トリケラトプスは自分の「角」と「フリル」を何に使っているの?それぞれの機能について解説!

2023.11.15

こんにちは!恐竜好きな方へのサポートなどを行っているタレント「恐竜のお兄さん」加藤ひろしと申します。

 

今回のテーマは“トリケラトプスが持つ角とフリルの機能”です。

 

「角を持つ動物」は今生きている動物にも古生物にもたくさんいます。そして、恐竜のなかでも角竜類、特に派手なフリル(えり飾り)や長い角を持つケラトプス科(Ceratopsidae: 「角を持つ顔」という意味)は非常に人気があるグループです!

 

そんなケラトプス科の頭骨を一目見ると、派手なフリルや長い角、そしてその大きさにも圧倒されること間違いなしです。それもそのはず、ケラトプス科の頭骨の大きさは陸生動物のなかでは史上最大級なのです(①)(※以降、〇に数字形式でリンクしているものは関連論文)。

ケラトプス科の頭骨レプリカ(筆者撮影)

 

そんなケラトプス科のなかでも最大級の大きさになるトリケラトプス Triceratops が持つフリルや角の使い方は一体どのように研究されているのでしょうか?

 

今回は

・トリケラトプスが属するカスモサウルス亜科の角とフリルの機能
・トリケラトプスの角とフリルの機能

を紹介します!

 

トリケラトプスの角とフリルの機能

トリケラトプスが持つ角とフリルの機能について説明する前に、この恐竜が属するカスモサウルス亜科の角とフリルについての包括的な研究を紹介します。

 

ケラトプス科は大きく二つのグループに分かれ、トリケラトプスは「フリルの両脇の骨(鱗状骨)がフリルの後方まで長く伸びる」などの特徴を持つ「カスモサウルス亜科」に分類されます。そしてほとんどのカスモサウルス亜科の角竜はトリケラトプスと同じく目の上に長い角を2本持っています。(②、③)

 

このカスモサウルス亜科を含むケラトプス科の角とフリル両方の機能について包括的に調べた最初の研究論文は1975年に出版され、当時「カスモサウルス亜科の場合は目の上の角を使って今のウシやジャクソンカメレオンのように取っ組み合い、トリケラトプス以外のカスモサウルス亜科が持つ長めのフリルはディスプレイに使われた」と考察されました。(④)

 

そんなカスモサウルス亜科の角竜のなかでも、これまでに発見されたトリケラトプスの化石の数は非常に多く、さらに角竜類のなかで最も古くから研究されている恐竜の一つでもあるため、トリケラトプスの角とフリルの機能についての研究は数多く発表されています。(⑤、⑥)

 

トリケラトプスの全身骨格レプリカ(筆者撮影。福井県立恐竜博物館所蔵)

 

フリルの機能についての研究

まずフリルについてですが、トリケラトプスのフリルは他のカスモサウルス亜科のフリルよりも比較的短めで、真ん中の骨(頭頂骨)にある穴がありません。「穴が無い」というのは、実は角竜類のなかでは珍しい特徴です。(④、⑦、⑧、⑨)。

 

カスモサウルス亜科の包括的な研究論文では単に「他の個体への威嚇などのディスプレイにも使われた」とされていたフリルですが、この珍しい構造を踏まえて、同じ論文の中で特にトリケラトプスにおいてはフリルの機能は「首を守る強力な防御でもあった」という考察がなされました。(④)

 

そんなフリルの防御性能について、構造物に対する歪みや力の掛かり具合をコンピューターモデルで予測する有限要素法による解析を行った研究が2010年に発表され、「トリケラトプス同士の角突き合いや肉食恐竜からの噛み付きに耐えうる構造であった」と示唆されました。「強力な防御だった考察」がさらに補強されたことになります。(⑩)

そしてトリケラトプスの頭骨に残された傷跡を調べた複数の研究においても、同種間での角突き合いや共存していた大型肉食恐竜であるティラノサウルスからの噛み付きによって、フリルが傷付いた後に治ったと考えられる個体が何頭も確認されています。(⑪、⑫、⑬)

ティラノサウルスと戦うトリケラトプス(イメージ)

 

角の機能についての研究

トリケラトプスTriceratopsという属名の意味は「3つの(トリ)角を持つ顔(ケラトプス)」であり、目の上に長めの角を2本・鼻の上に短めの角を1本持っています。この恐竜のことを解説する上で「角」は欠かせない要素ですね。(⑭)

トリケラトプスの全身骨格レプリカ(筆者撮影。熊本・御船町恐竜博物館所蔵)


この立派な3本角の機能については「強力な武器だった」と初期の研究から考えられていました。(⑦)

そして2004年の研究論文で、実物の約15%の大きさの精巧なトリケラトプスの頭骨模型2つを突き合わせて彼らの戦いを再現した結果「トリケラトプスが角を絡ませた場合、フリルの真ん中の骨・フリルの両脇の骨・頬の骨・目の上の角・鼻の上の角に傷が付く可能性がある」と考察されました。(⑮)

そしてトリケラトプスの頭骨に残された傷跡を調べた2009年の研究論文では、フリルの真ん中の骨(頭頂骨)、フリルの両脇の骨(鱗状骨)、頬の骨(頬骨)にいくつかの病変が確認されたため、先の考察と組み合わせて「この病変はトリケラトプス同士の戦いで傷付いてできた物である」と示唆されました。(⑯)

