ソテツが「生きた化石」になった理由を解明!絶滅しなかった理由を探った "前例のない方法"

2023.11.24

ソテツ化石の窒素同位体比 サムネ

(画像引用元番号①②)

 

みなさんこんにちは! サイエンスライターな妖精の彩恵りりだよ!

 

今回の解説の主題は「ソテツ」!現生しているソテツは「窒素固定菌」を持っていることで知られているけど、太古に絶滅したソテツは窒素固定菌を持っていなかったらしいことが分かったんだよ!

 

どうやって分かったかって?2億5000万年前から2000万年前にいたるまで、様々な時代のソテツの化石の窒素同位体の比率を調べる方法で突き止めたんだよ!

 

ちょっとピンとこない人もいるかもだけど、一方でこのアプローチはスゴいと同時に前例のない研究で、実際研究者たちも10年がかりで解決した課題だよ!

 

太古にはめっちゃ生えてた植物「ソテツ」

ソテツとは?

ソテツは古生代に出現し、中生代には非常に繁茂したけど、現在では少数しか生き残っていないよ。形態がほとんど変わっていないことから、生きた化石の例の1つだよ。 (画像引用元番号①③④)

 

名前にピンと来なくても、「ソテツ」という植物はオフィスやホテルなどで観葉植物として一般的に知られているよ。見た目はヤシやシダに似ているけど、裸子植物[注1]なのでイチョウやマツの方が系統的に近いよ。

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ソテツは約3億年前の古生代に登場し、恐竜がいた中生代では一般的な低木 (下層植生) として豊富に存在していたよ。恐竜がいたころの想像図で地面にあるヤシのような植物はソテツと思ってもらっていいよ!

 

ソテツは登場時から現代までほとんど形質を変えておらず、このことから生きた化石と呼ばれることもあるよ。しかし、ソテツは中生代に多くの系統が絶滅し、現代には熱帯と亜熱帯に少数しか残ってないんだよね。

 

中生代には被子植物[注2]の台頭で裸子植物全体が脅かされると共に、二酸化炭素濃度の減少、地球寒冷化、そして白亜紀末の天体衝突と、様々な現象がソテツの多くの系統を絶滅させたよ。

 

しかし、ソテツの一部が現代に生き残っているということは、全てが同じ特徴を持ったままじゃないことが考えられるね。恐竜は大半が絶滅したけど、鳥類の系統だけが生き残ったのと同じような話だよ。

 

とはいえ、過去の複数の因子が全て絶滅に繋がったかは不明で、ソテツのどのような特徴が絶滅の原因に、あるいは生き残るための策となったのかはよくわかっていないよ。

 

絶滅しなかったソテツは「窒素固定菌」がカギ?

ソテツと窒素固定菌

現生のソテツには、根に窒素固定菌がいるよ。それが証拠に、葉の窒素同位体の比率は大気中の窒素とよく一致するよ。 (画像引用元番号①⑤)

 

デューク大学のMichael A. Kipp氏などの研究チームは、現代のソテツの共通点である「窒素固定菌の共生」こそが絶滅回避の理由なんじゃないか?と考えて、それを証明するアプローチの研究を行ったよ。

 

窒素固定菌とは、様々な植物が主に根に共生させている細菌のことだよ。窒素固定菌は大気中の窒素をアンモニアや硝酸に変え (これを窒素固定と呼ぶよ) 、植物はそれを更に有機窒素化合物に変えるよ。

 

窒素はアミノ酸やDNAなどに含まれ、生物を形作るのに必須な元素だけど、大気中の窒素は簡単には化学反応せず、簡単には生物利用ができないよ。その例外が窒素固定菌というわけ。

 

窒素固定菌のおかげで、栄養素に乏しい環境であっても、大気中の窒素によって栄養素を補充できるよ。これによってソテツは、栄養素に乏しい熱帯の土壌に対応しているよ。

 

Kipp氏らはこう考えたよ。「中生代に絶滅したソテツと生き残ったソテツの違いは、窒素固定菌を共生させていたかどうかの違いじゃないか」と。そうなれば、現生の全てのソテツに窒素固定菌がいる理由にもなるからね。

 

