

 

Largest seadragon（シードラゴン類の中で世界最大）

ヨウジウオ科魚類の1種 Phyllopteryx taeniolatus は、長さ45 cmに達する。

 

Largest amphipod crustacean（端脚類動物の甲殻類の中で世界最大）

ダイダラボッチ Alicella gigantea は、長さ34 cmに達する。

 

Largest sea urchin（ウニ類の中で世界最大）

オオキタムラサキウニ Mesocentrotus franciscanus は、8 cmに達する棘と直径 18 cm を超える外骨格（テスト）を持つ。

 

Smallest vertebrate（脊椎動物の中で世界最小）

フィリピン海の水深 1425 mで採集されたヒカリオニアンコウ Photocorynus spiniceps の成熟オス1個体は、長さ6.2 mmであった。

 

 

Smallest sea urchin（ウニ類の中で世界最小）

マメウニ科の1種 Echinocyamus scaber は、幅5.5 mmである。

 

体の重さ世界一

Largest pinniped（鰭脚類の中で世界最大）

1913年2月28日、南大西洋で長さ6.85 mのオスのミナミゾウアザラシ Mirounga leonina が殺され、その体重は少なくとも4 t はあった。

 

Heaviest bony fish（硬骨魚類の中で世界最重量）

2021年12月9日にポルトガル沖、アゾレス諸島のファイアル島近くで発見された死んだウシマンボウ Mola alexandriniは体重2,744 kg、全長3.25 mであった。

 

Largest jellyfish（クラゲ類の中で世界最大）

キタユウレイクラゲ Cyanea capillata は、重さ1 tに達する。1870年、アメリカのマサチューセッツ湾で打ち上げられた本種は、傘径が2.3 m、触手は36.5 mもあった。

 

Heaviest invertebrate（無脊椎動物の中で世界最重量）

ダイオウホウズキイカ Mesonychoteuthis hamiltoni は重さ495 kgに達し、頭足類最重量である。

 

Largest freshwater fish (specimen)（淡水魚類の中で世界最大個体）

2022年6月13日にカンボジアのメコン川で、淡水エイであるプラークラベーン Urogymnus polylepis の体盤幅2.2 m（全長3.98 m）、体重300 kgのメス個体を研究者が捕獲した。一方、世界2位に落ちた淡水魚は、タイのメコン川で2005年に捕獲されたメコンオオナマズ Pangasianodon gigas の全長2.7 m、体重293 kg個体である。

 

Heaviest starfish（ヒトデ類の中で世界最重量）

1969年9月14日に、ニューカレドニアのイロ・アメデ沖で、オオフトトゲヒトデ Thromidia catalai の重さ約6 kg個体が捕獲された。本種は幅70 cmにも達する。

 

Lightest freshwater fish（淡水魚類の中で世界最軽量）

成熟したオスのコビトゴマハゼ（正式な和名？）Pandaka pygmaea は、長さ約1 cm、重さ4~5 mgである。

 

速さ世界一

Fastest shark & Highest-leaping shark（サメ類の中で世界最速＆世界最跳躍）

アオザメ Isurus oxyrinchus は、時速56 kmで泳ぐことができ、また水面から約6 mジャンプすることもできる。さらに、本種は研究者によるタグ追跡調査で600日間かけて大西洋を 21000 km以上移動したことが記録されたことから、往復で世界最長移動した魚類でもある。

 

Fastest marine mammal（海洋哺乳類の中で世界最速）

1958年10月12日、北東太平洋でシャチ Orcinus orca が時速55.5 kmで泳ぐことが計測された。

 

Fastest-swimming snake（ヘビ類の中で世界最速遊泳）

海生爬虫類のセグロウミヘビ Hydrophis platurus は1秒あたり1 mの速さで泳ぐことができる。

 

Fastest starfish（ヒトデ類の中で世界最速）

ヒマワリヒトデ Pycnopodia helianthoides は、毎分１m 移動する。

 

 

深さ世界一

Deepest plastic-contaminated animal（プラスチックに汚染された動物の中で世界最深）

2017年1月29日にマリアナ海溝の水深10890 mから採集された10個体のカイコウオオソコエビ Hirondellea gigas はすべての個体の消化管に合成・半合成繊維が入っていた。

 

Deepest echinoderm（棘皮動物の中で世界最深）

キクモンナマコ科 Myriotrochidae の1種 Prototrochus bruuni は、1977年に南西太平洋のトンガ海溝の水深10730 mから採集された。

 

Deepest hydrozoan（ヒドロ虫の中で世界最深）

2023年2月9日に発表された研究成果によると、深海探査艇DSV Limiting Factorによる2021～2022年の遠征中、北西太平洋のフィリピン海溝の水深10063 mでイチメガサクラゲ科の1種 Pectis profundicola と暫定的に同定されたヒドロ虫の1種が撮影された。

 

Deepest fish（魚類の中で世界最深）

2022年8月15日、伊豆・小笠原海溝の水深8336 mで Pseudoliparis属の幼魚が撮影された。

 

