続・サイエンスコミュニケーションの祭典! 博物クリスマス2023に出展してきた!

2023.12.01

 自分の研究してきたものがお金になるのは非常に良いことである。研究者飽和時代の現代、少ない研究機関のポジションを巡り、研究者は日々争い合っている。何故争うのか? それは自分のやりたい研究が直接金に結び付かないことに他ならない。私はマンボウの研究をのびのびやりたいので、この研究機関ポジション争奪戦からは早々に離脱したが、そうなると今度はマンボウの研究でどうやってお金を稼ぐのか?という話になる。何かしらの方法で稼がなければ貯金は減っていく一方だ。私が考えた稼ぐ方法の一つとして、販促イベントへの出展が挙げられる。人が集まるイベントに参加し、自分で作ったグッズを売るのだ。ギャンブル的要素も大きいが、思わぬ収穫が得られることもある。実際、私は自分の研究を同人誌にまとめてイベントで頒布したことがきっかけで、商用の本の出版に結び付いたことがあった。

 イベント参加はどんな出会いがあるかわからないちょっとした夢があり(すべてが良い出会いになるとは限らないが)、お小遣いも稼げるので私は結構好きだ。ただできれば、黒字にはしたいところである……。今回、初めての参加となる「博物クリスマス」に出展してきたので、参加した率直な感想を綴りたいと思う。

 

 

博物クリスマス2023へ出展してみた

 今回出展した「博物クリスマス2023」は20231118日~19日にかけて2日間開催された。このイベントは、毎年夏に開催される「博物ふぇすてぃばる!」と同じ系列のイベントである。イベントの存在自体は知っていたのだが、今まで参加したことがなかったので、どんな感じかなと今回様子見も兼ねて1日だけ参加してみた。「博物クリスマス」は、「博物ふぇすてぃばる!」が始まった2014年に、「博物クリスマスツリー&ミニギャラリー」として初回が行われ、こちらも毎年開催されてきたようだ。例年は12月に行われるようだが、今回はイベントの都合で11月であった。「博物クリスマス」は、夏の「博物ふぇすてぃばる!」より規模が小さく、今回の出展ブースは120ほど(初回の出展ブースは13)。出展者的に、「博物ふぇすてぃばる!」と大きく異なる点は、「ガクモンからエンタメ☆」の企画が無い代わりに、会場にあるクリスマスツリーに装飾する何かしらのオーナメントを提出する必要があり、また、2500円分購入されるごとに1枚福引き券をブースのお客さんにプレゼントする必要があった。「博物クリスマス」はその年によって開催場所や出展形式が変遷してきたようで、今回は東京都立産業貿易センター台東館で開催された。他の出展者から聞いた話によると、夏と同じ出展形式になったのは去年からだそうで、それ以前はグッズをギャラリーに置く売り子が要らない形式だったようだ。

 「博物クリスマス」と同じ日程で、日本最大規模のサイエンスコミュニケーションのイベント「サイエンスアゴラ」(同じラボブレインズライターの佐伯さんはこちらに参加)も開催されていた。「博物クリスマス」は「サイエンスアゴラ」よりグッズ販売重視だが、こちらでもグッズを通じてサイエンスコミュニケーションを十分に行うことができる。

いざ、ブースを設置

今回の私のブースはこのような感じだった。机が広かったので、同人誌は全部並べた。改めて見ると同人誌の種類が多いので、ちょっとした本屋感がある。

 今回もマンボウの干物が集客に大きな力を発揮してくれた。水族館でマンボウを見たことがある人は多いと思うが、実際にマンボウの実物を触ったことがある人は非常に少ない。マンボウの干物を触ってもらった流れで会話が生まれ、お客さんのマンボウに関する疑問に答えてあげたり、また私が今まで知らなかった情報をお客さんから教えてもらうことがあった。自由にブースを見てもらって、気に入ったグッズを買ってもらえれば、そこからさらにマンボウを深く知ってもらえるし、私にはお小遣いが入る。自分のやってきたことが報われる最高の瞬間だ! 今回はお客さんとして、水族館の支配人の方が来られたり、レンタル博士の依頼記事で紹介したマンボウ研究者の卵の子がブースに遊びに来てくれた。思わぬ出会いや再会に楽しい一時であった。

会場を見て回るのもまた一興

 人が少なくなった時に、どんな出展物が出されているのかなと、会場を見て回るのも楽しい一時だ。こちらは本イベント大目玉のクリスマスツリー。私が提供したマンボウのキーホルダーもどこかに飾られているはずである。

 

 他のブースを探索する中で、今回は、前回買うのを保留した硝子造形作家のoba:obaさんのガラスで作られたクサビフグのサンキャッチャーを購入した! どうも残り最後の1つだったようだ。危ない危ない。マンボウのガラス細工は水族館などで売られていることがあるが、クサビフグのガラス細工は今まで見たことが無い! 貴重なマンボウ以外のマンボウ科のグッズである。

 

 衝撃的なことに、もう一つクサビフグのグッズを展示しているブースがあった。それが竹やぶ堂さんの羊毛フェルトで作られたクサビフグのぬいぐるみである(※非売品)。手のひらサイズで、持たせてもらうとそれなりに重い。模様がリアルで、私は思わずすげぇ!!と興奮してしまった。クサビフグ特有の縦長の口までちゃんと作られている。これは素晴らしい作品だった。

 

出展を終えて

 基本的には夏の「博物ふぇすてぃばる!」に出展した方が今回も出展されているのだが、追加募集で新たに加わった方もいたと思われる。スペース的に出展者数が夏よりも少ない分、来られるお客さんも少なくなることが予想されたが、体感的には結構人が来ていたなという感じだった。

 ちなみに私もグッズを購入したので福引き券をもらえ、福引きを引いたのだが……外れだった。福引きコーナーは結構人気があり、数十人並んでいる時もあった。私は今回、スーツケースの鍵を家に置き忘れ、朝一で近場の鍵屋を探し、なんとか開けてもらうなどのアクシデントが発生していたが、楽しいイベントであった。冬の博物ふぇすもいいぞ!ということで、興味を持たれた方は是非来年参加してみて欲しい。

 

 

 

今日の一首

 数少ない
  博物イベント
   クリスマス
    研究成果で
     楽しく稼ぐ

【著者情報】澤井 悦郎

海とくらしの史料館の「特任マンボウ研究員」である牛マンボウ博士。この連載は、マンボウ類だけを研究し続けていつまで生きられるかを問うた男の、マンボウへの愛を綴る科学エッセイである。

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参考文献

長神風二・谷村優太.2009.相互交流と情報交換の場の創生によるサイエンスコミュニケーションの活性化~サイエンスアゴラ2006から2007,2008へ~.科学技術コミュニケーション, 5: 3-18.