トリケラトプスの頭骨に見られる病変の例【A: 頬の骨(左頬骨)、B: フリルの両脇の骨(右鱗状骨)】:引用元:Farke, A.A., Wolff, E.D.S., and Tanke, D.H., 2009. Evidence of Combat in Triceratops. PLoS ONE, 4(1): e4252.(⑫)

 

病変については、折れた後に傷が少し治った角も2個体分が研究されており、このうちの1頭の左の目の上の角は先端の1/3が無くなっていてティラノサウルスによると考えられる歯形も見られました。【フリルの機能についての研究】で少し先述したとおり、この個体の場合は噛み傷が治った跡がフリルにも確認されたため、ティラノサウルスに襲われた後も生き延びた個体だと考えられています(⑪、⑯)。

 

まとめ

今回はトリケラトプスが持つ角とフリルの機能(攻撃・防御・ディスプレイ)についての研究をまとめました。

そして【トリケラトプスが持つ角とフリルの使い方】のような古生物の「行動」については、化石を対象にした研究から得られた情報だけではなく、今生きている動物の行動から得られた情報の両方を基にして考える必要がありますが、今生きている角を持つ動物の骨や行動を動物園などで観察してみても色々なことが分かります。

頭突きをするヤギ(筆者撮影)

例えばこの写真のヤギのようにウシ科の動物も角を使って戦いますから、こんな光景が見られたときは「どんな風に角を使っているのだろう?」と考えながら戦いの結末を見届けるのもオススメします。(⑰)

 

 

参考文献(本文登場順) 

①Dodson, P., Forster, C.A., and Sampson, S.D., 2004. Ceratopsidae. In: Weishampel, D.B., Dodson, P., and Osmolska, H., eds. The Dinosauria, Second edition. University of California Press. Berkeley, 494-513.

②Lehman, T.M., 1990. The ceratopsian subfamily Chasmosaurinae: sexual dimorphism and systematics. In: Carpenter, K., and Currie, P.J., eds. Dinosaur Systematics: Perspectives and Approaches. Cambridge University Press. New York, 211-229.

③Ryan, M.J., 2007. A new basal centrosaurine ceratopsid from the Oldman Formation, southeastern Alberta. Journal of Paleontology, 81(2): 376-396.

④Farlow, J.O., and Dodson, P., 1975. The Behavioral Significance of Frill and Horn Morphology in Ceratopsian Dinosaurs. Evolution, 29(2): 353-361.

⑤Stein, W.W., 2019. TAKING COUNT: a census of dinosaur fossils recovered from the Hell Creek and Lance Formations (Maastrichtian). Journal of Paleontological Sciences, 8: 1-42.

⑥Dodson, P., 2013. Ceratopsia increase: history and trends. Canadian Journal of Earth Sciences, 50(3): 294-305.

⑦Hatcher, J.B., Marsh, O.C., and Lull, R.S., 1907. The Ceratopsia. Monographs of the United States Geological Survey, XLIX: 1-300.

⑧Dodson, P., 1996. The Horned Dinosaurs: A Natural History. Princeton University Press. Princeton, 346 p.

⑨Forster, C.A., 1996. New information on the skull of Triceratops. Journal of Vertebrate Paleontology, 16: 246-258.

⑩Farke, A.A., Chapman, R.E., and Andersen, A., 2010. Modeling structural properties of the frill of Triceratops. In: Ryan MJ, Chinnery-Allgeier BJ, and Eberth DA, eds. New Perspectives on Horned Dinosaurs: The Royal Tyrrell Museum Ceratopsian Symposium. Indiana University Press. Bloomington, 264-270.

⑪Happ, J.W., (2008). An analysis of predator-prey behavior in a head-to-head encounter between Tyrannosaurus rex and Triceratops. In: Larson, P.L., and Carpenter, K., eds. Tyrannosaurus rex, the tyrant king. Indiana University Press. Bloomington, 354-368.

⑫Farke, A.A., Wolff, E.D.S., and Tanke, D.H., 2009. Evidence of Combat in Triceratops. PLoS ONE, 4(1): e4252.

⑬DʼAnastasio, R., Cilli, J., Bacchia, F., Fanti, F., Gobbo, G., and Capasso, L., 2022. Histological and chemical diagnosis of a combat lesion in Triceratops. Scientific Reports, 12(1): 3941.

⑭Marsh, O.C., 1889. Notice of gigantic horned Dinosauria from the Cretaceous. American Journal of Science, series 3-38(224): 173-175.

⑮Farke, A.A., 2004. Horn use in Triceratops (Dinosauria: Ceratopsidae): testing behavioral hypotheses using scale models. Palaeontologia Electronica, 7(1): 1-10.

⑯Gilmore, C.W., 1919. A new restoration of Triceratops, with notes on
 the osteology of the genus. Proceedings of the U.S. National Museum, 55(2260): 97-112.

⑰Lundrigan, B., 1996. Morphology of Horns and Fighting Behavior in the Family Bovidae. Journal of Mammalogy, 77(2): 462-475.

 

【著者紹介】恐竜のお兄さん 加藤ひろし

恐竜についての難しい研究論文について、わかりやすく解説しています。
そのほかにも、動物園・博物館・恐竜イベント等をさらに楽しむ為に注目すべきポイントについて紹介します。幅広い知識を子供から大人まで、ご要望に応じた層に分かりやすく対応いたします!
出身地:東京都
誕生日:1993年10月28日
身長:167cm
資格:学芸員資格(博物館資料の収集・整理・保管・展示・調査など)
   大型特殊自動車免許(ブルドーザー・ショベルカー・クレーン・除雪車など)
   車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削)運転技能講習修了

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