ではどのように証明するかだね。一応、窒素固定菌を利用して窒素を取り入れている、ということ自体を証明するのは、窒素の同位体比率を使用すればそこまで難しい話じゃないよ。

 

同位体の詳しい説明は注釈に譲るけど[注3]、とにかく同位体の比率をきちんと調べれば、窒素が大気から来たのか、それとも土壌など他のところから来たのかを証明することができるよ。

 

問題は、同位体比率が確実に大気の状況を反映していることを証明すること、そしてその調べ方だね。特に絶滅したソテツについては、化石として見分けやすいのが葉だから、葉を調べて証明できるかどうかがカギになるよ。

 

現生ソテツの窒素同位体

現生のソテツの葉の窒素同位体比率は、大気中の窒素同位体比率と非常によく一致したよ。だから、ソテツの葉は大気中の窒素の指標に使える可能性が高いよ。 (画像引用元番号⑥)

 

そのためにKipp氏らはまず、現生のソテツの葉の窒素同位体の比率を分析し、それが大気中の窒素に由来すると証明可能なことを2019年の研究で示したよ。

 

それじゃあ次は絶滅したソテツ、つまり化石でしか知られていないソテツを調べることだけど、これはかなり大変だよ。まずそもそもとして、化石の窒素同位体を調べた研究に前例がないという問題があるよ。

 

確かに、骨や貝殻のような頑丈で、化学変化がほぼ起こってない新しい時代の化石の同位体の比率を調べる研究はたくさんあるけど、だいぶ変化している上に古い化石での同位体比率を調べた例はないと言えるね。

 

前例がないので、化石を調べて結果が得られる保証は全くないよ。しかも、分析手法的には化石の一部を破壊しないといけないので、結果が得られても得られなくても標本の一部が失われてしまうよ。

 

よって、結果が出るかどうかに関わらず、どうしても破壊されてしまう化石標本を集めるのが大変だよ。そして窒素同位体の比率が得られたとして、それが大気に由来するとどう証明するんだろうね?

 

この仮説が正しい場合、窒素固定菌を持つソテツは大気と同じ窒素同位体の比率を持つはずではあるけど、では何なら一致すると言えるのか、その指標が必要だよね?

 

そのため、化石に含まれる窒素同位体の比率が大気を反映していると証明するには、別の間接的な証拠が必要となってくるわけだね。

 

苦労して化石のソテツの窒素同位体の比率を分析

化石ソテツの窒素同位体

化石の窒素同位体の比率を調べた結果、現生種に近い仲間は大気と一致した一方で、絶滅種は一致しなかったよ。これは窒素固定菌の有無が絶滅を分けた要因であることを示唆する発見だよ! (画像引用元番号②)

 

Kipp氏らは、博物館の学芸員を説得するなどして、2億5000万年前から2000万年前までの植物化石、合わせて12の時代の178個の標本を集めることに成功したよ。

 

この化石は、ソテツのうち現在も生き残っている2属と、既に絶滅している属に加え、ソテツ以外の植物も含まれているよ。ソテツとそれ以外を比較することで、窒素固定菌による窒素の違いがあるのかどうかを調べられるよ。

 

その結果はかなり面白かったよ。まず、現在でも生き残っているソテツの2属の化石には、大気の窒素との同位体の共通点が見られたよ。一方で絶滅したソテツと他の植物には、大気との共通点は見られなかったよ。

 

このことから、現在まで生き残ったソテツには窒素固定菌の共生が見られる一方で、絶滅したソテツには窒素固定菌がいなかった、というのが違いとして見えてきたんだよ!

 

10年がかりで証明した研究!

なぜ窒素固定菌を共生させたソテツのみが生き残ったのか。これは今回の研究だけでは分からないよ。一方でソテツが窒素固定菌の共生を身につけた理由については、被子植物の台頭があると見られているよ。

 

実際、被子植物が増えていくに従い、ソテツを含めた裸子植物の化石数は減少していったよ。これは中生代の後期からソテツの絶滅が始まった事実と一致しているね。

 

面白いことに今回の研究では、ソテツの窒素固定菌の共生は1度ではなく、2度発生したということも判明したよ!これはソテツの一部だけが、被子植物の台頭、特に栄養素の奪い合いに対応したためと考えられるよ。

 

よくよく考えて見れば、窒素固定菌の共生が栄養素の乏しい環境に対応した結果であることを考えると、栄養問題が発生せずに繁茂して見える中生代にいたソテツがなぜ窒素固定菌を持つのか、ちょっと不思議だよね?