Deepest octopus（タコ類の中で世界最深）

2019年、インド洋のジャワ海溝で、ジュウモンジダコ属 Grimpoteuthis の1種が、水深6957 mで発見された。

 

Deepest squid（イカ類の中で世界最深）

ミズヒキイカ属 Magnapinna の不明種は、フィリピン海溝の水深6212 mで記録された。

 

Deepest eel（ウナギ類の中で世界最深）

2014年5月14日、研究者はニュージーランド沖のケルマデック海溝の水深6068 mでホラアナゴ科の1種 Ilyophis robinsaeを撮影した。

 

 

Deepest shark（サメ類の中で世界最深）

マルバラユメザメ Centroscymnus coelolepis は、水深3700 mの海底で発見された。

 

Deepest dive by a mammal（哺乳類の中で世界最深潜水）

2010年～2012年に収集されたデータより、アカボウクジラ Ziphius cavirostris が水深2992 mで記録された。

 

Deepest dive by a pinniped（鰭脚類の中で世界最深潜水）

1989年5月、キタゾウアザラシ Mirounga angustirostris が水深1529 mで記録された。

 

Deepest dive by a reptile（爬虫類の中で世界最深潜水）

2006年12月16日、オサガメ Dermochelys coriacea が水深1280 mで記録された。

 

Deepest dive by a bird（鳥類の中で世界最深潜水）

2006 年7月19日、コウテイペンギン Aptenodytes forsteri が水深564 mで記録された。

 

Deepest dive by a sea snake（ウミヘビ類の中で世界最深潜水）

2014年11月16日、海生爬虫類のウミヘビ属 Hydrophis の不明種が水深245 mで記録された。

 

その他世界一

Loudest penis（世界一うるさいペニス）

長さ2 mmの水生昆虫であるチビミズムシ類の1種 Micronecta scholtzi は、ペニスを腹部に擦り付けることで、99.2デシベルもの音（オーケストラを最前列で聞いている音量に相当）を発生させる。

 

Strongest bite force (relative to body size)（体サイズに対する世界最強の咬合力）

淡水魚ブラックピラニア Serrasalmus rhombeus の長さ36.8 cm、重さ1.12 kgの個体は、調査で自分の体重の29倍である32.6 キログラムフォース（320.27ニュートン）の咬合力（噛む力）を記録した。

 

Longest fins on a fish (relative to body size)（体の大きさに対して世界最長の鰭をもつ魚類）

オオイトヒキイワシ Bathypterois grallator の長さは約30 cmであるが、左右の腹鰭の一部と尾鰭下部の一部が体長の3倍以上長くなっており、その3つの鰭で海底に立っていることから「三脚魚」とも呼ばれる。

 

Longest whale tooth（クジラ類の歯の世界最長）

オスのイッカク Monodon monoceros の螺旋状の象牙質の牙は3 mを超えることがある。

 

Most herbivorous marine mammal（海洋哺乳類の中で最も草食性）

ジュゴン Dugong dugon は、ベジタリアンとされる唯一の海洋哺乳類で、1日に40 kgの海草を消費することができる（ごく稀にクラゲ類や貝類も食べる）。

 

Largest eyes on a fish（魚類の中で最も大きい眼）

ハチワレ Alopias superciliosus は最大12.5 cmにもなる魚類の中で最も大きい眼を持つ。

 

Largest eye-to-body ratio（目と体の比率が世界最大）

コウモリダコ Vampyroteuthis infernalis の眼の直径は2.5 cmに達し、成体の体長は通常28 cmになり、その目と体の比率は1:11である。

 

Hottest fish eyes（魚類の中で最も熱い眼）

メカジキ Xiphias gladius は、水深2870mの冷たい海でも、眼球を28℃まで温められる特殊な器官を備えている。

 

 

まとめ

　以上のように、『Guinness World Records 2024』には様々な現生の水中動物の世界記録が掲載されていた。動物の中で世界最大といったスケールの大きいものから、シードラゴン類の中で世界最大といった特定の分類群に焦点を当てたスケールの小さいものまであったので、ここに掲載されていない現生の水中動物の世界記録はまだまだたくさんあるだろう。

 

　ギネス世界記録は研究機関ではないため、書籍には基本的に記録の大元となった引用文献が記されていない。そのため、詳しい元情報は自分で調べなければならない（今回は調べていない）。また、あくまでギネス世界記録が認めた世界記録であるため、情報が学術的に正確かと問われればそうではない場合もある。しかし、ギネス世界記録は可能な限り、学術的にも正確な情報を知りたいと考えているので、もし研究者の方で、世界記録に繋がる論文を出版した場合は、ギネス世界記録に直接連絡してみるといいだろう。

 

　私はウシマンボウが世界最重量硬骨魚になるという論文を出版した後、ギネス世界記録に連絡を取り、それまでの世界最重量硬骨魚の記録を更新してもらったことがある。せっかく豆知識として頭に入れるのであれば、世界記録も曖昧な情報ではなく、科学的に正確な情報であった方がいいと私は思っている。

 

 

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