 

そう考えると、被子植物の台頭が、一部のソテツに窒素固定菌という生き残り戦術を身につけさせたみたいだよ。それがたまたま、その後に起こる気候変動や大量絶滅を生き残る理由となった、かもしれないね?

 

いずれにしても、今回の研究でスゴいのは、化石から窒素同位体を分析して窒素固定菌の共生関係を把握したことだよ。これは前例のない研究であり、Kipp氏らも10年がかりでこの結論を得たよ!

 

今回の研究結果は、大昔に絶滅した古生物に対しても、同位体を調べることで、植物の共生菌というこれまで調べることが極めて困難であった問題にも対処できることを示した貴重な研究だよ!

注釈

[注1] 裸子植物 ↩︎
種を作る種子植物のうち、やがて種となる器官である「胚珠」が「子房」に包まれていない植物を指す。被子植物と比べて古い時代から生息していた植物に見られる特徴である。

[注2] 被子植物 ↩︎
裸子植物とは逆に、胚珠が子房に包まれている植物を指す。木の実を作る植物をイメージすれば大体正解。

[注3] 同位体 ↩︎
全ての物質を分解していくと原子にたどり着く。原子は更にm外側を回る電子と、中心にある原子核に分かれる。原子核は陽子と中性子という2つの粒子の組み合わせでできている。陽子の数は元素の種類を決定するが、同じ元素に分類される原子でも、中性子の数が異なることがある。この、陽子の数は同じでも中性子の数が異なる同士の原子核を同位体と呼ぶ。中性子の数の違いの分だけ、同位体ごとに原子の重さがわずかに異なるため、化学反応や凝固・蒸発といった化学的・物理的変化での挙動がわずかながら異なる。このため様々な試料を調べると、同位体の比率はわずかに異なることが知られている。今回の窒素の場合、大気中の窒素と、土壌の有機物のような他の窒素化合物とでは、窒素の同位体比率がわずかに異なることが知られているため、同位体比率を調べれば、窒素が大気に由来するのかがわかる。

文献情報

<原著論文>

  • Michael A. Kipp, et al. "Nitrogen isotopes reveal independent origins of N2-fixing symbiosis in extant cycad lineages". Nature Ecology & Evolution, 2023. DOI: 10.1038/s41559-023-02251-1

 

<参考文献>

 

<関連研究>

  • Michael A. Kipp, et al. "Exploring cycad foliage as an archive of the isotopic composition of atmospheric nitrogen". Geobiology, 2020; 18 (2) 152-166. DOI: 10.1111/gbi.12374

 

<画像引用元の情報> (必要に応じてトリミングを行ったり、文字や図表を書き加えている場合がある)

  1. 現生種のソテツの一例: Michael Kipp氏のTwitter

  2. 植物化石の窒素同位体比率の分析結果: Michael Kipp氏のTwitter (元画像は原著論文Fig2)
  3. ソテツ化石の一例: プレスリリースより (Image Credit: Michael Kipp)
  4. 中生代の想像図: Michael Kipp氏のTwitter
  5. ソテツの根: WikiMedia Commonsより (Image Credit: Curtis Clark)
  6. 現生植物の葉の窒素同位体比率の分析結果: Michael Kipp氏のTwitter (元画像は原著論文Fig1)

 

彩恵 りり(さいえ りり)

「バーチャルサイエンスライター」として、世界中の科学系の最新研究成果やその他の話題をTwitterで解説したり、時々YouTubeで科学的なトピックスについての解説動画を作ったり、他の方のチャンネルにお邪魔して科学的な話題を語ったりしています。 得意なのは天文学。でも基本的にその他の分野も含め、なるべく幅広く解説しています。
本サイトにて、毎週金曜日に最新の科学研究や成果などを解説する「彩恵りりの科学ニュース解説!」連載中。

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